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「グローバルで通用しているビジネスの常識を学ぼう」 (15)
―地政学的戦略論からのアプローチー

渡辺 貢成: 6月号

A. 先月は「アベノミクス」などの話で勉強にはなったが、少し難しかった。今月はもう少しやさしい話にしよう。グローバル、グローバリゼーションという言葉を多くの人が使うが、内容がまちまちな気がする。誰かグローバリゼーションの定義をしてくれないか。
E. グローバリゼーションという言葉は良い印象を持っている人、悪い印象を持っている人に分かれますが、まず定義をしてみます。

1. グローバリゼーションの定義:
 国家や地域を超えての経済的、政治的、文化的な事柄を地球規模で捉え活動したり、処理したりすることを言います。グローバリゼーションが始まったのは第二次大戦後、冷戦時に、アメリカ合衆国を中心とした西側諸国において、多国籍企業が急成長した時期が始まりといわれています。
 グローバリゼーションという言葉がより広まったのはソ連が崩壊した冷戦後の1992年以降と言われています。この場合のグローバリゼーションの特徴の一つにどの国の規制も受けないという概念があります。多国籍企業は当該国の規制を受けますのでグローバリゼーションの前段階と考えてください。

2. グローバリゼーション:国際金融資本の活躍とその効果
グローバリゼーションを活躍の場としたのが國際金融資本です。国際金融資本は多くの国をまたにかけて活躍しています。彼らが目論んだことは、国家という規制から離れて自由に活躍することを企みました。それを可能にしたのが、インターネットでした。

 国の制限を受けずに世界中の企業や人々とコミュニケーションができます。規制がないと発想が自由となり、世界中のあらゆる場所で作られているもの、実行されていることを自由に取り入れることができます。また、それらを組み合わせることで、新しい価値を生み出し、世界中の人々に喜びを与えることもできます。グローバリゼーションは新しい可能性を増幅することができるという利点を世界中に与えることができます。情報通信技術がこの特徴に大きく寄与しています。

 ではここで國際金融資本の視点でグローバリゼーションを眺めて見ます。彼らは地球規模の大きな事業に融資することで、今までになかった巨大な経済規模の事業を新たに創出してきました。國際金融資本はソ連崩壊後結束力を強め、新しい金融商品(デリバティブ)を開発し、地球規模の金融の流通量を従来の100倍にも拡大しました。従来の金融の流通量は貿易による実金融の量を超えなかったのですが、新興国が成長するには資金が足りません。デリバティブ取引により、生み出した実金融の100倍ものカネをつくり出し、新興国への投資を拡大しました。その結果新興国の台頭という世界が生まれん、同時に国際金融資本の収益の拡大という構造を確立させました。

A. Eさん、定義だけでなく、グローバリゼーションの内容まで踏み込んで話してもらいありがとう。一般に知られていないことを勉強できた。では誰かグローバリゼーションの恩恵について話してもらえないか。
C. 私が資本主義と社会主義の葛藤、その後の情勢について話します。
A. それは面白そうだ。お願いします。

3. 新興国の台頭と先進国の苦難:
C. 欧米先進国の従来の植民地政策は、「植民地に金と技術と教育を与えない」方針で成功させてきました。これは先進国だけを繁栄させる搾取主義でした。
 第二次大戦後は資本主義と社会主義の競争時代が続きました。戦後は社会主義に賛同する国が増え、資本主義と社会主義の優劣が問われる競争が続きました。そのため従来の植民地主義は姿を消しました。資本主義と社会主義の競争は一世紀近く続きましたが、それぞれ体制上の欠陥がありました。

 資本主義は「収益を得ることは容易だが、分配が困難」という課題があり、結果は『少数の金持ちと多数の貧乏人を生み出す』体制と言えます。戦後はこの体制を改善する政策が多く採用されました。ビルトインスタビライザー政策といって、労働組合の導入、最低賃金制、公共投資による景気対策、医療費保険制度、国による種々の補助金の提供等です。

 社会主義は「利益配分には困らないが収益を得ることが得意でない」体制と言えます。「分配が平等だと皆共通して働かなくなるという傾向」を回避できませんでした。結果は資本主義体制の国民が社会主義体制の国民より豊かになったことです。

 ここで両者の勝負はあったのですが、社会主義はその事実の隠蔽に力を入れ、独裁主義的な運営を続けてきました。しかし、インターネットの普及でそれらの事実がソ連圏の人々に理解されるに及んで、ソ連は国家運営の方向転換に踏み切りました。その結果資本主義の勝利が世界中で理解されました。
 この成功に気を良くした国際資本主義のメンバーは新興国市場の開発という発想を強く進めました。これはアジアで大成功でした。

A. Cさんありがとう。よく理解できた。グローバリゼーションは新興国に富をもたらせたが、先進国にはどんな影響を与えたのか話してもらえないか。
D. 私が話します。

4. グローバリゼーションは先進国に富をもたらしたか
D. 長くならないように簡単にお話します。
 ロバート・J・シャピロ(1999~2001)米商務省次官の書いた本で「2020年-10年後の世界新秩序を予測する-」が2010年10月に翻訳本が出版されました。この本の内容を説明します。そして2013年に再度読み返してみました。3年たった今でも世界は幸か不幸か本の筋書き通りに進行していることが確認されました、という前提でお話します。

4.1 この本の筋書き(目次の紹介)
  第1章 グローバル社会が直面する難局
  第2章 少子・高齢化による国家破綻の危機
  第3章 グローバリゼーションに終焉はあるか
  第4章 世界の経済成長を牽引する両極―中国と米国―
  第5章 欧州と日本はこのまま衰退するのか
  第6章 高齢化、エネルギー、地球環境の危機にどう対応するのか
  第7章 テクノロジーは未来を切り拓くか
  この中の第5章を話します。

A. 内容が面白いね。この話は来月にしてもらえないか。今月は盛りだくさんだから読者も疲れるだろう。新鮮な気持ちで聴いてもらおう。
D. 分かりました。そのようにします。

以上

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