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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~売り込む力~

井上 多恵子 [プロフィール] :2月号

 プロジェクトが成功しゴールを達成すると、得られた成果物を売り込む役目を担うことがある。今回は、そのような際に役立つテクニックと英語表現を見てみたい。まずは身近なところから。私の家には、ダイレクトメールが大量に届く。基礎化粧品や美容ドリンクをいろいろ試しているからだ。乳液と化粧水をモニター価格で1カ月間試したメーカーからは、「モニター様特別価格で提供するセット、期間限定2月末日まで」と書かれたハガキが届いた。①特別価格であること、そして、②期間を区切っていることにより、今買わないと損をする、と思わせている。私は、この「特別価格」というオファーに弱く、多くの場合のせられて買ってしまう。この2点に追加してよくあるのが、「利用者の声」や「プレゼント付き」だ。利用者の声の場合、利用者の使用前後の写真が掲載されていることもあり、その商品がいかに効果的かを説明している。やらせも入っているのではないかと思いつつ、体験談を読んで、「ひょっとしたら私もこうなれるかも」と期待している自分がいる。「プレゼント付き」は、「1万円以上購入でタオル付き」といった形だ。今は、自分に必要なものと不要なものを見極める力が多少ついてきたことで、よっぽど欲しいプレゼントではない限り飛びつかなくなったが、かつては、このプレゼント付きの誘惑にもよく負けていた。
 次に、米国の例を、ある出版社から届いた雑誌購読のオファーを用いて見てみよう。封筒には、Reply Requested(回答を依頼)とかなり直接的な表現が書かれている。封筒の中には用紙が何枚か入っている。主旨を説明している用紙には、Get xx at the lowest rate we allow(我々が許す最安値でxxxを購入できます)とあり、最安値の箇所が目立つよう、下線が引かれている。そしてその用紙の裏側には、and get the lowest rate we allow!と再び最安値を強調した書き方がなされている。さらに、返信用の紙にも、Offered at the lowest rate we allow(我々が許す最安値で提供しています)とあり、返信用封筒にもlowest rate applies(最安値が適用される)とある。元値がどのように割引されているかを示す数式もあり、①特別価格であることがよりリアルに伝わってくる。
 そして、Reply within 5 days(5日以内に返事せよ)という命令調の表現で、②期間を区切っている。利用者の体験談は含まれていないが、全部大文字にして目立たせた形で、FREE GIFT(プレゼント)は付いている。しかも、Treat yourself to xxx.という表現もあり、「ご褒美として」と、よりポジティブなニュアンスを出している。別の用紙には、absolutely FREE(100%ただ)と強調している。また、このオファーはビジネスパーソン向けだということもあり、the Publisher has authorized us to offer select professionals(選ばれたプロの人達にオファーする権限を出版社は与えてくれた)というように、優越感を感じさせるような表現も随所で使われている。
 中身自体の宣伝も、もちろんしっかり書かれている。an unrivaled source for everything that’s important in business(ビジネスで重要なこと全てについての比類の無い情報ソース)、get the intelligence you need-anytime, anywhere(あなたが求めるインテリジェンスをいつでもどこでも得られる)とある。単にinformation(情報)と言うのではなく、それをインテリジェンスにまで昇華させている。これらのactionable and thought-provoking articles(行動につながり、考えを刺激する記事)を読むことで、more prepared in business(ビジネスに対してより準備ができる)とあると、「読まなきゃ」という気になる。
 日本の化粧品等でも時々見かける「ご満足いただけなかったら返金します」というのもある。Money back guarantee(返金を保証)である。これも複数の表現を使って、畳み掛けている。Satisfaction or Your Money Back(満足しなければ、あなたに返金)。満足も普通の満足ではなく、If you are not 100% satisfied(100%満足しなければ)と徹底している。しかも返金にあたっては、No questions asked!(質問無し)だ。ここまで書かれると、試してもいいかな、という気になる。一方で、「ちょっとやりすぎ」という気はしなくもないし、売り込まれすぎると、買う気が無くなる人もいるだろう。しかし、一定の効果があるからこそ、こういう売り込み方が実際にエグゼキュティブに対して行われているのだろう。
 売り込みをする際、控え目にするケースから、今回紹介した雑誌のオファーのように、がんがんこれでもかと攻めまくる極端なケースまである。自分の中に、売り込みのやり方の幅を持っておいて、相手と状況に応じて、適切に選んで使えるようになりたい。

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