今月のひとこと
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我がプロジェクトは順調か

オンライン編集長 三浦 進 [プロフィール] :8月号

 プロジェクトが順調に進んで欲しい、何とか成功させてこれを足がかりに更に大きなよい仕事をして行きたい。多くの方がこの様な願いを持ちプロジェクトを進めていることと思います。プロジェクト遂行は決して楽ではないが、終わってみると達成感があり、また、次のプロジェクトへ引き込まれて行く、そんなサイクルではないかと思っています。プロジェクト遂行とは、問題解決の連続であり、それ故に知恵を絞り、いかに顧客との良い関係性を維持し、お互いが「成功、終わって良かった!」と振り返れるようなものに仕上げていくか、ということです。

 しかし残念なことに、時として、どうやっても成果を向上することが出来ない、おまけに解決の難しいことばかりが起こる、負のスパイラルに巻き込まれたようなプロジェクトもあります。最近、プロジェクトがスタートして、進捗が20% ~ 30% 進んだ段階でプロジェクトが遅れ始める、あるいは予算通りに進まなくなり、その状態を回復することが困難で採算の悪い、顧客満足も達成できないプロジェクトになることがあると書かれているものを見ました。確かにこのことには一理あるか思います。プロジェクトは受注した時点で、その契約内容からプロジェクトの採算性、工期達成の確度は決まっている、運命付けられているのではないでしょうか。このことは、IT系も含め種々のプロジェクトで一般的に言えることと思います。上述の進捗 20% ~ 30% では、プロジェクトの問題が表出してきただけと推察されます。そもそもは、プロジェクトがスタートする時点からの問題でしょう。
 以前、「見積りに参加しなかったプロジェクトのプロジェクトマネジャーに任命され、スタートの為に内容を精査し、与えられた目標の達成が余りにも困難であることが判明した場合は、正式文書で、その成果をあげることが出来ないと、その時点で報告をしておく方が良い」と言われたことがあります。責任を回避する意味もありますが、当該プロジェクトのリスクをオープンにしておき、問題が大きくなる前に協力を仰ぐことが出来るなどの地固めをしておくためです。

 プロジェクトの終盤で先も見えてきた頃に、ある別の小型プロジェクトの見積り積算を自分のプロジェクトチーム内で行い受注に至ったことがあります。このプロジェクトは、ほぼ同じメンバーでスタートしました。プラント建設プロジェクトでは、大きく捉えて基本設計が終わると直ぐに機器調達に入り、詳細設計の結果からその他資材、現地工事(土建工事、据付工事、組み立て工事等)の発注に入って行きます。この時に起こったことですが、機器を買い始めると予算に入らない、これは悪い兆候です。初めの買い物がうまくいかないと、次の買い物も同じ傾向となり、現地工事の発注も計画通り進ませることが出来なくなって行きました。顧客予算も厳しくネゴをされましたが、当初は何とか行けると考えていました。どうも積算時に内部データで進め十分な裏づけを取らなかったことが原因のようでした。担当が機器設計のベテランであったことで油断した感も否めません。顧客との関係も良く、細かなスコープ変更等を拾って多少の挽回はできましたが結果は大きくは変わりませんでした。幸い、同じ顧客から次のプロジェクトも発注してもらうことができ、長い目で見るとそれは不成功のプロジェクトではなかったと言えます。
 また、先に「初めの買い物がうまく行かないと、次の買い物も同じ傾向となる」と書きましたが、その逆もあります。1つ目の買い物が予算に入った。「よしよし!」で、プロジェクトは幸先が良いものになり、現地工事まで予算内で採算が良くなっていくというプロジェクトもあります。順風に乗ったようなプロジェクトを経験することもあります。

 プロジェクトの運命は、スタート時点で決まっていると書きました。 受注前の仕様決定、スコープの確認と積算精度、その後の他社との競合の結果等で決まります。しかし、問題のあるプロジェクトでも簡単に諦めてはいけない、ここからが勝負、プロマネの実力を示す時と考えるべきなのでしょう。プロジェクトマネジメントは、コンフリクトマネジメントそのもの、可能な限り客先と問題点を共有し、定められた仕様の成果物を期限内に納めるために動かなければなりません。客先が色々と変更を要求しプロジェクトの舵取りが難しくなる場合、設計チームはプロジェクトマネジャーに何とか変更を止めて欲しいとクレームして来ますが、それもプロジェクト遂行全体の一部であり、粛々と対応し、影響を顧客に説明し双方が納得して進める、変更はプロジェクトの採算向上につながる場合もあります。色々な場面に直面してもプロジェクトマネジメントを楽しめるようになれればと思います。 

以上

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