図書紹介
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里山資本主義 ――日本経済は「安心の原理」で動く
(藻谷浩介、NHK広島取材班著、角川書店、2014年2月10日発行、8版、718円+税)

デニマルさん: 4月号

この本は、新書大賞2014で第1位を獲得している。新書大賞とは、中央公論社が主催し当年度発行された新書の中で最高の一冊を選び表彰するものである。今年で7回目となるが、過去に大賞を受賞した3冊(「ルポ 貧困大国アメリカ」堤未果著、「日本辺境論」内田樹著、「宇宙は何でできているのか」村山斉著)をここで紹介した。毎年いい本が選ばれているが、主催の中央公論社が受賞していないのは、選者である全国の書店員や評論家諸氏の公平性が窺える。さて今回の「里山資本主義」であるが、余り聞き慣れない言葉である。著者とNHK広島取材班が3・11東日本大震災以降の日本経済の取材を通じて実感した言葉で、マネー資本主義の対極を志す造語であるという。グローバルに流通する資源からの脱却だけなく現在のマネー本位の世界経済に疑問を投げかけている。その解決策に「里山資本主義」があると書いているので、副題の日本経済「安心の原理」に注目して読んでみた。

里山資本主義とは   ―― 里山革命の地道な活動がある ――
里山とは、集落と人里に隣接した森林で人間の影響を受けた生態系の山であると物の本に書かれてある。過疎化した地方の田舎暮らしのイメージがあり、とても経済活動を含む資本主義とは無関係に思う。しかし、その田舎暮らしの中に都会暮らしを超えた最先端の発想と技術があるという。この活動を実践している人を里山革命家といい、現代社会の不安と問題点の解決に挑戦している。そのエネルギー革命の具体的な事例を取材紹介している。

里山資本主義のお手本  ―― 日本とオーストリアにあった ――
田舎暮らしの不便さから生まれたのが「エコストーブ」であり、「木質バイオマスエネルギー」である。エコストーブの燃料源は、里山にある倒木や古木である。日本の7割は山地であり、樹木はふんだんにある。何の資源のない日本が外国から高い石化燃料を輸入して電気やエネルギー源として使う必要はない。裏山の倒木等を使えば、無駄なお金を使わずに自給出来る。エコストーブはその為にある。「エネルギーの輸入は国に何の利益をもたらさない。廃材の活用こそ無駄を省き自国経済を救う」とオーストリアの市長が語っている。

里山資本主義のこれから  ―― マネー資本主義を補完する ――
木質バイオマスエネルギーとは、木材を製材する過程で出る製材屑(オガクズ)をペレット状(圧縮成型して小粒化)にした固形燃料である。このエネルギーを街の地域暖房源として推進している市がオーストリアにある。その市では、エネルギー自給率が7割を超えている。国全体としては1割(日本は0.3%)であるが、確実に広がっているという。エネルギーの自給は、経済的な主導権を握るだけでなく経済的安定をもたらすと纏めている。


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