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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (3)
脳内改革が求められている (3)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 6月号

A. 4月号の指摘
アベノミクスを実施する場合の問題点を4月号ですでに8つの項目を指摘した。8つの項目を整理すると以下になる。
  (1) 組織が既得権益志向である
    企業化に官の壁
    女性の労働参加率の低下
    生産性の低い日本の労働者
  (2) グローバリゼーションに対応できない脆弱化した組織
    企業のIT効果が薄い
    日本はグローバリゼーションを脅威とみている(グローバリゼーションに対するビジョンがない)
    日本は外資を拒んでいる
    経営者の意思決定が遅い(新興国の経営者にスピードで勝てない)
    20年間の空白で組織能力の低下(ナレッジマネジメント不在)

  正しく言えば20年間活躍しなかった人材や組織をアベノミクス実施プログラムに参加させないことが必須条件になる。
これらを条件として、君たちは何か提案できるかな!
B. 私の提案です
  タイトルに脳内革命とありましたが、20年間活動できなかった人の脳を改革する生ぬるいことはやめてください。アベノミクス各プログラムを成功させる可能性の高い脳の持主を責任者に選んでください。
  明確なビジョンとそれに基づく実施案を提供させ企画、評価、実施、評価という流れをつくること
  実施案は“ゼロベース発想”から出発し、成功の可能性を大きくすること
  エンジニアリング的発想を取り入れること(環境の変化に追従できる発想)
  プログラムマネジメント組織で実施する
A. ありがとう。だが、もう少し、具体的な案がないかな
C. 農業関連の話
 農業関連ですが、政府は農協に案の提出を促していますが、この50年間一貫して彼らは画期的な農業政策を実行していません。水耕栽培を含む、アグロエンジニアリングの採用が基本と思います。
 第一が経営戦略です。農業は需要想定が最重要課題です。需要変動を取り入れながら変更可能なエンジニアリング手法が求められます。それには農業技術、IT技術、マーケティング情報、貯蔵技術、加工技術、大型需要先との提携などなどです。基本は「モノづくり」ではなく「ことづくりイノベーション」が求められます。日本人も最近「モノづくり」では新興国に苦杯しているため、上位概念の「コトづくり」から考えて、イノベーションをしようという協会が設立されました。
D. Cさん農業は既得権益者の宝庫のような集団が存在しますね。うまく行きますかね。
C. 日本の農業は農地として評価されるとただ同然ですが、宅地と認定されると、大金持ちになれます。従って農業で儲からなくても、彼らは農業を続けてきたわけです。これが悩みの種です。農協は遊休農地を誰に貸すかという権限を取得する活動を始めています。
E. メディカル・ラグ
 既得権益は主に日本という土地に関連しています。電力が高い。コメが高い。医者が医学校の新設を認めない。先進国の中で人口比医師の数が半分だそうです。また、欧米の先端医療の認可を厚生省が阻んでいます。これを「メディカル・ラグ」と呼んでいます。この問題は日本の医療の質を下げ、承認取得に金がかかり、医療費の増大に繋がっています。
 日本の官庁の規制は国民が不便な方向に行われています。ローカル空港はアメリカへ行く場合、まず羽田でおり、電車で成田へ行き、成田からアメリカへ行きます。これが韓国経由になると1日得をします。そのため最近は韓国経由が増えています。
 韓国は釜山にハブ港湾を持っています。このため流通費用が日本より安くなお港湾費用で利益をあげています。日本の役所は競争力低下に貢献し、その高くなった費用は既得権益として天下り先に入る仕組みができています。規制緩和はいくつかの条例の改定を含めますので、どこかの部署で合意しても別の部署が何の手続きをしなければ変わらないという恐ろしさを持っています。既得権益者が自分にインセンティブがないと難しいですね。このままでは確かに2流国に成り下がってしまうでしょう。
 今、安倍政権は規制緩和に向かって規制緩和特別区をつくって、一つ一つ解決する方向を示しています。安倍さんも正念場を迎えているといえます。
D. 役人の評価システムを新しくすること
 新聞の論調を見ますと、アベノミクスの成功のカギは構造改革だと指摘しています。そして既得権者を説得するのが大問題だと半分揶揄しています。本質的には役人を正しく評価する仕組みがないのが問題なのです。なぜなら、変化の激しいグローバル社会で従来と同じは、新興国より低下していくことを意味します。ただ、現在の役人が一生懸命努力しても、不十分という評価しか得られないでしょう。有能な役人の活動を国家をあげて、その成果に対し評価し、自他ともに認められることができれば、基本的にこれが役人は本質的な願いだと思います。
 そのためには各省庁が共同で行う事業が増えることが望ましいと思います。
B. 民間の活力を活かせ“丸亀商店街の革新的政策”の紹介
 そのご意見は正論ですが、長期的問題として取り上げることにしてください。私は今民間がゼロベース発想で、問題解決した事例を集めています。民間は高偏差値者でなくても、活躍している人がいます。紹介したいのが丸亀商店街の理事長です。
 丸亀市の中心にありました商店街が、郊外にできたスーパーマーケットに押されて、シャッターを下ろす店が出始めて、崩壊寸前となったとき、商店会の会長が関係者を集めて、新しい提案をしました。
  会長 皆さん方に何か対策がありますか?
  会員 どの都市にも起こっている問題で、丸亀も例外ではありません。外に打つ手はありません。
  会長 それでは私の提案を聞いてください
    商店街がさびれるのは郊外のスーパーに負けたからではありません。皆様方の商品が時代に合っていないからです。若し、新しく商店街をつくるとしたら、どのような商品を売りますか、考えてみてください。住民が求める日用品的な物からこの街の中心にふさわしいファッショナブルな商品も必要だと思いませんか。
    若し、ご賛同願えれば会員各位の土地の権利を60年間貸してもらえませんか。その土地に新商店街を建設します。商売の内容は皆さん方で決めてください。
孫の時代になると、また別のファッショナブルな商店街が必要になります。その時はまた建て替えるなり、土地の利用権を返却することも可能です。
  丸亀商店街の生活モデル
    今は高齢化社会を迎えています。老人は商店やお医者さんの近くで暮らしたいと思います。そこで老人用の1LDKマンションを併設します。土地代抜きにすると2,000万円程度で購入できる計算となります。きっと購入者が大勢いると思います。
    今私たちは商品をつくることを考え、後に売る方法を検討しています。そして売ることがつくることより難しいことを痛感していると思います。もし、多くの住人がマンションに入居すると、需要が先に出来上がってしまいます。需要があれば需要に合わせて商品をつくりあげることができ、成功する可能性が高くなる。
A. それで結果はどうなりましたか。
B. 商店街は見事に成功し、周辺の住民も商店街に遊びに来ます。マンションの老人は傘をさすことなくすべての買い物ができること、体の具合が悪い時2階、3階の医師を訪問し、時には往診をしてもらえます。医者の待合室での待機が困難な患者は往診してもらえます。ここでは在宅医療が実施され、必要に応じて大病院への入院を行っています。最も喜ばしいことは自宅で家族に看取られて死ねることです。患者の大半は満足してなくなっており、家族も親に孝養したという満足があるようです。
A. やり方によっては理想的な介護ができるという典型だな。これは面白い。
B. この場合は既得権益の問題も解消しています。
E. このケースは従来にないビジネスモデルの典型です。ここで重要なことを私は発見しました。日本人は不便さがあると徹底して新しいことに挑戦するのが最近の民間人です。高偏差値の優等生は古い制度内で自らの有利さを活かす人種で、外国と戦争させると必ず負けるタイプです。いま、東大出が官僚にならない傾向にあるという記事が出ていました。天下りが目的という人生は自分自身に誇りを持てないという世論を巻き起こす時に来ています。
同時にIT業界の動きを見て分かったのですが、WBAやコンサルタントの動きです。ビジネスに戦略は必要です。しかし、戦略の前にビジョンが求められます。
コンサルタントは自分の売り物のツールを使っていかにうまく商売するかであって、顧客の戦略ではなく、コンサルタントの戦略に乗ってITビジネスで実行されていましたから、生産性は全く上がっておらず、日本企業の業績向上に貢献していませんでした。ITを経営に生かしたいと考えた経営者のみが収益向上を達成しています。
日本の現状をあきらめるのではなく、現状はプアーな経営をしていますが、逆説的にいいますと、優れた経営者に経営を任せれば日本は確実に一流国に復活するといえます。
A. 全くその通りだな。ありきたりのビジネスモデルではなく、小さくても体で感じたビジネスモデルを考えてほしい。来月が楽しみだ。

以上

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