東京P2M研究部会
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「PMシンポジウム2013を終えて」

東京P2M研究会 水ing(株) 内田 淳二: 12月号

はじめに
「新たな価値創造、そして成長」をテーマに、PMシンポジウム2013が盛大に開催されました。当研究会は、昨年に続き「総論賛成各論反対を制すP2Mの技」を掲げて二日目セミナーにエントリーしました。今年は、水インフラ再構築の課題を取り上げ、セミナー受講者が全員参加の討論からソリューション提案を行っていただくワークショップの企画実行にチャレンジしました。水インフラの再構築は、全国各地の地方自治体が抱える喫緊の課題であり、人口減少社会において個々の住民が後続世代に引き継いで行くために個々の住民それぞれが意見を言えるテーマです。基調講演テーマのイノベーションとダイバーシテイへの取組みを具体的事例で考えるテーマ設定となりました。本稿では、ワークショップの準備からこれまでを振り返ってみました。

準備段階
5月:研究会メンバーに全体スケジュール(下図)を提示し作業がスタートしました。
全体スケジュール
6月:セミナーの目的と目標を巡りメンバーと協議しアブストラクトをまとめました。

参加者間で「関心」が「共有」できるテーマで「対話」を重視した「合意形成プロセス」を実体験出来るセミナーをイメージし、昨年の発展型であることをアピールしたものとしました。(下図 参照)昨年は、私企業がビジネス環境の変化を機に行った経営改革の是非を顧客目線、従業員目線で考えるワークショップで、目的・目標の共有は出来ても、その実施方法で意見が分かれる場面を取り上げました。今年は、公営企業が目指すべき持続可能な社会インフラ構築の道筋は如何にあるべきか?を問い、目的・目標が曖昧で長期に亘る事業を対象にした場合に住民代表の立場で考えるワークショップに挑戦しました。
又、この時期には、メンバー間で合意形成について専門書を回し読みし、住民参加の討論会の進め方など、基礎知識の再確認が出来ました。

【総論賛成各論反対を制すP2Mの技】-アブストラクト前回今回比較-
【総論賛成各論反対を制すP2Mの技】-アブストラクト前回今回比較-

7月:総論賛成各論反対の論点整理を行い、社会インフラ構築の討論に欠かせない共通価値観を四つの基本シナリオとすることを決めました。経済性重視、技術発展、地域共同、共生行動がキーワードで貨幣流通度と人口集積度を指標として下図のように切り分けて説明することにしました。

これら4つのシナリオを前提にして解決策を考えるセミナーに向けてワークショップの中身が具体化して行きました。

8月:議論まとめシート骨格固まる。


議論パート講演用資料の原案完成

9月:スライドブラッシュアップ
ワークショップシナリオが完成し、9月20日に講演資料(配布用)を提出することが出来ました。そして予定より一月早くメンバー所属会社の経営幹部に参加してもらってのリハーサルを行うことが出来ました。参加者の会社では、良質の水を確保することが、競争環境を勝ち抜く上での一大テーマである為、真剣な議論が交わされました。本番に向けて貴重なフィードバックを頂くことが出来ました。
この時、【皆さんは、ワークショップで参加者に何を一番持ち帰って欲しいですか?】という問いかけが、参加者から我々に投げかけられました。私は、わが国古来の伝統である「衆論を合わせて物事を決めて行く」方法であれば、一人が長時間考えて出した答えより、はるかに高い説得力のある答えにたどり着けるということが判ってもらえたらうれしいとメンバーに話しました。
10月:講演資料(最終版)をシンポ事務局へ送付。10/4 (7)
11月:本番直前に議論パートのタイムラインを昨年同様にチャート化しメンバー間で共有を図りました。(下図)参加者個人が考える時間、考えたことを全員が皆とシェアする時間、そして最後に皆の意見に纏め上げる時間を決めておくことが効果的な議論には必要であることが昨年の経験から判っていました。


議論結果のまとめ
当日に起こったJR総武線事故の影響でワークショップ応募者22名のうち参加者は13名になってしまいましたが、それぞれ自由にチームに分かれていただきセミナーを開始しました。事例解説終了後に各チーム代表がジャンケンでシナリオ選択を行っていただき(下図)、


総論である「将来に亘って持続可能な水循環の仕組みを構築する」ために、解決すべき優先課題を各論から選び、ソリューションを選び出すための議論を行っていただきました。議論の結果を上図にまとめました。

終わりに
全くの初対面のメンバーが、限られた時間にこれだけの議論が出来たことは、特筆したいと思います。シナリオベースの議論シートは、総論賛成各論反対を制すP2Mの技から生まれた強力なツールとして今後も多くの事例で活用して行きたいと考えています。多くのP2M資格者の皆さんが研究会活動に興味を持っていただければ幸甚です。

以上

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