グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第82回)
素晴らしき融合教育

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :8月号

 8月恒例のフランスでのEDEN World P&PM Doctoral Seminarまであと1か月となった。私は2002年から参加しており、フランス夏の強化キャンプと呼んでいる。当方は強化する側の一人とされているので旅費と滞在費が支給されるが、実際は確実に強化される側になっている。昼間のことはさておいて、このキャンプの夜の部の訓練は、日曜日から木曜日まで毎日4時間の夕食会が続くことであり、その間ワインを飲むので(イスラムの参加者もいるし、飲まなくてもよいが)、相当鍛えてないと身体がもたない。ワインは大好きであるが、一週間毎日一本ワインを飲むには事前のトレーニングが必要である。
MALBEC  このとってつけた理屈から7月に入るとワインを毎日のように飲むが、最近見つけたのがアルゼンチンのMALBECである。スーパーの西友で700円ちょっとで買えるが、このワインはフルボディーでスパイシーである。濃くてクセがあるワインがよいという人はお試しあれ。
 MALBECはほぼアルゼンチンンにしかないブドウ種であり、アンデス山脈のアルゼンチン側の山麓の都市メンドーサからサンフアンに至るブドウ畑で採れるブドウから作る。私が飲んでいるのはメンドーサ産であり、学生時代の1966年1月にメンドーサで一週間過ごし、毎日このワインを飲んでいた頃が懐かしい。

 この原稿を書いている日までの一週間にも種々世界とのやり取りが続いた。ロシアからは出来るだけ早くモスクワに戻って社会人研修と大学院での講義を再開してほしいとの要請があった。申し出は感謝するが、当方はウクライナ・ロシア問題のきちんとした出口が見えるまでモスクワには行かない、と回答。すぐ後にウクライナのパートナーからメールがあり、彼や私のキエフ、ハリコフ、ニコラエフ、オデッサ、リビブの教授仲間もすべて無事で、私を呼び戻す日が一日も早く来るよう願っているとあった。こちらには、安全が確認されて、日程が合い次第ウクライナに行きたいと返事をした。私のパートナーはクリミア半島にすばらしいコンドミニアムを持っているが、いまや夏季休暇をクリミアで過ごすことは叶わず、黒海の別のリゾートに行くというのが私にも実に悲しい。そのメールの直後、ドネツク州上空でマレーシア航空機の撃墜の悲劇が起きた。撃墜現場あたりは2012年9月にキエフとアゼルバイジャンのバクーを往復した際に飛んでいる。また現場から100キロ北のルガンスク市にはP2M研究が大変進んでいる国立東ウクライナ大学もある(2012年1月にはマイナス30℃のなか講義をやりに行った)。ウクライナとロシアの国民対国民間には部外者にはわかりにくい屈折した感情がある。
 一方、セネガルからも連絡があり、7月第1週に首相が解任されたが、政治の空白はなく、後任の首相は大学院の関係者達に近く、大学院と政府の関係も緊密化するとの前向きな観測を得た。政府各省からの学生も増え、またアフリカの他のフランス語国から大学院への教育プログラムや社会人研修コースへの引き合いも増えた由で、11月のセネガル再訪が楽しみになった。

 今年も、慶應義塾大学大学院経営管理研究科で、姉川知史教授が主宰する「グローバル・ビジネス・フォーラムによる日本のグランド・デザイン策定を行う融合型実践教育」の一環としてGrand Design by Japan Special Seminar “Project and Program Management for the Grand Design” を7月前半3日間の休日を使って実施した。
 親プログラムが社会人・大学院生・学部生・教員・研究者間の融合研究を掲げており、本セミナーも社会人・教員・研究者・大学院生・学部生合計30名が参加して活性が高い議論が繰り広げられた。
Grand Design by Japan Special Seminar “Project and Program Management for the Grand Design”  今年は姉川教授にアベノミクスを枕に経済成長の理論と日本のグランドデザインの取り組みの重要性につき、基調講義をお願いし、またレクチャーとファシリテーションはこれまで同様に井上多恵子氏(本オンラインジャーナルにコラムを持っています)とペアで行った。ペアでの進行は参加者に好評だったようだ。
 日本では、セミナーというと同類(同業など)・同レベルを前提とするが、知の触れ合いは「半学半教」精神(慶應義塾)を基に、通世代(今回参加者の年齢幅は18歳から70歳)・学際(教員だけとっても専門は経済学、芸術学、システム工学、戦略・プロジェクト科学)・業際(10業種程度)の場があると加速する。また英語のセミナーであるので、多国籍参加者で行い、今回は、日本の他に米国、韓国、中国、サウジアラビア、ブルガリアの方が参加され、議論の視点を多角化できたのは大変貴重である。

 次回は北フランスリール市からの報告となる。  ♥♥♥


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