例会部会
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第173回例会報告

例会部会 渡部 寿春: 6月号

【データ】
開催日時: 2013年4月26日(金) 19:00~20:30
テーマ: ゲーミフィケーションをマネジメントに活用する方法
~ロールプレイングゲームに学ぶ「部下を魅了する」リーダーシップ~
講師: 株式会社 安部一真事務所 代表取締役社長 安部 一真氏

 今回参加された方の中には、テーマとなったゲーミフィケーションについて、どこかで聞いたことはあるが良く解らないと言う人が多かったのではないかと思います。コミュニケーションマネジメントの類?とか、ゲームの制作に関すること?とか様々な憶測を抱きながらも、最近良く聞くキーワードだからと興味を抱かれたのではないかと思います。実際、米国で提唱されたのが2010年であり日の浅い概念ではあるもののマーケッティングや組織管理、人材育成の分野で大きな注目を集めBusinessComputerNewsでも大きく取り上げられました。
 今回の講演では、このホットなテーマを元経済産業省のキャリア官僚と言う経歴を持つ安部氏よりマネジメントでの活用方法について説明して頂きました。

ゲーミフィケーションとは?
 人を楽しませて夢中にさせるゲームの要因が「達成感」であるとし、マネジメントに活用するための11要素が順序良く説明されました。

  なぜ、RPGなのか(なぜゲームにハマるか)
ドラゴンクエストやファイナルファンタジーなどのRPGは、アクションゲームと違い1プレイ毎ではおそろしく「ルーティンワーク」でありながら、徹夜も辞さないプレーヤーが続出するほど楽しい。他方、仕事は社員にとって「つまらないもの」と考えられている。RPGの要素を解きほぐし、その良い要素を会社やチームのマネジメントに活かせば「社員を魅了するリーダーシップ」が実現できるかもしれない。

  小さなゴールが集積したうえで、明確で偉大なゴールの達成に進む。
ドラゴンクエストⅢでは、「父の意志を継ぎ、世界を救うため魔王を倒す」という極めて明確で偉大なゴールの下、「モンスターを倒す」「村に到達する」「盗賊を倒す」といった小さなゴールを1つ1つクリアし、偉大なゴールに進む。

  ゲーミフィケーションをマネジメントに活かす11の要素
    偉大なる段階的ゴール
  ‐小さなゴールが集積し偉大なゴールに進む。‐
    入門教育
  ‐マニュアルを見ずとも自然とやり方が理解出来る。‐
    自主・自立
  ‐一切の強制なく、自主的にプレイする。‐
    ルール
‐しかるべきプロセスを経なければ目的が達成できない。‐
    ダイレクトフィードバック
  ‐攻撃などのアクションをすると即座に結果が出る‐
    デザイン演出
  ‐レベルアップ時の効果音など‐
    難易度コントロール
‐初心者には初心者なりの敵、上級者には上級者なりの敵が登場する。
    競争 
‐プレーヤー間でのランキングを示し競争させる。‐
    協働
‐プレーヤー間で協力して、課題を解決する。敵を倒す。‐
    状況の可視化
‐レベル、体力などの状況が常に可視化されている。‐
    称号・成長
  ‐成長に応じてレベルUPする。‐

  「達成感」を与えるしかけ。

「達成感」を与えるしかけ


活用事例
  理想的な活用事例:(株)オリエンタルランド
理想的な活用事例:(株)オリエンタルランド


  (番外編)反面教師としての活用事例:経済産業省
(番外編)反面教師としての活用事例:経済産業省


 講師は、理想的な活用事例でオリエンタルランドを紹介し、90%がアルバイトでありながら25年以上に渡り高い組織力と品質を維持出来ているのは、ゲーミフィケーションの要素が全て備わることでスタッフのモチベーションが維持されているためであることを詳細に説明され、その他、複数の企業についての分析も披露されました。又、反面教師として元の職場である経済産業省を引用し、11の要素が全く成立しないことが組織力を著しく停滞させていることも説明されました。

 今回の講演内容は、1企業におけるマネジメントの解説であったもののプロジェクトマネジメント(PM)においても考慮すべき要素が紹介されたと思います。PMはQCDの達成を目標としてリスクやスコープ、そして組織をマネジメントしますが、各自の「達成感」を意識することは少ないように思います。どちらかと言えば、責任感、遂行能力、計画力、調整力といった姿勢や能力に主眼が置かれるのでしょうが、今回説明された様に、長期的な組織力の観点からみれば、各自の「達成感」を意識したモチベーションのマネジメントも重要な要素であることが解ります。今、ゲーミフィケーションが注目される理由も納得出来ました。

 最後に、今回の講演で使われた資料が、協会ホームページの「PMAJライブラリ(例会・関西例会)」のページにアップロードされていますのでご参照いただければと思います。
 また、我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集しています。参加ご希望の方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。

以上

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