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「日本再生“アベノミクス”を成功させるために何が必要か」 (2)
綺麗ごとでは成功しないアベノミクス (脳内改革が求められている) (2)

東京P2M研究会 渡辺 貢成: 5月号

A. 先月号はこの1年間のオンラインで書いてきた中から重要事項を整理して示した。今年度のオンラインは日本再生のアベノミクスを成功させる方法を書きたいと思っている。しかしアベノミクスはグローバル競争というオリンピック同様の厳しい戦いでメダルを取るほどの困難さがある。それは20年間の空白の期間に自国の組織能力の低下という問題と、新興国の実力が決定的に強くなったことである。アベノミクスは強力なマーケッティング戦略の第一歩として下記の問い答えなければならない。
  日本はなぜ、グローバリゼーションの列車に乗り遅れたのか。
  グローバル競争に勝つには、どのような体力をつくりあげるべきか、検討する
  複雑なテーマを取り扱うプログラムではMBA的な戦略だけでなく、困難とされた課題を“ゼロベースの発想”を用いて価値を高める方向で検討しなければならない
  日本の官庁は省益の規制が優先され、省庁の協力による国家セールスとい発想が皆無である。
B. 日本の上層部は、常に「アメリカは何をしているか」(アメリカ出羽の守と呼ばれている)と今でもアメリカは素晴らしく、日本人の考えは評価に値しないという明治以来の伝統を守ってきました。そのためグローバリゼーションの本質を掴むことに気が付かず、新興国に目を向けてきませんでした。商売で大切なのは一に顧客です。顧客が何を望んでいるか常に気配りすることですが、顧客が誰かを忘れていました。
C. NHKで『島耕作のアジア立志伝』という番組があります。グローバリゼーション下で成功したアジアの経営者の立志伝です。面白いことを発見しました。製造業に関与してアジアの成功者は皆『松下幸之助を尊敬し、経営の重点を第一に「顧客関係性確立」、第二に「二番手商法」を指摘し』これを実行し、勝利を収めています。彼らは日本企業並みに徹底してコスト削減、品質向上に重点を置くマネジメントをしていますが、日本企業との大きな相違点は、社員のモチベーションを高める公平な基準に基づいた成果主義を取り入れ、これが企業の拡大発展に寄与しています。また、成功した経営者にとって共通点は「起業当初で自国の労働者の能力の低さに苦労し、順調に成長せず、当初気が付かなかった『想定外』の出来事に遭遇しても、柔軟に対応して乗り切っている」ことです。  それに比べて日本の経営者は『技術を重視』し、顧客のニーズを忘れている方々が多いことがわかりました。もちろん日本人でもグローバリゼーション下で成功している経営者がいますが、顧客重視とロジスティックス・情報技術を上手に駆使しています。

D. 私は日本企業が反省する材料として『家電の企業の没落の事例』を説明します。
韓国人で多摩大学金美徳教授はその著書「日本企業『没落』の真実」で日本が韓国に敗れた問題点を的確に指摘しています。本の目次を紹介します。それだけで納得してもらえます。
Ⅰ. 経営戦略、マーケット戦略、人材戦略 (企業編)
  日本: 経営戦略:「モノづくり、技術重視」戦略
  韓国: マーケット重視戦略 (現地消費者の潜在ニーズ、値ごろ感の研究)
    アジアで働ける人材育成
    韓国の文化を輸出する韓流というブランド、韓国への親しみ感造成
    現地化した製品での収益を現地で再投資し、相手国の繁栄に寄与する
Ⅱ. 産業政策
  FTA戦略 韓国:46か国とFTA締結、「東アジアのハブ」を目指す
      日本:経済外交進まず。自国企業の保護優先
  FTA戦略 韓国:米韓FTA成立で、日本企業が得ていた3兆円超の生産機会を獲得
        米国の思惑を利用して中南米進出も見据える
  FTA戦略 韓国:日中韓FTAでは日本を「置いてきぼり」にした
  国家戦略: 韓国:トップセールスで大型受注をきめる大統領
    日本:原発案件でメーカーだけの応札、運用まで含む応札できず
  新興国戦略: 迅速なチンディア(チャイナ・インディア)戦略でサムスン1兆円利益
  製品戦略: 日本:メイドインジャパンをそのまま販売
    韓国:地を這う現地化戦略で、製品の徹底的なカストマイズに成功
  人材戦略: 日本:花形社員はアジア転勤せず
    韓国:「人の現地化」で現地ニーズ開発
  リーダーシップ: 日本 成功体験から離脱できず、方針転換なし
      調整力を武器とするサラリーマン経営者
    韓国 経営方針を改め続ける強烈なオーナー経営者
      「リスクテーク」がオーナーの仕事
A. Dさん、わかりやすくありがとう。私も追加説明しよう。
●サムスンの成功の要因を説明しよう
 私は畑村・吉川著「危機の経営」を読んだ。サムスンは1993年から企業改革に取り組み、
  組織と人のイノベーション
  プロセス・イノベーション
  製品イノベーション
  これらの業務改革を2002年までかけて成功させた。
Ⅰ.経営戦略で述べられているが、韓国はマーケット戦略として顧客関係性構築、消費者の潜在ニーズを調査し、製品に反映した。人材育成戦略では強すぎる個人主義を少し、集団への協力に変え、人材を各新興国へ派遣し、顧客との人脈づくりを徹底化した。
残念ながら日本企業はパナソニックにおいても松下幸之助が示した顧客第一主義を忘れ、同一商品による世界同時発売を社の実力として大きく宣伝した。しかし、新興国では高級品は売れなかった。
E. Ⅱ.産業政策で韓国はグローバル市場制覇のビジョンを策定、国を挙げて世界戦略を実践してきました。当時の日本はどのような世界戦略を持っていたのでしょうか。
F. 日本の官庁は各省庁の権益が明確で、次官会議が各省益の調整をし、予算を増やすことが省庁の第一も目標です。
B. それでは国家戦略がないということですか?
F. 国家戦略をつかさどる省がありません。1990年以降日本国はグローバリゼーションを制覇するためのビジョンがなく、当然戦略もありません。これはおかしいと2000年になってから各省庁の若手が集まりK戦略(霞ヶ関戦略)を策定し発表しました。その後華々しい話は聞いていません。韓国のグローバリゼーションへのビジョンと戦略は成功しました。
A. アベノミクスを企画しても、民が官の役割をカバーすることはできない。安倍総理は官庁の業務改革は実行すると言っている。反省点はこの程度にして総理に期待しよう。

アベノミクスを取り上げ方法論の検討をしてみたい。
(1) 成長戦略
1 ) 民間企業の活力の復活:
  設備投資3年成長間で70兆円
  黒字中小企業数70万社→140万社(2020年)
  5年間で新たに1万社の海外展開実現
2 ) ビジネス環境整備
  国家特別区の創出(世界から投資を引き込む)
  ビジネス環境ランキング:先進国15位→3位
  外国人医師が日本で医療活動ができる制度の見直し
  金融・資本市場の活性化:アジアNo1の市場構築
3 ) 通商の拡大・グローバル化推進
  貿易のFTA化比率:現在の19%→70%(2018年)
  インフラ受注額:官民一体で約10兆円→30兆円(2020年)
  中堅・中小企業の輸出額:2020年までに2010年倍増
  クールジャパン推進:放送コンテンツの海外売上高63億円の3倍(2018年)
  訪日外国人旅行者:2013年1,000万人→2030年3,000万人
4 ) 農林水産業を成長産業に
  農水産物輸出額:4,500億円→1兆円(2020年)
  6次産業市場規模:1兆円→10兆円規模
  農業・農村全体の所得:今後10年間で倍増
5 ) 雇用・女性・人材育成
6 ) エネルギー産業育成
  エネルギー産業育成:26兆円(2020年)
  電力システム改革:16兆円の新規産業・雇用創出
  再生可能エネルギー導入:そのための規制、制度改革
  未来のエネルギーとなる海洋資源のを商業化
7 ) 健康医療産業の拡充
  健康予防関連市場の拡大:現在4兆円→10兆円(2020年)
  医療関連産業」市場規模:現在の12兆円→16兆円(2020年)
  医療研究機関の司令塔「日本版NIT(国立衛生研究所)の創設
  一般薬品のインターネット販売解禁
G. アベノミクスの中身を見ると、韓国がすでに実行していることの後追いが多い。しかし、過ちは速やかに修正することが望まれます。
貿易のFTA化比率を19%から70%に引き上げる等の施策は、まさに日本の外交交渉がすでに終了しているはずのものです。これからの国の努力に期待したい。
A. アベノミクスの実施計画については、内容の緊急性、業務のスピード化を考えて、フラットな組織で実行する必要がある。そのためプログラムマネジメントで実施することをお勧めする。私ども協会はいつでもお手伝いします。
プログラムマネジメントは複雑な事業を立ち上げて、成功に導くのに適している。
ビジネス計画書作成、評価、実施の進捗管理、成果の評価すべてが含まれている。
プログラムマネジャーが全責任をもってコトにあたる、業務の流れが細やかに落ち度すくなく終了させることができる。
枚数が増えたので、今月はここで検討を止める。

以上

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