私がくまモンの上司です ――ゆるキャラを営業部長に抜擢した「皿を割れ」精神――
(蒲島郁夫著 祥伝社、2014年3月20日発行、253ページ、初版第1刷、1,380円+税)
デニマルさん: 9月号
今回紹介の本は、色々な面で異色である。先ず、日本一のゆるキャラを仕立てたプロセスが、この本に書かれてある。今や、ゆるキャラは、テレビやイベント会場の人気者で関連グッズも多く売り出されている。今回のくまモン他、多くのゆるキャラは、全国各地ご当地物から企業物まで、1500体以上あるそうだ。2010年からゆるキャラグランプリが開催され、第2回目にくまモンがグランプリを受賞している。この本では、くまモンを売り出すための地方巡業や吉本興業での下積みの苦労話が書かれてある。その結果、くまモンは全国区のゆるキャラに成長した。その経済効果は、ブランド許諾料やCM収入や関連本の出版等で1244億円と試算される。くまモンはゆるキャラから「売るキャラ」に進化している。その背景に、熊本県の行改推進役として、県民の幸せ追求の一翼を担っていると著者は書いている。この本は地方行政の活性化事例が纏められてあり、読めば元気が湧く本である。
くまモンとは? ――熊本県の臨時職員から営業部長に抜擢――
くまモンは、2011年の九州新幹線開業に合わせて作成されたマスコットで、「熊本者を略して“くまモン”」と命名した。その九州新幹線は、新大阪・鹿児島間を結ぶ最速列車で、途中の熊本を素通りされる危機感から宣伝用として作成されたそうだ。だから、くまモンの宣伝用の第一声は、新幹線・新大阪である。くまモンは人が入った縫いぐるみで、担当に臨時職員を任命したが、知名度と経済効果の上昇で、正職員の「営業部長」に抜擢された。
この本の著者は県知事? ――東大教授から県知事になった異色の人――
この本の著者の蒲島郁夫氏は、県知事になる前が東大法学部で政治過程論を教えていた教授であった。それも定年3年前で家族の猛反対を押し切って「出身地の熊本県のお役に立ちたい」という強い信念で立候補して、見事に当選を果たした。その知事選では、既成政党の推薦を固辞して、「熊本県民のために県政を改革して、熊本の可能性を引き出す」をスローガンに圧勝した。その応援団は、今迄の理論を地元で実践する意欲に満ち溢れていた。
部下への指示は、「皿を割れ」? ――知事が県民を幸せにする為の決断の政治――
知事の使命は、熊本県民を幸せにすることと書いている。その為に、この本の副題にある「皿を割れ」という。これは「たくさん皿を洗う人は、たくさん皿を割る」、だから『たくさんチャレンジして下さい』と関係者に呼び掛けている。その一つが“くまモン”のチャレンジであった。更に、第二の“くまモン”を探すことが、次なる県民の総幸福量を最大化する方策である明言し、県民のチャレンジが豊かさと誇りと夢を実現すると結んでいる。
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