PMシンポ便りコーナー
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ホワイトカラーにもプロジェクト・マネジメントを

高橋 亮 [プロフィール] :6月号

 OECD(経済協力開発機構)のデータを基とした2012年度の労働生産性(日本生産性本部、2013年12月)の国際比較によると、日本はOECD加盟34カ国中21位。主要先進7カ国(G7)に限ってみれば1994年以降19年連続というダントツ最下位です。業種別では製造・農林水産で上昇傾向であるのに対し、サービス業が停滞・低下傾向。この統計では職種別、ホワイトカラー・ブルーカラー別では統計されていませんが、上記業種別傾向から推定すると、ホワイトカラー比率の割合が業界の生産性に影響しているとも見受けられます。
 折しも、安倍首相が議長を務める産業競争力会議で通称「残業代ゼロ法案」が議論されはじめています。サブタイトルは「多様で柔軟性ある労働時間制度・透明性ある雇用関係の実現にむけて」で、対象としているのが画一的労働を主軸とするブルーカラーではなくホワイトカラーであることは明示的です。このことから昨年に頓挫した“ホワイトカラーエグゼンプション”の黄泉還り法案だとも言われています。この発議から、日本の現状の実力に加え、少子高齢化での生産年齢人口の減少によるさらなる国力低下に対する強い危機感が背景にあると感じられます。
 現在の労働基準法は明治時代の工場法がベースとなっていると言われており、生産ラインに“携わっていた時間分”だけ成果につながるという労働時間指向的な捕らえ方です。それがそのままホワイトカラーに適用されたものだから、極論「座っていれば給料がもらえる」=「残業した者勝ち」という考え方が根付いているのではないでしょうか。これが上記法案でホワイトカラーがターゲットになっている所以だと考えます。
 法案対策ではないですが、これを打破するにはホワイトカラーでも成果物ベースでの考え方や仕事の仕方、評価の仕方を取り入れるのが一つ、またもう一つの道として顧客オリエンデッドでの自律的改善風土の成熟、これが必要ではないかと私は思います。作業がどのような成果物に寄与しているのかを意識してPDCAを回し、サービスを提供している顧客(大体が社内の事業部門になるかと思いますが)の立場に即してサービス自体を常にドラスティックに変えていける体質。プロフィットセンターから見れば至極当たり前のことなのですが・・・。
 こういう話をするとバブル遺産的な企業戦士の「今更そんなこといわれても」と言いたげな顔が目に浮かびます。でも大丈夫!そのための強い味方が“プロジェクト・マネジメント”です。社内顧客の要望(スコープ)を今一度見直し、最終的にどんなサービスを提供できるか(成果物)を定義し、作業を細分化(WBS化)し、計画を立て進捗とリスクを管理し、望まれるアウトプットを無駄なく手戻りなく効率的に生産する。雇用者には残業削減、社内顧客には生産物の品質向上、ホワイトカラーには労働時間短縮と成果の見える化により、Win-Win-Winの関係が築け、かつ積上げれば日本の生産力の底上げにもつながるのではと妄想してしまいます。ホワイトカラーにプロジェクト・マネジメントを!と提言したいと思います。
 私がPMシンポのスタッフに参画させて頂いたのは、他業種他職種の“プロ”のプロマネの皆様と交流できることから多くの学びを得て、妄想を理想に、理想を現実に昇華させていきたいと考えたからになります。

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