図書紹介
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りんごかもしれない
(ヨシタケシンスケ作、ブロンズ新社、2013年12月15日発行、11刷、1,400円+税)

デニマルさん: 3月号

今回紹介の本は、久し振りに絵本である。ここで絵本を紹介するのは、3年前の「おおきな木」(S・シルヴァスタイン作・絵、村上春樹訳、2011年01月)以来である。過去には、「トリダヨリ」(コンドウアキ著、2005年08月)、「くまとやまねこ」(湯本香樹実・ぶん、酒井駒子・え、2009年03月)があるので4冊目となる。紹介の本は、2013年MOE絵本屋さん大賞を受賞した作品である。MOEとは、世界で唯一絵本の月刊誌である雑誌名で、その大賞を毎年全国の絵本専門店や書店員のアンケート結果で選んでいる。今回が6回目で、第1回目の受賞作品が、5年前に紹介した「くまとやまねこ」である。さて著者であるが、本業はイラストレーターである。絵本は、今回が初めての作品だそうで、メカ好きな才能を充分に活かした発想豊かな夢のある本である。昨今、子供や学生の本離れが多くなったと言われている。本を読む習慣は、小さい時からの読み聞かせや絵本等に慣れ親しむ過程で培われていく。今回の絵本は大人も楽しめる良書なので、この機会にご一読をお勧めしたい。

りんごかもしれない (中味編)   ―― りんごの中味は何かな? ――
小さな少年が何気なく真っ赤なりんごを見つけた。このりんごの中には、何が詰まっているのかチョット考えてみた。もしかしたら自分の好きなメカがギッシリ詰まっているかも知れない。香りの発生装置、りんごエキスの貯蔵タンク、りんごモーターとバッテリー、それと赤い色やすべすべ感を調整するユニットも入っている。きっとりんご全体を監視するセンサーもある。頭にあるヘタはアンテナの役を果たし、りんごの中味は凄いメカかな。

りんごかもしれない (気持ち編)  ―― りんごには心がある? ――
少年はりんごの気持ちを真剣に考えてみた。褒められると嬉しくなって赤くツヤツヤになる。怖いとシワシワになり、悔しいとカチカチになる。悲しくなると白くなるかも知れない。それと過去の失敗を思い出すと平べったくなり、元気付けにりんごをコマのようにグルグル廻すと、疲れてグッタリするかも知れない。お尻を触ると、くすぐったくなるかな。夜は小さくなっていびきをかいて寝ているかも知れない。どんないびきをかくのだろうか。

りんごかもしれない (友だち編)  ―― りんごには兄弟がいる? ――
更に、少年はりんごの兄弟や友だちのことを考えてみた。兄さんはらんご、自分はりんご、妹はるんご、その下の妹はれんご、一番下の弟はろんご。何だか、ラ行文字の兄弟のようだ。他にりんごの友たちも沢山いるかも知れない。あんご君は、お菓子の餡子のような形。かんごさんは、看護婦さんの帽子のような形。さんご君は、やはりサンゴ礁のようにゴツゴツしているかも知れない。このようにりんごを見ていると色々と連想されて楽しくなる。


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