C. |
Dさんの言われる②の件ですが、実は日本のお役所も新しいことに挑戦しています。現代の開発案件は複数の省庁にまたがっており、省庁が協働して実施しなければなりません。ところが日本の官僚の成績は予算の獲得量で決まりますので、各省庁が同じテーマで争うことになり、共同案件が極端に少なく、効果的な対策を取れないでいます。また、官発の研究開発テーマについては民間の協力が必要ですが、民間は各省庁と平等にほどほどのお付き合いをします。結果としてほどほどの成果しか出ません。また、新規予算を獲得しても、実施段階では担当官僚が転勤となり、予算は既得権者へ流れるなど、国民の目に見えない習慣が成果を阻んでいるのが現状ではないでしょうか。時代の変化に、日本も変わっていくと言う意識が感じられません。 |
B. |
国内産業に従事している我々は日本の商習慣の中で人間関係をつくりながら仕事をしています。そのためグローバル社会のビジネス習慣からかけ離れていながら、自分がかけ離れているということを理解していません。例えばグローバルインフラは新興国の大きなテーマです。金のある日本が資金を提供できるテーマでもあります。日本は従来からインフラとは箱物行政と言って「箱」をつくることだと考えられていました。本当は違うのです。例えば港湾施設をつくるとします。役所はゼネコンと設備業者にハードの納入仕様を決めて発注します。運用は港湾を管理する役所が行います。
日本に外国の船が入り通関手続きをします。シンガポールでは即日完了ですが、日本では書類が種々の箇所を回って日数がかかります。しかし役所は何の不便も感じていません。利用者より役所が偉いという立場で仕事をしていた習慣が残っています。従って外国船はハブ港湾として日本の港を利用しません。韓国の釜山は日本のすべての港湾施設を足したより大きなハブ港湾を運営しています。中国―米国間の膨大な数の船舶が津軽海峡経由で運行されています。そのメリットを日本の役所は利用することを考えていません。香港はその3倍のハブ港湾を持っています。
さて、本題に戻りますが、日本のコンソーシアムが相手国にプロポーザルを出しますが、日本のコンソーシアムは「運用力」で負けてしまいます。日本人の多くは「サービス第一」と言って、顧客への「サービス」を口にしますが、その「サービス」は無料を意味します。欧米の「サービス」はお金を取れる「価値あるサービス」を提供することをモットーといています。「只のサービス」から「有料のサービス」を売ると言う発想の転換がないと、種々の分野でグローバル競争に勝てないと思います。グローバルインフラを受注できない要因がここにあります。 |
A. |
Dさん、Cさん、Bさん、ご意見ありがとう御座いました。それぞれ、私達にとって気がついていないが、重要な対策案を提供してもらえました。 |
D. |
今日は「2020」の内容の話をしました。3年後の話を言い忘れました。「2020」に書かれていた内容は今もその流れに沿って進んでいることをお伝えします。 |
A. |
それは困った事実ですね。 |
D. |
笑い話のような話をさせてください。今日お話しする予定の「100年予測」です。
本書を大雑把に説明します。本の表紙に示された図です。
・ 2020年 第二の冷戦
・ 2020年 中国分裂の危機
・ 2050年 日本、トルコ、ポーランドが力を蓄え、アメリカと戦争へ!
・ 2080年 宇宙開発が進み、宇宙での太陽光が、主要エネルギー源に
・ 2100年 メキシコがアメリカと覇権を争う
「2020」は現状を細かく分析し、10年間予測をしています。従って私達から見て信憑性が高いという感覚を与えてくれました。「100年予測」は地政学と大局観で分析を進めています。日本に関しての論評も含めて概要を話します。ロシアは力を失い、米国に対する次の挑戦はイスラム帝国の再現を目指すイスラム教徒の米国への攻撃です。しかし米国はイスラム教徒に対し勝利でする必要はなく、イスラム世界の集団同士の反目によるイスラム帝国実現を阻止することを行いました。二番目が中国です。中国は物理的に孤立している国であり、また海軍国でもない。問題は本質的に不安定です。これまで外の世界に国境を開放するたびに、沿岸部は豊かになるが、内陸部は貧困のまま残され、それが緊張、対立、不安を引き起こしています。その結果経済的意思決定が政治的理由で決定され、非効率と腐敗を導いてきました。米国はロシアとの均衡を保つための錘として、中国をてこ入れし、つなぎとめるだけで、現在の中国経済ダイナミズムは、長期的成功につながらないと見ています。
三番目が21世紀半ばに台頭する国で、日本、トルコ、ポーランドを上げています。その第一が日本です。日本は(出版当時)世界第二位の経済大国ですが、資源に乏しく、輸入依存度が極めて高い最も脆弱な国です。軍国主義の歴史を背負う日本が平和主義的な二流大国のままでいるはずもない。深刻な人口問題を抱えながらも、大規模な移民受け入れに難色を示す日本は、他国の新しい労働力に活路を見出すようになります。日本の脆弱性は危機が切羽詰まったときに、大きな政策転換を達成し、突然強力になった過去数回の事例がある。(日本はコンセンサスを得るのに時間がかかり、決断できないでいるが、切羽詰ったとき決断するとその団結力で見事に立ち直る)。
日本の次はトルコ(説明省略)で、これと日本が組むと強大な力となるが、しかし2050年戦争でも米国は負けないと書いてありました。 |
A. |
Dさん、この議論を面白く纏めてくれたね。2050年にまた負けることは御免こうむりたいが、言われてみると日本はいざとなると底力を発揮する国民でもある。来月は新年度なので、皆で戦略について議論してみたい。戦略がないとプロジェクトやプログラムは成り立たないからね。 |