さて、ここでのプロジェクトは中央銀行、各関連銀行とも良好な関係と信頼感から特に大きなクレームもなく順調に進めることができました。
プロジェクトの実行期間中で生じた問題は①システム開発環境がフォルトトレラントといった特殊なハードウエアーであったことでこの調達に苦労したこと②このハードウエアーを利用しているプログラム開発会社が持っているものが古いタイプのものでOSのVersionも古く開発とテスト双方の利用に不具合があったこと③中央銀行のメインコンピューターと各銀行をつなぐリレーコンピューターのインターフェースが合わなかったことでリレーコンピューターのイギリススのソフト開発会社との調整に時間がかかったことなどでした。
いずれにしても中央銀行の総裁や副総裁も本プロジェクトに直接関与し、問題発生時の決断も早かったため順調にこのプロジェクトは完了することができました。
中央銀行総裁からは”This is a quantum leap in he history of Turkish banking society”(これはトルコ銀行業界の歴史における飛躍的発展である)と最大級の賛美をもらいました。
最後にこのプロジェクトの契約について話をします。このプロジェクトは「日本の全銀システムと同じシステム」という不明確な要求を基本設計・基本検討フェーズ中に明確化し、かつ見積もり変更のリスクに対しては実費精算とし、その後仕様が固まったところで一括契約としました。
日本では顧客要件の不明確なまま一括で契約するケースも多く、非常に危険なプロジェクト運営をしていることも少なくないと聞きます。特に最近はアジャイルといった開発手法も出てきているようですがこの場合も上記のトルコプロジェクトのケースで進められます。
プロジェクトマネジャも契約の特徴とその内容を理解し、プロジェクトの質や規模、複雑さに対応できるようになっている必要があるでしょう。