協会理事コーナー
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“PMを好きになって50有余年のアドバイス”

PMAJ 理事 渡辺 貢成: 12月号

 25歳のときに友達の紹介で、今で言うベンチャー企業の社長にお会いした。「北海道で新しい研究を始めるが、PMの勉強してくれ」といわれた。プロジェクトとは何か辞書を引いたがよく理解できなかった。社長に質問すると化学プラントのプロジェクトマネジメントという英文の本を与えられた。入ったのは小さな会社だったが、この本を読んでPMをやれば一生食べていけるという鋭い暗示を得た。

 ベンチャーの社長は東大出の怪物で、最初の仕事を責任者として任せてくれた。ただ、素人だから仕事を一人でできるわけはない。社長はベテラン社員を後見者としてつけてくれた。私はベテラン社員に教えを請い、必要な本を読みながら、最後の決断をして最初の仕事を終わらせた。案の定私のミスでトラブルが発生し、顧客に迷惑を掛けたが、その処理を関係者の力を借り、苦労して処理した。

 トラブル処理もおわり、顧客に終了の挨拶をしたとき、「渡辺さんには迷惑を掛けられたが、渡辺さんはいつもにこにこと苦労をめげず処理していただいた。こんなことを言うのはおかしいが、次の仕事も一緒にしたい」というお言葉を頂いた。この時思った。「トラブルというピンチはチャンスにもなるんだ」と。その後トラブル処理を一手に引き受けるようになった。結果は社内からも顧客からも信頼されるようになった。

 会社を変わり石油精製プロジェクトでシェル石油と付き合った。オイルメジャーの仕事は誰にでも理解できるように、シンプルで、合理性があり、過去の経験をすべて文書化し、誰もが共有できる仕組みになっていることを学んだ。

 原子力の仕事では、事故発生は世界中に迷惑を掛けるために、すべての仕事は米国NRC(Nuclear Regulatory Committee)のRegulatory Guide の指示に従って設計、製作、テストすることになっていた。難しいものを取り扱うためにルールを明確にし、正しく仕事をする手順が書かれており、設計・製作・テスト・運用それぞれに関し、QA(品質保証)を明確に指定してあった。(最近のT電力トラブルではQAが機能しなかったことが明確になった。米国的視点で言えば運転資格がないといえる)。

 有人宇宙開発の仕事では一般のエンジニアリングの10倍の精度で、トラブル発生防止の検討をしており、宇宙空間でのトラブル発生を厳しくチェックする姿には頭が下がった。
彼らはシステム・エンジニアリングとプロジェクトマネジメントの両輪でプロジェクトを処理している。

これらの経験を通じてプロジェクトを成功させるには共通の視点がある。大枠を下記する

プロジェクトマネジャーは本プロジェクトを成功させる鍵は何かと、プロジェクトのスタートで明確に把握すること。問題は2つあり、成功のポイントは何かという+の視点、失敗しやすいポイントは何かという-の視点の防止である。起こりそうなリスクは何かということを真剣に考えることで、顧客のレベルが低い。自社の社員のレベルが低い等プロジェクトごとに相違するから要注意である。
本プロジェクトの「使命・目的・目標」を書いて、プロジェクト全員に徹底させること。
プロジェクトを軌道に乗せる指揮をする
トラブルが発生したらマネジャー自らが解決に乗り出す。(顧客関係性構築に貢献する)
関係者の予知能力の活用:プロジェクトの後工程を担当する人は、上流工程の人々の癖をよく知っており、トラブル発生の可能性を予知している。常に川下からの情報を入手しておくこと。
スタッフの毎日の顔色判断:話を聞き知恵を授ける
上司説得は顧客を活用する
マネジャーは管理資料作成も部下にさせる。できるだけ自分の時間を使わない。
その代わり、マネジャーはできるだけ顧客・他のステークホルダーを訪問し、情報収集に努める
部下の努力に対し、評価し、褒める。(褒めるためには部下がどのようなところに注意をはらって成果を出したかを明確に指摘する必要がある。ただ褒めるのでは効果はない。
部下をほめることができるプロジェクトは成功が見えているといえる

上記は大きなプロジェクト、小さなプロジェクト、業界の相違に関係なくすべてに共通です。
もっと大切なプロジェクトがあります。自分の生涯プロジェクトです。通常は会社任せだと思います。私の場合は10年で部著を変えることを頼みました。分かったことはどの部署でもPMは同じでした。その意味は「PMは何にでも使える価値の高いもの」という意味です。経営を任されても此れをPMで処理できます。あなたのPMを役立ててください。

以上

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