東京P2M研究部会
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中食製造業におけるプロジェクト・プログラムの活用の取り組み

東京P2M研究会 デリア食品株式会社 藤澤 正則 [プロフィール] :11月号

1.はじめに
 キユーピーグループのサラダ・惣菜事業では、様々な人財育成プログラムに取り組んでおり、今回、特別編として、エリア戦略創造(プロジェクト・プログラムマネジメント)講座を、総勢16名の受講者と東京P2M研究会、PMAJ関係者6名で開催した。講座の内容は、2013年PMシンポジウムで行う「総論賛成各論反対を制するプロジェクト・プログラムマネジメント:成長し続けるためのシナリオ創り」である。

2.プロジェクト・プログラムマネジメントの行う背景
 弊社の属するサラダ・惣菜事業では、中食事業のマーケットで弁当、惣菜、カット野菜などの毎日買っていただける商品を365日供給しているビジネスを全国で展開している。
 このマーケットは、国内市場において、成長性が期待され、様々な業態が参入し、環境変化が非常に早く、激しくなってきている。従来のものづくりでは、確実性、継続性、標準化をベースにして進め方を行ってきたが、プロジェクトのような不確実性、有期性、個別性の要素、プログラムのような不確実性、多義性、拡張性を考えて、変化を予測し、変化を創り出すことの必要性が出てきた。そこで、今年度はプロジェクト・プログラムマネジメント講座を4月に行い、9月28日に特別編を開催した。

3.実施概要
 今回の講座の目的は、下記の様に設定した。
長期的な視点(魚の目)、広い視野(鳥の目)に立って考えることと、現場の目(虫の目)をつないで考える。人の生活に必要となる「エネルギー」「水」「食料」の内、「水事業」について取り上げ、長期的に「水」をお届けする機能を維持しながら、どう環境の変化に適用するか?
限られた時間の中で情報を読み取り、課題解決方法のシナリオを考える。各自が資料になる情報を読み取り、様々な切り口から課題解決を考え、話し合って、合意し、課題解決のシナリオを考える。

4.講座の内容
イントロダクションでの「総論賛成・各論はなぜ起こるか?」のディスカッションを行い、その後、水事業の置かれている背景と今後についての情報を理解し、今回のテーマにおけるポジションを確認して、議論を行った。

水資源は、生活者の生存にはなくてはならない。従って、将来も豊かに暮らせる社会の継続することが必要(地球(世界)・日本・県)である。
県・流域を長期的な視点(魚の目)、広範囲視野(鳥の目)で考えた。今まで通りの進め方の継続性が難しい。
県としては全体で取り組みたい(全員賛同)。
各行政が現場(虫の目)に持ち帰る。中小規模の市町村は合意。大口使用者のS市は合意せず。
さて、S市の市議会議員のメンバーのあなたはどうシナリオを考えるか?

5.ワークショップの結果から見えてきたこと
 東京P2M研究会で考えた課題解決のフレームに基づき、ワークショップを行った。
 (時間の関係上、価値基準を4つにして、各グループで選択し、重要となる要件、解決する手段を各自がリストアップし、話し合いを行い、一つの絞り込む方法と採用した)
図1 課題解決案検討シート(フレーム)
図 1 課題解決案検討シート(フレーム)

今回は、価値基準を選択する方法で進めた結果、議論する範囲が設定でき、チームワークのとれた比較的議論しやすい環境となった。
なお、2回議論と発表を行う方法でとれたので、価値基準については、グループごとに異なる立場に立って、議論を行ったところ、議論は深まった反面、選択されない価値基準は、議論されないことも散見された。

限られた時間の中で議論する場合、事前の情報と議論する情報をどう伝えて、理解していただき、各自の情報を引き出し、合意形成に結び付けていくかが重要であり、伝える方法には工夫が必要となる。

異なった立場の人が集まって、議論を進める場合、わかりやすさとタイムリーに発生した疑問を解決していかないと進まなくなり、合意形成に至らなくなる可能性がある。

6.まとめ
 今回のワークショップより、このようなフレームを活用することにより、日ごろは、短期的な視野での捉えていることを、中長期的な視点で捉え、つなぐことにより、価値基準を考え、課題を解決していくシナリオを構築していくことの有効性はあることが見えてきた。

最後に
 このワークショップは、2013年11月のPMシンポジウムでの講座「総論賛成各論反対を制するプロジェクト・プログラムマネジメント:成長し続けるためのシナリオ創り」で行う講座の内容です。興味を持った方は参加していただけると幸いです。

参考資料
2013年度東京P2M研究会資料
PMシンポジウム「総論賛成各論反対を制するP2M:成長し続けるためのシナリオ創り」講演資料

以上

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