投稿コーナー
先号   次号

「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~日本にいながらして異文化対応力を磨く力~

井上 多恵子 [プロフィール] :10月号

 「みんなちごうて あたりまえ」先日知人が出版した「99歳 ちりつも ばあちゃんの幸せになる ふりかけ -ぽっと明るく もっと楽しく 暮らしの知恵をお福分け- 」という本に書かれていたメッセージの一つだ。「99歳で大往生した大正生まれのおばあちゃんから、知人が子守歌がわりに聞いた教え。本の内容紹介によると、これは心が折れそうになったとき、やさしくはんなり語りかけてくれる知恵。確かにそういう要素も大きいけれど、私はプロジェクト運営にも活かせる知恵として、これらを受け取った。
 冒頭に書いた「みんなちごうて あたりまえ」は、P2Mで学ぶところの「文化相対主義者の考え」と同じだ。一人ひとりは違っており、誰が正しいとも間違っているともいえない、ということをおばあちゃんは、知っていた。このおばあちゃんは、外国には一度も行ったことがなかった。だから、「外国人」ほど、違った人には会ったことがなかった。しかし、日本の中でいろんな人と接する中で、観察力を高め、敏感に、「違い」を感じ取っていたのだろう。そして、その気付きを孫にも伝えた。
 先日、海外赴任者向け研修を受けた。その中心は、異文化対応力を磨くために、国ごとに一般的に見られる価値観や、考え方や行動の「違い」を知ることだった。それは大事な知識で、知っていることで、現地での生活や仕事の仕方がより円滑にいくことは間違いない。しかも、日本人に一般的に見られる価値観等と大きく異なることが多いため、学んでいる側も対比して理解しやすい。しかし、程度の差はあれ、日本人同士でも一人ひとりは違うわけで、普段から意思疎通を上手くはかるためには、「文化相対主義者の考え」で行動することが本来望ましい。
 だから、「みんなちごうて あたりまえ」。その意識を、海外赴任をしたり、外国人と仕事をしたりする機会がある前に養っておくと、いざという時に慌てなくてすむ。その際、日本人は集団主義や横並びを好みがちなところがあるので、留意する必要がある。私の職場では3時になると、体操の音楽が流れる。私は肩がこりやすいので、席にいれば、いつも、この3時の体操をやっている。しかし、見渡す限り、他の人は誰も体操をしない。そんな中、私は気にせず平然と体操をやっているのだが、周りの人から何度か言われたことがある。「よく一人でできますね」私からすると、そう言われること自体がびっくりだ。
 “Dare to be different.”(勇気を出して、他の人と異なった人になりなさい)先日女性活用について考える会で、アメリカ人の方が言っていた。そう、アメリカでは「違っている」ことが良いとされる。ある意味、自分勝手かもしないが、誰が何と言おうと、自らが決めた道をいく強さがある。
 「みんなちごうて あたりまえ」。その意識を、どうやったら持てるか。仕事に対する想いを皆で語ることでもいい。職場で以前対話セッションをやったことがある。ポジティブな反応が多く、一番多く聞かれた感想が、「普段なかなかこのレベルまで話さないので、こんなことを考えていたんだ!という発見がいろいろできて良かった」というものだった。仕事に対して同じように思っている部分もあり共感できる一方、新たな視点を発見したりできる。しかも表面的な想いではなく、その背景まで語ると、そのことが、「違いを知り、認め合うこと」につながる。
 「99歳 ちりつも ばあちゃんの幸せになる ふりかけ」から学んだもう一つのこと。それは、「うれしぃみっけ」。大人になっても、毎日嬉しいことを見つけること。子供の頃は毎日新しい経験や発見がありワクワクしていても、大人になると、なんとなく惰性で生きてしまう。そして、「毎日同じことの繰り返し」でつまらない、と思ってしまったりする。ましてや、異文化の人とプロジェクト運営をしないといけなくなると、思い通りに進まないことが増え、「大変」と愚痴を言いたくなる。そんな際にでも、「毎日嬉しいことを見つける」ことができると、ハッピーになれそうな気がする。
 ただし、私のようにそういう思考回路ができあがっていない人には、これを習慣化し毎日続けるのは、容易ではない。さて、どうするか。そんな時に役立つのが、このばあちゃんが孫にやっていた問いかけ。毎日寝る前に「今日はどんなうれしい見つけましたか」と聞いたそうだ。これは、まさしくコーチングの技法だ。問いかけて、答えは相手が見つけ出す。すごいばあちゃんだ。私の場合、毎日問いかけてくれる人はいない。夫を感化するのは難しそう。だから、他力本願ではなく、自分自身に問いかけようと思う。潜在意識に入り込むまで、紙に書いて貼っておこうと思う。
 皆さんも、やってみませんか?

ページトップに戻る