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「グローバルで通用しているビジネスの常識を学ぼう」 (18)
―日本再生へのアプローチ (2)―

渡辺 貢成: 9月号

A. 先月はFさんから4つの提案があった。
第一の提案は「日本はこれからグローバル社会の何処で稼ぐのか!」
第二の提案は「日本国内にどのような新しいネタがあるのか!」
第三の提案は「モノづくり」だけを懸命にやってきた。ここで「モノづくり」の発想を一時忘れて、「コトづくり」で新しい価値を生み出さないか提案する。
E. 私は先月グローバリゼーションの負の面を説明しました。グローバリゼーションの正の面を受け止め、新しい価値創出の可能性を提案します。
  (1) 近代化の成長プロセスを説明できる「収斂仮説」
ポーモル/デロングの成長の「収斂仮説」によれば
  より低い所得水準のから出発した国ほど早く成長する
  すべての経済は、定常状態に収束する
  均斉成長の状態では、一人当たりの産出量は技術進捗率で成長率が増加する
  ただし、グローバリゼーションはIT革命によって技術の利用の壁をなくした
図 1:米国、カナダのキャッチアップ
図1:米国、カナダのキャッチアップ
図 1.は1600年代の先進国イタリア、スペインは先進国として成熟状態であり、成長率が0.1%であった。これに対し米国、カナダ、オーストラリアは新興国で成長率がイタリアの7倍であり、17世紀の新興国であった。当時の日本、インド、中国、ブラジルは近代化の条件が揃っていなかった。

図 2 日本のキャッチアップ
図2 日本のキャッチアップ
図 2 は1870年代の世界情勢である。先進国としての英国、オーストラリアは成長率が1.4%と低く、ポスト・モダン国になってしまった。これに引き換え日本は成長率が2.7%と当時の新興国で所得倍増にまい進していました。この時期の中国、インド、ブラジル、ソビエト連邦は近代化の条件が整っていなかった。

図 3 BRICsのキャッチアップ
図3 BRICsのキャッチアップ
図 3 は1995年で日本の成長率は1.1%と低い。そこで21世紀の超低金利国になってしまった。一方BRICsは成長率が高く、新興国から「近代化した国家」への仲間になりました。
A. Fさん。図で説明してもらいありがとう。ここでグローバリゼーションとの関係を分かりやすく、説明してくれないか。
F. わかりました。グローバリゼーションをまず説明します。これまでの経済と1995年以降の経済が大きく変わった理由はインターネットの普及です。経済の常識が180度転換しました。1990年で先進国の成長が止まってしまいました。この頃はソ連の崩壊によって國際金融資本は独占的強みを持つことが出来たのです。先進国へ投資しても、レターンがわずかで、投資対象となりません。また、先進国は規制を強め、外資の導入を規制してきます。國際独占金融資本は、各国からの規制のないグローバルマーケットつくりを考えました。そして、新興国へ資金、技術、人材を投入することで、大きな新興国マーケットを創りました。それが可能だったのは新興国の工業製品を米国が輸入超過で買い取ってきたからです。
B. 米国が新興国の製品を買い取っていたら貿易収支赤字となり困らないのでしょうか
A. 私も、米国が赤字を垂れ流していることに不安と、不思議さを感じている。答えられるかね。
F. そのご質問は皆が不思議に思っている問題です。この説明をしますが、その前に、膨大な米国のマーケットや先進国のマーケットを狙ったコモディティ商品が世界に出回っています。新興国のEMS(大量生産式工場)は従業員が100万人以上もいる大工場です。コモディティー商品向きの工場です。日本の製造業では太刀打ちできません。このため日本の製造業のマーケットが基本的に狭められ、従来と同じ戦略で製品企画をしても売れないという問題に直面しています。国際金融資本のグローバル戦略というものが従来の経済の常識を代えてしまったという事実を日本の経営者も、マスコミも、また国民も理解してないことは全く不幸なことです。皆さん方はご理解できたでしょうか。
A. 云われてみると大きな問題だな。議論が複雑化すると混乱を招くので、今日の議論はここまでとし、来月は米国の国際収支のからくりを説明してください。
からくりを理解できたら、日本の再生で私たちは何をしたら良いか提案して欲しい。

以上

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