P2Mの海外普及 ~2014年成長戦略にむけた日本型コンサルティングを考える~
アジア各国でインフラ建設分野の行政関係者等と話をすると「日本の企業と一緒に仕事をしたい」とか、品質に対する信頼と期待が高いことを肌で感じる。日本の経験や日本的事業経営管理に対する期待は高い。しかしながら現実は低価格、即断即決を武器とする新興諸国に後塵を拝しており、国際競争において必要な時間と空間のX,Y,Z,T軸で描くスピード感とは異なる独立閉鎖系軸で動いているように感じる。
アジア新興国の著しい発展による国際社会の構造的変化が進むなかで、かつての高度成長モデルは変革が求められて久しいがP2Mはまさしくそういう時代の要請に応えたモデルとしての役割を担っていると考える。プロジェクトマネジメントに加えて価値創造、長期的戦略並びにビジョン形成のデザインを包括するプログラムマネジメントが必要不可欠であるというP2Mの知識体系は日本の「イノベーション」・「グローバル化」の為に必要であると同時にそれは又日本的マネジメントシステムを形式知化したものであると言える。
成長戦略を推進するために日本企業の「イノベーション」が問われ、その先に日本のグローバル化が見えている今日本の企業活動がアジアを中心に海外に広がるためには日本のマネジメントを各国関係者へ理解してもらうことが大切であることは言うまでもないことで、これらのことが何故P2Mの海外普及が必要かという問いに対する答えとなるであろう。
2014年PMAJ新春セミナーでは、「モンゴルにおけるパッケージインフラ事業のマネジメント」と題する講演を株式会社 アルメックVPI 代表取締役 長山 勝英 氏 にお願いした。海外における我が国のコンサルティングワークを半世紀にわたって担ってきたプランニングコンサルタントの第一人者である。我が国海外コンサルティング活動の多くはエンジニアリングコンサルタント活動が中心であったなかで、一貫して世界各国における開発計画の事業企画、構想、戦略づくりに日本の経験・知見を組み入れて提案してきた実力者である。日本では国土開発の政策、企画、構想は行政が担い、その事業化のための設計積算等業務を技術コンサルタントに委託するという従属的垂直分業体制であった。しかし海外においてはその企画、構想も含めた仕事が求められる。成長戦略で言われるオールジャパン体制は政府依存ではなく独立的横断分業体制へシフトすることにあり、その先鋒役にコンサルタントの仕事がある。伝統的プロジェクトマネジメントが中核を占める海外エンジニアリングコンサルタントの活動に企画・構想を取り込み、長期ビジョンをクライエントに提案するプログラムマネジメントまでマネジメント領域を広げることで価値の共有や新しい社会システム創造へつなげることが可能となる。
矛盾するようではあるが、日本の強みはエンジニアリング(技術)を活かして現場でいろいろ立場の違う人材と共通理解にたって仕事を遂行し、人材育成にも心を砕くところにある。日本発のP2Mを少しでも海外に普及するためには、国内の理解者を増やしていくことと、海外で必要とされる組織・機関や領域を広げて行くという地道な活動を続けること以外にないと考える。
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