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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~インタビューする力~

井上 多恵子 [プロフィール] :3月号

 阿川佐和子さんの『聞く力』が、文春トピックスの新書ランキングで1位になっている。「サワコの朝」(TBS)でインタビューをしている佐和子さんは、本当に楽しそうで、書籍に書いていることをまさに実践している。プロジェクトマネージャーにとっては、「インタビューする力」は、メンバーの想いを知る上でも、また、ステークホルダーのニーズを知る上でも、大事なスキルだ。今回は、私の経験を踏まえ、特に「想いを知るためにインタビューする力」について、考えてみたい。
 まずは、部課長同士で組織の目指す姿を話し合うワークショップを社内で展開している中で、インタビューをした経験。AI(Appreciative Inquiry) と呼ばれるプロセスを用いて、肯定的な質問の投げかけにより、個人の価値観や組織全体の真の価値を見つけ、それらを肯定的に認めていくことで、組織の可能性を広げていこうとしている。
 具体的に取り入れているのは、「ハイポイントインタビュー」と呼ばれるもので、二人ひと組のペアになり、「入社を決めた際、あなたはどのような想いを持っていましたか?」「これまでにあなたが経験した仕事の中で、心に残っているものは何ですか?」「その仕事に携わっている際、どんなことを感じていましたか?」といった質問を投げかけてる。そうすると、それまで、ぶすっとして座っていた方でも、年齢や性別に関係無く、話をしているうちに、活き活きとしてくる。「そういえば、あの時こんなこと思ってたよな、、、」「小さい頃からこんなことが好きで、それを会社に入ってやりたかったんだ」その後、「他己紹介」というのをやる。自分がインタビューした相手のことを、5-6人程度のグループの中で紹介する。自分のことをこういう形で紹介されるのは、ちょっと照れくさいけれど、嬉しい。
 先月受講した研修で、仕事上で充実していた時の状況や落ち込んでいた時からどうやって立ち直ったかについてお互いにインタビューをした時も、同様な反応があった。照れ屋かと思っていたある男性の方も、最後は、私の方をじっと見て話をしてくれた。この研修では、話を聞く中で感じた相手の強みを、相手に伝えてあげることもした。これは、お薦めだ。自分の強みについてそれまで考えたこともなかった方もいて、強みを言ってもらえると、嬉しそうだった。私自身も、自分で漠然と思っていた強みを言葉としてプレゼントしていただけて、自信になった。
 1月にアメリカに出張した際には、30人近い女性管理職の方々にインタビューをした。若手女性の目標として位置づけられた、いわゆる「ロールモデル」と呼ばれる方々だ。ニューヨークのオフィスでは、昼食をはさみ、朝9時から40分単位程で夕方7時近くまで、1対1でインタビューをした。メモも取りながらの英語での終日インタビューは始めてで、「上手くいくかな?」そんな不安な気持ちもあった。でも、結果は、最高に楽しいものだった!初対面にも関わらず、どんなキャリアを築いてきたのか、困難な局面をどう乗り切ってきたのか、女性としての苦労はあったか、そして、後輩への女性へのアドバイスについて、全ての方がオープンに、活き活きと話してくれた。この一日でどれだけ多くのエネルギーをもらったことだろう!

 これらの経験を通して、私が思う「インタビューを成功させる要点」は次の3点だ。
1. 相手に好意的な関心を示し、眼を見て話す
 キャリアカウンセラーの資格を取るための研修では、相手が自分に顔をそむけて話をするとどう感じるかを体感するワークをやる。すぐ興ざめして、話をしようとする気が失せてしまう。体感したことがない方がいらしたら、一度やってみることをお薦めする、数分で反応がわかる。好意的な関心を示すためには、前のめりの姿勢や適度な相づちも必要だ。

2. 相手に時間を提供する
 インタビュー中は、マきちんと相手に時間を提供したい。お互い多忙な中で時間を取っているのだから、PCや携帯の画面を見るといったことは避けたい。携帯の電源も当然オフかマナーモード。30人近いインタビュー中に携帯が鳴った人は、誰もいなかった。

3.礼儀を尽くす
 最後に紹介したアメリカの例のように、貴重な時間を割いてインタビューに応じてくれた方には、丁寧にお礼をしたい。私はお礼のメールを送付する際、自分で作成したひな型に、パーソナルなタッチー各人が語ってくれた言葉の中で心を動かされたものへのコメンーを追加した。時間はかかったが、私の気持は伝わったと思う。個別化が難しい場合でも、お礼は必須だ。お礼のメール一つ送ってこない人に対し、再度協力してあげようという気持ちにはなかなかなれない。

 インタビューされる側がより活き活きと話ができるよう、これからも「インタビューする力」を磨いていきたい。

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