今月のひとこと
先号   次号

プロジェクトにおける表彰制度 (アオード)

オンライン編集長 三浦 進 [プロフィール] :7月号

 この度、協会ではPMAJ表彰制度を創設した。候補者の推薦は7月18日(金)までである。今まで貢献された方を表彰することは、今後の協会の発展、プログラム・プロジェクトマネジメントの普及にも弾みがつくことかと思う。

 表彰制度は、色々な団体・業界でも古くから実施されており、正当な活動に対して賞賛を与えることで、モチベーションの向上が期待できるものと思っている。一方で、人参をぶら下げられ働かされる、競争心を煽る、営業成績など、その本質は事業主側の利への思いがあり、公平を期することが肝心であるが、この様なことを面白くないと考えている人もいる。昔は人参をぶら下げられて働くようで、好しいものと余り感じていなかった。そんなことよりも成果を出そうではないか、表彰などの前に人がモチベーションを持って働ける組織の環境作りが大切と考えていた次第である。

 今回は、プロジェクト遂行での表彰(アオード)に関して触れてみたい。

 大分昔になるが、社内表彰制度があり、良い成果を上げたプロジェクトにXXX賞を与えるとか、幾つかのグレードを有した制度があった。何度か表彰を受けたことがある。しかし、自分がPMになってからプロジェクトが表彰される場合は、プロジェクトチームメンバーだけを表彰の対象として、自分は辞退した。私がその要因を作った訳ではないが、その後この種の表彰では制度的にPMは含めないこととなった。 PMはプロジェクト成功への使命を負っており、当初の実行計画通り遂行し、少しでも良い成果をあげることが責務であるからである。いずれにせよ表彰を受けることは喜ばしいことで、皆と祝賀会を開き騒いだものである。

 中東の超大型プロジェクトを担当し、客先が所有する品質向上プログラムのマネジャーを仰せつかり建設現場で働いていた時のことである。現場では、安全を筆頭に我々コンソーシアムの中でも、また、客先からも種々のアオード制度があった。
 まず、配管溶接工への表彰を紹介しよう。プラントには気体や液体を移送する配管が多くあり、この配管工事のマネジメントが全体の品質・工程を大きく左右する。その配管は、パイプ・フィティング・フランジ等と呼ばれるパーツを溶接し継なぎ合わせて作られる。配管の中に流れるものは、高温・高圧であり、その溶接の品質は決められた仕様で厳しい検査が行われる。配管はピース毎に現場の工場で作られ、取り付けられる手順となっている。この工場での溶接検査(欠陥の有無)は、溶接工個人の記録として残される。プラントの中全体でもここを溶接したのは誰であるか記録が残る仕組みとなっている。我々コンソーシアムの現場の配管工場でこの溶接を担当していたのは中国の企業であったが、毎月月初めに前月分の成績から優秀溶接工のアオードを行っていた。副賞はお金であったが、一番上位の溶接工には、相当の額が渡されていた。私もその表彰式には毎回参加し、他のマネジャーと共に副賞を渡す役目であった。溶接工として現場で働けるには所持する技能資格だけでなく、この現場としてQC (Quality Control) セクションが実施する技量試験に合格したものだけが採用されている。それでも個人差は出るであろうし、プラントの安全にかかわる問題であり、品質の向上にこのアオード制度は大きく貢献していた。この種のアオードは溶接記録がもととなり、アオードにもれた溶接工も自分の技量を上げ、良い成績を出したいとモチベーションは上がるものと思われる。

 私が担当していた品質向上プログラムでも客先の担当者から何度もアオードを企画せよと打診を受けた。超大型プロジェクトで多くのコントラクターがかかわっており、客先はあそこも実施している、Miura sanなぜ始めない?と責められた。というのは、冒頭に書いたように、「人参ぶら下げて」の変な拘わりがあったからである。客先とは毎週会議をもっていたが、私が「アオードのキャロットで人を動かすのは義としない」と話したら、客先のマネジャーから「でも、寝た子が起きるかもしれないヨ」と返された。感謝・認知などによる「動機づけ要因」の効果的な活用である。確かに、モチベーションレベルの上下はあろう、しかし、灼熱の地に出稼ぎに来てハードな仕事をしており、モチベーション以前の作業員がいることも確かである。「Yes Sir! I will organize !」となってXXX Awardをスタートさせた。月1回3名を表彰することにして、XXX Award のJob Instruction を早速作成し実施に移した。コンソーシアムのマネジャー等に通知し、業種を選んで持ち回りで対象者の推薦を願った。表彰状に副賞は、客先の支援を受けて1位 時計、2位、3位は、ナップサックであった。現場で実施したが、表彰状を渡すのは、プロジェクトマネジャー、不在の時はサイトマネジャー、副賞は客先のマネジャーから渡される仕組みとした。客先のスポンサーも時間が取れれば出席され、簡単ではあるが立派なセレモニーとなった。現場で実施しため、整列し記念写真を撮ったりし、XXX Awardが実施されているとのアピールにもなった。


 初めは躊躇していたが、実施してみると意外と大きな効果があることが分かった。アオードを進めていること自体が、それまでも散々進めてき来たこの特別な品質向上プログラムを更に浸透させることが出来ること、また、アオード対象となった作業員が核となりうること、更に、現場を視察していて彼らから声をかけられたり、話をしたりすることが出来たためコミュニケーションの向上に貢献したからである。

以上

ページトップに戻る