例会部会
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第175回例会報告

例会部会 斎藤 雅敏: 8月号

【データ】
開催日: 2013年6月28日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「ジンギスハーンに学ぶ、イノベーションとプロジェクト思考」
  ~ジンギスハーンはユーラシア随一のイノベーターだった!~
講師: 濱本 知一(はまもと ともいち) 氏/株式会社富士テクノソリューションズ 取締役

〇 講演内容

0.ウォーミングアップ
 ご講演の最初に濱本様から一つの問いが示されました。
あなたのプロジェクトはどのタイプですか?
1 ) 走る前に考える
2 ) 走ってから考える
3 ) 走りながら考える

3 ) は日本人に多く「なんとかなる」環境だから効力を発揮してきた。これから、特に国際社会ではそんなに甘くない。1 ) はいわゆるプロジェクト型、計画重視なのだが考えすぎると動けなくなる、という問題がある。スティーブジョブスなどは2 ) でやっていたというが・・・・

1.ジンギスハーンに学ぶイノベーションとプロジェクト思考
 講師の濱本様は2009年のモンゴル訪問をきっかけにして研究を重ね、そして「ジンギスハーンはユーラシア随一のイノベーターだった」と言う考えに至ったといいます。今回はそのお話しを中心にイノベーションとは何かについて伺いました。
◆ ジンギスハーンのマネジメントコンセプト
1 ) 目的の単純化
ゴールを明確化し、共有した
2 ) 適材の適所登用
征服した土地からも柔軟に登用した
3 ) 命令必行・約束厳守
「8 ) 主君への忠誠心」が元。守らない場合は…
4 ) 物資調達・輸送の兵站能力
5 ) 絶対王政的組織
6 ) 現場主義
現場にすべて任せる。未達成は死を持って償う
7 ) 情報重視・文書主義
特定の言語は持たなかったが、のろし、鏡、鳩などを用いて素早く情報伝達を行った。
ハンコで情報のやり取りを行う
8 ) 主君への忠誠心

特に兵隊の管理…3万人の兵隊と100万頭の家畜の管理ですが、この規模のヒトと家畜を管理していくには関東平野ほどの面積が必要であり、その規模をモンゴルからヨーロッパにまで移動させながらマネジメントしたジンギスハーンの手法には只々驚嘆する思いでした。またジンギスハーンは、その生涯において大きな戦いを15戦、行ったといいます。
そしてその戦いの歴史は、大きく"3つの期”に分類出来ると言います。
1 ) エンジニアリング期…最初の戦いから15年
 負けて経験と知見を積む。次の戦いに備える
2 ) イノベーション期…モンゴル制覇
 連戦連勝!最高の武器と情報連携
3 ) システム化期…ジンギスハーン死後、モンゴル帝国の発展へ
 帝国維持、後継者育成

講師の濱本様は「しっかり負けた事が大切。負けて知見をつむ事で次につながる。一度も失敗しない事はダメ」と強く訴えかけていました。なぜ負ける事が大切なのでしょうか。
失敗しないとイノベーション出来ない。⇒ 失敗しないと物事の本質が理解できない。
物事の本質が判らない状態で本(参考書)を読んでも内容が素通りしてしまう。
このように失敗から何かを掴み自分の腑に落としていないと、どんなに良い事が書かれている書籍も自分の身にならないばかりか、イノベーションを起こすための土台が無いためイノベーション出来ない、とのことでした。

2.イノベーションとは
 最近特に「イノベーションしなさい」と上司から命令があるが、そもそもイノベーションとは?イノベーションとは何かに注目し、そのステップについて紐解かれました。
◆ イノベーションの5ステップ
1 ) セレンディピティ
常に好奇心豊かに興味のアンテナを張り巡らせ”異質”に対する感覚を磨く
”掘り出し物”を見つける能力
2 ) エンジニアリング
日々の活動から知見、経験、ブランドを整理・蓄積する・・・プロジェクト思考
「勝つと慢心が残る。負けるには理由がある」・・・エンジニアリングの基本
3 ) キュレーション
目的に沿った蓄積の再編集・・・リエンジニアリング
4 ) イノベーション
今までの経験、知見より新たな価値を見出す
価値観を見直し、新しい価値創造にチャレンジする
※いきなり「新しい何か」は産まれない
5 ) システム化
成功体験を体系化、制度化して定着(形式知化)させる

 「イノベーションはいきなり出来ない」
イノベーションを成功させるには、上記ステップを着実に踏む事が肝要である。
今まで自分たちが行って来た事を見据え、様々な失敗から知見を見出し、整理・分析する事で新たな価値を見出す事。そのためには、日々過ごす中で"感性"を研ぎ澄ますコト(例えばジンギスハーンの中からヒントを得る様な)それが大切な様に感じました。

3.プロジェクト思考の大切さ
「失敗する事、考える事、はエンジニアリングである」
エンジニアリングとは、失敗の連続、、、失敗から学び取る事が大切。失敗をきちんと分析してこそ失敗が生きる。その"経験"から物事の本質を掴む力が芽生えてくる、、、それがプロジェクト思考に繋がる。根底にあるのはセレンディピティ「おかしいと思う力を磨く」こと。ではプロジェクト型の人とはなんでしょう?
 濱本様曰く「おせっかいの仕切りや、お祭り人間である。餌を投げかけ、おだてて祀り上げる」これらの事を踏まえて私が感じた事は、「自らが、自らの経験をまとめ、周りを巻き込む力を持つ事」それがプロジェクト人材として必要な素養だと感じました。

〇 最後に
お話の中で特に私に響いた言葉として「youメッセージよりiメッセージ」と言うのがありました。you…あなたが悪い、上司が悪い、環境が悪い、、、、、よく聞かれがちな言葉ですが、これを「i (私)」に置き換えたときどうなるでしょう。似た言葉で「他責と自責」という言葉がありますが、それと同じで問題を自分に置き換える事で変化もしやすくなるし、他者に対して”悪い感情を持たなくなる”と言う点で素晴らしい事だと思います。会場からの質問で気づいたのですが、どうしても私たちは「受身」で動く事に慣れているのではないでしょうか?「他者から命令を待つ(you)」のではなく「自ら失敗して考えて動く( i )」がこれからのビジネス人材にとって必要な事だと感じました。そして濱本様は言いました。「重要な事は実践である」と。
私も早速、今までのプロジェクトを振り返り”失敗からの知見”をまとめたい。そう感じた例会になりました。

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