東京P2M研究部会
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なぜ、しくみを変える時に、プロジェクト化が有効なのかを考える
「変化を予測し、変化を創り出すしくみづくりのためのP2Mの活用方法」

東京P2M研究会 デリア食品株式会社 藤澤 正則 [プロフィール] :6月号

1.はじめに
 2014年4月から新年度に入り、新テーマを検討している時期であり、様々な人の話を聞き、また、話し合いを行っている。そこで、「なぜ、プロジェクト化をすると、良いのか?」「今まで通りではいけないのか?」という意見が出てきており、振り返りを含めて、考えてみた。

2.背景を考える
 しくみを使って価値を生むサービスモデルでは、分業化された組織体制で、生産性を上げている。外部環境の変化がゆっくりであると、内部環境の改善と効率化を中心に、生産性を上げる工夫が行われている。近年、工業化社会から知識社会に変化していく中で、事業環境が大きく変化してきており、内部環境と外部環境の枠組みが大きく変化し、今まで通りが通用しなくなってきていると感じられる。
 しかし、経営数値が大きく変化しない限り、今まで通りが通用すると考えている人が多く、現状の枠組みでのPJを立ち上げても、既存組織の代表の集まりとなり、総論賛成各論反対となり、進まない事例となる可能性がある。
 下図は、「今まで通り」と「変化を予測し、変化を創り出す」の違いを示す。

図1「今までと通り」と「変化を予測し、変化を予測する」の違い(例)
 図 1 「今までと通り」と「変化を予測し、変化を予測する」の違い (例)

3.プログラム・プロジェクトマネジメント(P2M)の活用
 P2Mの見方・考え方は、想い(ミッション)を展開したしくみを実現するプログラムを考え、しかけ(プロジェクト)を活用してしくみを作り、想いを実現するモデルである。特徴としては、しくみを考える、創る(スキームモデル)、しくみを作る(システムモデル)、しくみを使って価値を生む(サービスモデル)を組み合わせて、個別と全体統合を両立させるプログラムマネジメントである。
 従来のPMとP2Mとの違いは、プロジェクトの計画・実行・評価のみが範囲であり、全体とのつながりは、範囲とはなっていないが、P2Mはプログラム全体が範囲である。
 P2Mの活用できる範囲は、広範囲であり、自社の業務範囲でも活用が可能である。活用方法は、スキームモデル、システムモデル、サービスモデルを組み合わせて、更に回していくことにより、スパイラルアップが可能になる。

図2 3つのモデルをつなぐ
 図 2 3つのモデルをつなぐ

4.しくみを変えていく場合でプロジェクトを活用する
 P2Mの考え方をベースに、プロジェクト化を考えてみる。
 プロジェクトは、「有期性、不確実性、個別性」の特徴があり、通常の業務とは特徴である「継続性、確実性、標準化」と「決まった組織体制」とは異なり、メンバーを集める所から始めることができるので、ゼロベースでスタートが可能である。従って、各組織からメンバーを集めた時に、プロジェクトの進め方の主旨を理解し、「みんな違ってみんな良い」から入り、全体を俯瞰することや時間軸でのトレンドを感じ、考え、話し合うことにより、プロジェクトの目的、想い、価値基準の合意形成を進められる。多少時間を要するが、「よくあって、よく話し合う」「創りこみにみんなが関わる」「自ら考え行動する」を推進し、「決められたシナリオ通りに動く」から「自らシナリオを考え行動する」へ、意識、行動を変えていく。この進め方により、各組織での役割と、全体の進める方向性とのつながりを理解する形で、進めることが可能となる。

図3 プロジェクト化するための考え方
 図 3 プロジェクト化するための考え方

5.まとめ
 定常業務が中心のサービスモデルで、枠組みを変えるなど大きくしくみを変えていく場合、今まで通りでよいでは、変えていくことが難しい。そこで、P2Mのスキームモデル、システムモデル、サービスモデルの結合と、プロジェクトの特徴を活用して、チームを編成して、価値基準の合意形成を行い、プロジェクト化して進めることにより、今まで通りの意識から、変化を予測し、変化を創り出す仕組みに変えるステップが可能になる。

参考資料
PMAJ : P2Mガイドブック : JMAM
2013年度東京P2M研究会報告書 : PMAJ

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