プロジェクト投資計画 - Investment Planning -
イーストタスク株式会社 渡部 寿春: 4月号
企業が戦略を実現するためにどのようにプロジェクトを取捨選択し投資するかは重要な課題である。どのプロジェクトにどれだけ財務的な投資と人的な投資を行うかによって、企業戦略の結果は大きく異なる。投資額評価の仕組みは、価値創造のリスクマネジメント的な役割も担う。プロジェクトが創造する価値を金額で評価するためには時間的な概念で認識する必要がある。これは、P2Mの戦略マネジメントのプロジェクトガバナンスにおける考え方であり、投資収益性の評価として回収期間法、内部収益率法、DCF法、リアルオプション法、投下資本利益率法などがある。しかし、収益目的ではないが市場競争力を維持するために必要なプロジェクトの場合にはリターンをもとにした評価方法では判断が付かない。ベンダーに見積りを行い提示された金額が妥当なのかを判断し、如何に投資計画を行いプログラムとしての価値向上を図るか。事業計画で良く遭遇する課題である。価値デザインとポートフォリオマネジメントの観点で実務での応用を検討する。
プロジェクト投資は様々な場面で検討される。 |
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会計年度毎の定期的な予算編成 |
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新事業の展開 |
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商品開発 |
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エリア戦略 |
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業務改善 |
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サービス拡充 |
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中・長期の事業計画 |
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大型の建設 |
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事業統合・合併・吸収・提携 |
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制作やイベントなど
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投資を行う場合は、その投資により生み出される価値にどんなものがあるのかよく見極めることが重要だが、限られた予算枠で優先順位を見極め時間軸でプロジェクトを配置することになる。価値デザインマトリックスは複数のプロジェクトに評価項目を対応付けて優先順位を判断する方法である。しかし、実際には誰が、どんなプロセスでこの図を作成し実施までの合意形成を進めるか。現場では難しい仕事になる。経営トップで判断しトップダウンで行えば効率が良い。しかし、海外を含む現場の状況を正確に理解していれば可能だが、大規模な事業の場合、経営トップは全てを判断出来ない。一般的には、現場の部署から課題が寄せられプロジェクトの提案に至る。個別の課題への対処で済む場合は会計年度毎の定期的な予算編成の中で計画が可能だが、短期では解決できない全社的な課題が認識された場合、個別のプロジェクトを精査し纏まりのある事業改革として実施する必要に迫られる。この時、事業改革プログラムを立上げ、定期的な予算編成と事業改革を結びつけて環境変化の中で調整を図りながら進めるには専任組織が必要になる。そして、その組織が企業内の状況を正確に理解し合意形成を進めるには会議体を含めた場のマネジメントが重要となる。 |
プロジェクトポートフォリオは、企業における全てのプロジェクトの相対的な価値とリスクを映し出す。評価項目は画一化されたものではなく、各業界・企業に応じた評価項目を使うことが重要だが、次のような項目がある。 |
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企業戦略との適合性・貢献度 |
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市場競争力 |
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財務的な報酬 |
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技術的革新性 |
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成功確率 |
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投資コスト |
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完了までの期間 |
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マーケティングなどを含めた事業コスト |
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環境・社会面における受容性 |
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業務プロセス改善への貢献度 |
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人材育成への貢献度 |
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企業ブランドへの貢献度など |
プロジェクトポートフォリオは、バブルチャートで優先度を表すことが多い。一般的には、リスク(技術的成功確率)と収益性(NPV)の軸をとるStrategic Designを使うが、状況に応じて自由に軸を設定出来る。特に、プロジェクトの実施が選択でなく必須で、対応時期のみ調整が可能な場合は、収益性とコストによるバブルチャートが使える。
収益性が高く、コストも大きいものは最優先で計画する必要がある。収益性が高く、コストが低い場合は出来るだけ早く対応し、コストが大きく収益性が低い場合は可能な限り遅らせる。収益性もコストも小さい場合は、他のプロジェクトとの依存関係でタイミングを図る。グローバルに競争環境が変化する中で企業戦略とプロジェクト計画を融合することが重要となっている。しかし、個別の課題から纏まりのある事業改革プログラムには発展し難い。その原因の多くが、プロジェクト投資計画のプロセスが確立されていない点にある。投資計画プロセスの中で戦略マネジメントがなされることが発展の契機となる。
以上
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