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グローバリゼーションの問題点: |
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i . |
労働者の賃金の低下
問題が四つあります。第一は市場に資本配分を任せていると、配分が資本中心となり、労働分配率が低下するという問題です。商業銀行が主役の場合は労働分配率が高いことが資金が豊富になりますが、投資銀行は労働者の貯金をあてにしないので、労働者の価値は競争相手になる新興国の労働者賃金に近づく方向で分配され、実質的に資本の取り分が増えるようになりました。 |
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ii . |
資本へ富が集中する
第二の問題は上位1%の人に富が集中し、労働者の賃金はさがり、20世紀で構成された中間層がいなくなるという問題です。 |
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iii . |
金余りとなりバブルが発生しやすくなる。
第三の問題です。「電子・金融空間」は容易に需要以上の金を市場に提供します。ここで必然的に起こるのは資産インフレというバブルが起こることです。クリントン政権のローレンス・サマーズ財務長官は「3年に一度バブルは生成し、崩壊すると予言しています。
この第三の問題が深刻なのはバブルの生成過程で富が上位1%に集中します。彼らが市場操作できるからです。最高値で売りに入ると、バブルは崩壊し米国経済は破綻します。ところが前例として(日本が実施した)国家による公的資金を注入し、巨大金融機関は救済されます。一方その負担はバブル崩壊でリストラに合う中間層に向けられるということです。 |
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iv . |
国際独占資本が国民国家を誘導することが行われる
四つ目の問題は国際独占資本の動向です。彼らは税金のない国に籍をおけば、税金も払わず、国家の危機を感じることもなく、中間層を豊かにする義務もないということです。
結果的に国際独占資本が国民国家を都合よく操る状況が生まれるということです。 |
A. |
この問題は大きな問題だな。私から二つの質問がある。
第一はアベノミクスとはどんな視点で実施されているのか。第二の質問はⅠ.Ⅱ.でないⅢ.のビジネスは救世主になるかという質問だ。 |
E. |
アベノミクスは何型のビジネスを狙っているか
アベノミクスに対する批判も多々ありますが、停滞した日本経済に活気を与えたことがアベノミクスの最大の効果です。まず、これを認めることが肝要です。
次に大切なことは将来起こりそうな問題点を考え、それらの問題をクリアしてもらうことが私の本意です。 |
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① |
アベノミクスの戦略は20世紀型ビジネス戦略とみなせる。
一見金融緩和で「電子・金融空間」に見えますが、実施していることはⅠ.の視点です。成長戦略が目的のテーマだからです。20世紀型のビジネスを推し進める考えです。
先に言い忘れましたが、米国の戦略は「電子・金融空間」で収益をあげるⅡ型ビジネスですが、新興国が現在行っているビジネスは20世紀型のビジネスです。しかし先進国より巨大な規模の製造工場が中国・台湾で活躍しています。先進国が中国へ進出しても競争に勝てる状況ではありません。
では、期待されている成長路線をどこで求めるか重要な課題です。テーマ別に検討を進めることになります。新興国の成長率が下がってきた現在は新興国への進出で成功することは難しいと思います。国内も景気に沸いてはいますが、ゼロサムゲームに沸き返っているようでは成功しません。新しいイノベーションがほしいところです。これがアベノミクスの第一の問題点です。 |
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② |
アベノミクス第二の問題点は財政政策です。 |
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国の資産が増えない政策を願いたい
浜田宏一教授も賛成しなかった問題点です。消費税導入を強引に進めた結果、不況対策として財政政策を加えています。過去の事例で行くと、日本の財政政策による投資は民活ではなく、管活が多く、景気回復に役に立っていません。官が運営する施設への投資で経済が回らないことが多く、日本は世界で一番国の資産が多い国で、資産が630兆円あります。GDPに対する各国の資産比率は米国20%、イギリス32%、フランス37%、ドイツ35%に対し、日本は83%です。 |
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初期投資より運用・保守費が高くなる
東日本災害の被害者の目先の職住問題より、100年先の防潮堤建設に巨額な金を投入する計画になっています。岩手県は2700億円の投資を考えています。この費用を国が出してくれるかもしれません。しかし保守・運用費をいれると、生涯価格は建設費の3倍から4倍になります。3倍として残りの5400億円、年ベースで54億円を県が捻出できるかが問題になります。 |
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今企業の不動産投資が外資も含めて活発化しています。金融緩和は結果として不動産バブルを引き起こる可能性がふえます。豊富な金を持つ国際金融資本は目いっぱい値を上げて後、売り逃げします。外資に食い物にされないことを警告しておきます。アベノミクスが失敗させないためです。 |
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③ |
最重要課題はⅢ.21世紀型ビジネスの構想
この種のビジネスの展開は今誰もわかりません。グローバルに展開できる大きなビジネスではない気がします。日本のように成熟した社会では『大きなテーマでなく、小型だが確実で、種類が多い』テーマが健全で将来性があります。これに類する本が数多く出ていますが、すべて部分的に見えているだけです。しかし、日本はこの20年間デフレではありましたが、貿易・資本収支は黒字で推移してきました。ただ、デフレでは国民の元気がなくなること、若者の職場が生み出せないことに問題がありました。その意味では若者が働ける場をつくるということが最優先課題となります。小さくても数がたくさんあればよいと思います。 |
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Ⅲ.21世紀型ビジネスとは何か(新しく生まれ始めているビジネス)
新しいビジネスは、従来からある社会システムが成熟し、停滞し始めるときにおこります。それはこの停滞に危機感を持ったものが工夫し、新しい空間(ビジネスが動き出せる空間)を開発することで新しいビジネスが生まれます。しかし、現在のところその兆しは見えていませんが、世界で最初に成熟社会に突入した日本の役割ではないかと考えます。21世紀型ビジネスになると思われる出版された本としては谷脇康彦著「ミッシングリンク」、藻谷浩介著「里山資本主義」、「しなやかなあ日本列島のつくりかた」、山崎亮著「コミュニティ・デザイン」、広井良典著「人口減少社会という希望」等多々あります。一つ一つの事例は小さいのですが、この中に新しい芽が出ている気がします。 |
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新しくないが、今後発展する分野としての規制緩和ビジネス
21世紀型資本主義の確立にとって、とりわけ重要なのは既得権益者が日本再建に向かって力を発揮して頂くことです。20世紀型のビジネスでは成長できない現実があるからです。昔の話になりますが、国鉄がJRに変わるとき、80%の国鉄職員は反対しました。しかし、今のJRを国鉄に戻したいと考えるJR職員は誰もいないと思います。それと同じです。 |
A. |
21世紀型ビジネスはもう少し整理して来月討論したいと思う。
今月号の説明で疑問があれば、来月討議しよう。 |