図書紹介
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熔ける  井川意高 (大王製紙前会長) の懺悔録
(井川意高著、(株)双葉社、2013年11月29日発行、5刷、168ページ、1,400円+税)

デニマルさん: 2月号

2011年11月、大王製紙事件が公表された。この年、3・11東日本大震災が発生し、8ヵ月後の11月でも連日大震災の被害状況と福島原発の事故情報がマスコミや新聞紙上を占めていた。そんな中での事件であったが、巨額な金を会社から引き出しカジノで浪費したことでご記憶の方もいるでしょう。その本人が、今回の本を懺悔録として出版された。この類の本は、話題性と暴露だけでその事件の背景や本質に触れるものは少ない。しかし、この本は、一犯罪者の懺悔からギャンブルに溶け込む依存心理と経営者の管理力との落差を克明に描いている。この点に限って言えば、どうしてギャンブルに嵌まり、簡単に抜け出すことが出来なかったのかを冷静に自己分析している。結果論だが、「この事件で一番信用できないのは自分だったという事実を知った」と懺悔している。ギャンブル依存症は病気であり加療が必要であり、犯罪には服役で罪に報いる必要がある。巻末に、本書の印税は全額社会福祉事業に寄付するとある。昨年6月、懲役4年の実刑が確定し現在服役中である。

「鎔ける」以前   ―― 創業家3代目の超エリート人生 ――
大王製紙という会社をご存知だろうか。愛媛県に本社があり、創業70年で年商3千億円強の製紙業、テッシュペーパーのエリエールの会社と言えば、分かる方もいるでしょう。その3代目の元会長が著者である。その育った経歴が凄い。東大法学部を卒業後、大王製紙に入社して、関連会社の役員等を勤めて社長、会長に上りつめた。その間銀座界隈で豪遊したのだが、この本に芸能人や政治家が多数登場する。その内容も一時期話題を呼んだ。

「鎔ける」最中  ―― ギャンブル依存症で106億円喪失 ――
著者はこの本で、ギャンブルに溺れる以前の経営者としての活動を少し書いている。リ-マンショック後の経営再建手法は、経営者としての凄腕を発揮していた。それが何故ギャンブルに嵌ったのか。この本では、家族麻雀から学生時代の麻雀、海外でのカジノ等の性癖を書いている。特にバカラで手元資金が数10倍になる快感、負けてもいずれ取り戻せるという妄想、加えて会社に金があるという本質的甘え等が106億円の喪失に繋がったのか。。

「熔ける」以後  ―― 懲役4年の実刑判決と懺悔録出版 ――
著者は、子会社から合計85億8,000万円を不正に借り入れた会社法違反(特別背任罪)で懲役4年の実刑判決を受けた。106億円の差額分は、個人的返済や違法対象ではなかったのか。この犯罪の背景にあるギャンブル依存症については、本人も認めている。裁判の過程でギャンブル依存症とアルコール中毒症とは、全く一緒である指摘を受けている。そんな中で裁判の可視化に異を唱え、自分の証言で他人に迷惑を掛けない五分の魂も書いていた。


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