世界を動かすプレゼン力 ――日本はこうしてオリンピックを勝ち取った――
(ニック・バーリー著 佐久間裕美子訳、NHK出版、2014年2月25日発行、217ページ、1刷、1,500円+税)
デニマルさん: 5月号
今回紹介の本は、昨年日本中を涌かせた「2020年オリンピック東京開催」を決定した経緯とその舞台裏の戦略を書いている。著者は、この東京開催を決定させるための戦略立案とそのプレゼンテーションのシナリオを書いた人である。その中に、昨年の流行語大賞にもなった「お・も・て・な・し」をオリンピック開催地決定の演出に使った。このシナリオ作成には、綿密な戦略がベースにあった。ご記憶の方もあると思いますが、今回の東京オリンピック開催の立候補は、2009年石原知事の時代に敗れた経験があります。その時は、東京都民はじめ国民から開催招致の機運が低く、リオデジャネイロに決定した経緯があり、その劣勢をどう立て直し、オリンピック招致を獲得するかが最大のポイントだった。その作戦を立案した背景と成功のプレゼンテーションの手順から演出等を細かに紹介している。この本にはプレゼン力だけなく、グローバルな仕事術のあり方も書かれてあり参考になる。
ニック・バーリーとは ――最強のオリンピック招致の請負人――
著者のニック・バーリー氏は、イギリスのジャーナリストで英国大手新聞ガーディアン紙のスポーツ特派員を務め、現在東京オリンピック招致委員会コンサルタントで「セブン46」社の創業CEOである。氏は、2012年のロンドン、2016年のリオデジャネイロの五輪開催の招致で、夫々の国の開催招致を成功させている。それに今回の2020年東京オリンピックの決定である。正に最強のオリンピック招致請負人にコンサルを依頼したことになる。
世界を動かすプレゼン力とは ――綿密な計画と大胆なキャスティング――
この本には、プレゼンテーションを如何に成功させるかのノウハウが7つの原則として纏めてある。詳細はこの本を読んで頂きたいが、その7つの原則をどう演出するかも大切なポイントであると書いている。最初にパラリンピックの佐藤真海さんを出演させ、猪瀬知事に次いで滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」の話、安倍総理の福島原発の懸念解消と世界中の若者がスポーツや夢の具体的な実現化を東京招致で可能になると訴えた。
ビジネスにも使えるプレゼン ――誰に何をプレゼンテーションするのか――
日本人は昔からプレゼンテーションが上手くないと言われている。その背景に、慎み深い、遠慮しがちな性質があると氏は指摘する。そこで明確に「東京は他の都市よりも五輪開催地にふさわしい」と招致委員に対して訴える。その為には、自分たちのビジョンを明確に伝える必要がある。これは自分の想いや考えを訴えるのではなく、相手が何を求めているか的確に応えることである。この点は、ビジネスでも使える重要なポイントを衝いている。
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