東京P2M研究部会
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PM人材、問われる手腕~P2Mクラブ朝食会で感じたこと~

PMR 内田 淳二 [プロフィール] :7月号

【はじめに】 6月18日、PMAJ主催の朝食会に20名弱のP2M資格者有志と共に参加して来ました。朝食バイキングを楽しみながらガイドブック改訂3版改訂ウラ話をたっぷり聞かせてもらうことが出来ました。2011年より足掛3年に亘る大改訂作業の一端を知ることが出来ましたので、筆者なりの改訂3版の読みどころを書かせていただきます。

【知識社会で求められる人材】 2010年代に入りイノベーションやクラウドなどのビジネス知識はもはや専門知識ではなく一般知識になっている。求められるのは、これらを活用したビジネスを実践する人材であると改訂3版では宣言されています。ドラッガーが、「プロフェッショナルの条件」で取り上げた知識社会の要である「教育ある人間」に活躍の場が与えなければなりません。改訂3版では、プログラムのタイプを二つに明確に分け「オペレーション型」と「戦略型」とし、前者の特徴を詳細化複雑性、後者の特徴を動的複雑性としています。縦軸をミッション、横軸をツール・仕組みに取ると下図のように表せます。


動的複雑性とは、社会開発型プロジェクトなどで多様なステークホルダーの参加とその合意に基づくミッション構築で多大なエネルギーを要する場合や宇宙開発型プロジェクトなどのようにミッション達成まで長期にわたり複雑な管理が必要な場合の事業特性で、事業コンセプト立案の段階からプログラムが始まります。
 動的複雑性を持つ事業を遂行するには、既存の知識や仕組み・制度の範囲を超えた発想力と行動力を備えた新しいタイプのリーダー人材を必要としています。
 一方、詳細化複雑性は、大規模都市開発や空港建設など、ミッションが明確であり、多くの経験済みプロジェクトを統合して行く従来型事業のマネジメントに精通した百選練磨のリーダーによる対応が想定されているようです。

【求められる戦略思考】 論理的思考が得意な欧米人は、「日本人は、戦略とは無縁の民族だ。」と断定して来たという話を聞きました。曰く「長期的展望や創造的な発想が出来ない」曰く「バカ正直」曰く「ウラが読めない」など。日本では、戦略は優れた経営者の直感から始まる為、トップレベルでは戦略を明示出来なかったのが理由でしょうか?実際には、優秀なミドルがトップの言葉を咀嚼しプログラムとして実施可能なミッションに仕上げて行くことが出来たので、現実には、日本は成功してきました。
 論理ではない繊細・緻密・丁寧・簡潔を好み、文脈に配慮した全体調和に美的センスを重んじる日本人の精神性が活かされて来たから今日があると説明されました。
 戦略については「長期にわたり成功を最大化するための組織の基本的計画」と定めて、欧米仕込みの3Cとか、ファイブフォーシーズとか4Pなどの戦略策定のための分析ツールをまとめるにとどまっていますが、長期にわたる成功を最大化するには、論理的思考+日本人の美的センスを取り込める方法論が、今後、多くの実践を通してまとめられるようになるのではと思いました。

【さいごに】 P2M改訂3版では、2008年のリーマンショック以降に明白になったチャイナリスクや気候変動が引き起こす大規模災害などを想定した持続可能な経営戦略が必要になったことを明確に意識されていることが分かりました。P2M仲間の一員として、このガイドブックを大いに活用して持続可能な戦略の実行に邁進したいという思いを強く持つことが出来ました。
 改訂委員会メンバー他関係者の皆様と有意義なイベントを企画して下さったPMAJスタッフの皆様に感謝を申し上げて終わりにします。ありがとうございました。

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