図書紹介
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創業一四00年  世界最古の会社に受け継がれる十六の教え
(金剛利隆著、ダイヤモンド社、2013年10月31日発行、1刷、180ページ、1,500円+税)

デニマルさん: 1月号

今回紹介の本は、マスコミや出版業界等で余り話題にはなっていない。しかし、創業1400年の歴史を持つ「(株)金剛組」と2013年が式年遷宮であったことを話題にしたい。金剛組は、寺社仏閣建築の設計・施工、城郭や文化財建造物の復元や修理等を専門に手がけている。この技術者が宮大工で、普通の大工と違って神社仏閣の建築や補修を専門にしている。この金剛組が1400年も存続しているのは、他に例をみない。次に式年遷宮だが、神社本殿を新築してご神体を移すのを遷宮といい、これを20年毎に行うのが式年である。一般的に式年遷宮は、伊勢神宮のことをという。2013年がその式年遷宮にあたり、本殿をはじめ神殿が新築され、10月に遷宮された。また出雲大社も本殿遷宮にあたり、こちらは60年に一度の遷宮である。式年の謂れは諸説あるが、建物の清浄さを保つためと技術の伝承のためと言われている。神社仏閣の歴史は古いが、それにしても1400年もの間一つの会社で技術継承されている。この本に書かれた金剛組に受け継がれた16の教えとは何かを学んでみたい。

創業1400年の会社とは   ―― 世界最古の会社は飛鳥時代に始まる ――
金剛組の創立は、西暦578年の飛鳥時代である。この本によれば聖徳太子に四天王寺の建立を命じられた金剛重光を祖としているという。それから1400年、その間大阪冬の陣による炎上や大阪大空襲の焼失等々の四天王寺の再建を色々手掛けている。その間に金剛組の当主は継承され、現在の金剛利隆氏が39代目である。今日まで金剛組が存続したのは、確かな技術を持った人材を育てきた事と、後継者は血縁でなく能力で選んだ事と書いている。

創業1400年から学ぶ教訓  ―― 日本古来の伝統技術と十六の教え ――
第32世正大工職の金剛喜定(1801~1807)が、遺言として「職家心得之事」と記した16の教えを残した。これは金剛組の古くから守り通されたもので、「分相応の中庸の精神と職方を大切にする」、「大酒しない」等の仕事から生活の仕方や言葉遣いに至るまで書かれてある。この教えは、2006年の新金剛組の再スタート時に「幹部十七条憲法」として再構築された。これは聖徳太子と第32世の教えから伝統の継承を確認する意味で決めたという。

創業1400年の会社の秘訣  ―― 義理と人情が会社の存続を支えた ――
創業から1400年、金剛組の当主は39代と受け継がれている。その間に戦争や災害を乗り越えて来たが、10年前に近代化対応の遅れ等で会社倒産の危機に遭遇した。その危機を救ったのが、大阪を拠点とした“高松建設”である。当時「金剛組を潰したら、大阪の恥や」と、銀行の債権放棄や協力業者の支援を受けて倒産を回避した。その間に宮大工等は、金剛組を離れずに会社を支えた。こうした人と組織の繋がりで1400年の歴史が存続している。


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