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「グローバルPMの温故知新」

(株)富士通アドバンストエンジニアリング SIサポート本部
 シニア・プロフェッショナル 小原 由紀夫: [プロフィール] :8月号

 1980年代の日本の故(ふる)きを温(たず)ねて、グローバルPMの最新動向のルーツを知った。
 私は、米国ケイデンスマネジメント社認定講師として弊社のグローバルPMスキル向上に貢献している。ケイデンス社はPMI登録教育ベンダー(REP)最高位のチャーターレベル43社の1つであり、組織横断的アプローチ(Multidisciplinary Approach)により人と人を結びビジネスを変革するPMメソドロジーに特徴を持つ。米国で毎年開催されるケイデンス国際認定講師研修会にて10年間、北中南米とヨーロッパで同一PMメソドロジーを普及する認定講師たちと共にスキルを研鑽している。グローバルPMスキルの最新動向を得るため、2012年と2013年に2,000名以上が参加するPMIグローバル会議北米大会に参加した。内容は、チェンジ・ベネフィットマナジメント、リーダーシップおよび組織アジリティが30%ずつを占めた。リーダーシップは、基調講演を含めてサーバントリーダーシップ(奉仕するリーダーシップ)に注目していた。組織的アジリティは、チームによるアジャイル開発と組織として戦略を連動させて組織としてのアジリティ(俊敏性)を高める体系が実践段階に入っていた。60%を占める2つのテーマの共通点は人と人を結ぶことである。独自性と有期性を特徴するプロジェクトではPMとメンバーが創造性を発揮することが成功の必須条件であり、難しくなればなるほど重要となる。従って、人と人を結ぶ対話による協調を契約などの文書より優先している。
 グローバルPMが人と人を結ぶことを焦点とすることは、1980年代の日本におけるプロジェクトと共通している。サーバントリーダーシップはメンバーへの思いやりとチームワークと共通し、アジャイル開発はトヨタ生産方式(以下、TPS)を源流の1つとしている。
 TPSは1980年代に現地生産のため、北米に渡った。トヨタ自動車はGMと合弁会社を設立し、GMの北米工場で最も設備が古く、生産性と品質が一番低い工場で生産を始めた。GMに敵対していた労働組合(UAW)の幹部全員を3週間日本に派遣し、自分たちの目でTPSを見ました。帰国後、彼らは、人と人をカイゼンに結ぶリーダーとなった。数年経過すると、GMの北米工場で最高の生産性と品質の工場へ変身した。GMはこれに驚き、TPSを研究し、厚さ1mの文献を作成した。残念ながらGMが効果を出すまでに20年が必要であった。[1] 経営者だけが代わることにより同一の設備と労働者の生産性と品質が最低から最高に変化したことは、TPSが現場だけでなく組織運営システムとして優れていることを示した。MIT内のLAI(Lean Advanced Initiative)はこれらを1990年代から研究を続け、リーンとして考え方を体系化した。リーンは製造業以外、サービス、病院など様々な業種に適用された。各企業のICT部門でリーンソフトウェア開発が生まれ、進化するICT技術進化と融合してアジャイル開発に繋がった。(図1.参照)

図1.TPS、SCRUMとアジャイル開発 図2.なぜなぜ5回(階)とアジャイル開発
図1.TPS、SCRUMとアジャイル開発 図2.なぜなぜ5回(階)とアジャイル開発

 アジャイル開発はチーム活動が重要である。チーム活動の考え方として採用したのが、野中郁次郎氏共著の「SCRUM」である。「SCRUM」は1980年代の日本における新製品開発を研究し、文書をバトンのように手渡すのではなく、ラグビーのチームのように人と人を結び一丸となってボールを動かすことから命名された。[2]
 Japan as No.1に向かい成長していた1980年代の日本の故(ふる)きを温(たず)ねて、グローバルPMの最新動向のルーツを知った。私は、1980年代にPMとしてTPSを体得した。2006年からPMAJのIT-SIG内TPSに学ぶWGにて主査として活動し、私とメンバーの経験とノウハウをまとめ、「なぜなぜ5回(階)」を中心に発信している。PMシンポジウム【B-10】および新規の「アジャイル開発となぜなぜ5回」セミナーを発信する。(図2.参照)今後もPMAJと連携して、研鑽と発信を続ける。

以  上

[1] 「ザ・トヨタウェイ(上)」P157~159 ジェフリー・K・ライカー著 稲垣公夫訳 日経BP社 2004年
[2] 「アジャイル開発とスクラム」P198~201, P219~224 平鍋健児・野中郁次郎共著 翔泳社 2013年

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