今月のひとこと
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プロジェクトの立上げ

オンライン編集長 三浦 進 [プロフィール] :6月号

 今月は、プロジェクトの立上げに関して、プロジェクトを首尾よくスタートさせるため肝心であると思える点について触れてみたい。

( 1 ) プロジェクト計画への人材確保
 業種、プロジェクトの規模にもよるが、プロジェクトの立上げ時にはプロジェクト実行計画書が策定され、それがコーポレートレベルで承認されてスタートする。スタートすると言っても、プロジェクト契約がサインされ、契約に定められた種々の条件(頭金の入金等)が整って契約は発効となり、プラント輸出プロジェクト等ではその日をもって通常はスケジュールのカウントダウンが始まる。これが契約上での始まりであるが、終わりには工期遅延違約金(Delay Penalty)条項があるのが一般的である。最短のスケジュール、これも1つの価値であるが、厳しい工期で受注しているケースが多い。 従って、契約が締結されたら、Kickoff Meetingを開催、プロジェクト実行計画の策定、クリティカルパスである長納期機材調達の準備、設計業務等をスタートさせて行く。当面のスケジュール(3ヶ月)を作成する。
 どの業種でも類似であろうが、ここで一番に問題となるのは組織作り、平たく言うならば人集めである。人的資源はプロマネ1人ではマネジメントが出来ないコーポレートベースの課題である。プロマネも動き社内交渉を行うがプロジェクト全体に対する会社としてのサポートが必要となる。特に、プロジェクトが多く走っているような状況では人が集まらない中で必要な作業を進めて行かなければならない。プロジェクト遂行一般要領書、プロジェクトスケジュール、プロジェクトコントロール要領書、プログレス測定要領書、図書管理要領書、変更管理要領書、予算の精査等々、立ち上げ時に行うことは多い。テンプレートとなる図書はあるにしても、契約上の要件に照らし、かつ、将来に問題とならないよう仕組んで行く必要もある。従って、これらを進める当面のスケジュールも思い通り行かなく遅れが発生することが多い。PMO的な支援体制を持っていれば遅れを抑えることも可能である。当該プロジェクトが持つ事業収益への影響度や、遂行上の難しさ(リスク)を理解し、この時期に人材の集中投入が実施できなければ、ずるずると遅れていくプロジェクトとなる。
 これら計画時のスケジュール計画や進捗要領書等は、客先に提出し承認を取り付ける必要がある。上述の通り立ち上げ時に行うことは多いが、これらを克服し契約に定められた提出期限を守ることが必須である。客先プロマネ、プロジェクトチームとの関係性構築はこれから始まる。初めが肝心。客先との会議でも同じで、開催の時間に遅刻するようでは、Excuseから始まり、有利な交渉の立場に立てない。ここでスケジュールを守らない、おまけに提出した図書に契約・技術上の不備があるなどとクレームをされたら、信頼されないギクシャクとしたスタートとなる。逆に、この時にこそ客先が満足する成果物を提出し、話し合いがスムースに行く環境を作ることが出来ればまずますのスタートとなる。

( 2 ) チームビルディング
 プロジェクトの立ち上時はロードが高く困難なことが多いが、客先との良好な関係を構築することに努める必要がある。上述の通りしっかりと約束を守って良い成果物を出して行く、この上でチーム作りがなされていく。客先・受注者の立場は違うが、プロジェクトの成功は双方の目標である。プロジェクトがスタートしたら、「同じ船に乗った。」のであるから協力して操船して行かなければならない。真にお互いが同じ方向でゴールを共有化し協力して種々の問題を解決して行く関係構築がチームビルディングである。チームビルディングの最大の目的は、「プロジェクトチームメンバー同士の感情的ギャップを解消することである。」と言われるが、プロジェクトスタートから計画段階での種々の会議や交渉の中でチーム作りをほぼ完了させることが必要である。Kickoff Meetingでプロジェクトの全体の目的や重要な管理事項を討議、今後の課題を理解し対応策を立てていく。その後、プロジェクトチームメンバー同士がスケジュール、進捗管理、設計方針等を詰めていくなかで問題点が明らかになる。プロジェクトに問題はつきものであり、如何に対処していくか、議論が建設的になされていくかが要点となる。そこでプロマネも忙しいが、担当同士の関係性に常に気を配り、何処で何が起きているか、問題(火種)をつかむ、報告させるように努めなければならない。見過ごしているようでは、問題が大きくなり後での対処は余計に困難となる。
 基本は仕事上の信頼関係であるが、懇親会の開催などもチームメンバー同士の友好を図る上で大切である。コンソーシアム型(日本・韓国)プロジェクトで客先がオイルメジャーのメガプロジェクトにおいて、韓国での詳細設計開始まもなく山登りが企画されたことがある。Aコース、Bコースに分けて最後の頂上は同じところに集まる仕組みになっていた。頂上で「SAME GOALS in ONE BOAT」と書かれた横断幕のもとで集合写真を撮影した。その写真はプロジェクトの終わりまで事務所に飾られていた。
 客先とプロマネ同士が朝のコーヒータイムを持ち、雑談が出来るような関係になればプロジェクトチーム同士の結束は一層に固いものになっていくであろう。

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