ダブリンの風(113) 「不適格なPM群像 4」
高根 宏士: 1月号
2013年が始まりました。新年おめでとうございます。PMAJオンラインを読まれている皆様には益々のご活躍とご発展を祈念しております。
昨年は東アジア諸国のリーダーが新しくなりました。その中で日本のリーダーが中国、韓国や北朝鮮に対して存在感を示すことができるかどうかが今問われています。日本のリーダーは、ここ数年は影が薄く、空気が読めないままの粗忽な行動と中国に恫喝されると引っ込んでしまう頼りなさが目立っています。新しいリーダーに求められるのは主体性を持った粘り強さと海千山千の相手に対する毅然とした姿勢としたたかな行動です。日本のリーダーが是非ともその方向でレベルアップしてもらいたいものです。
年は空けましたが、本コラムでは「不適格なPM群像」をもう少し続けますのでよろしくお願いします。
2.2 人間としての対等または相互依存性の無視
11月号で「独善的な人・視野の狭い人」の典型的なタイプを挙げた。ここでは仮面例としてプロジェクトメンバーとの関係を上下関係のみと思いこんでおり、リーダーとメンバーの関係が対等であるということを認識していないリーダーの例を挙げる。このようなリーダーはメンバーに対しては、生殺与奪の権を握っていると考えている。したがってメンバーはリーダーの言う通りに行動すればよい、自分は偉いんだと思い込んでいる。メンバーは自分の奴隷であるということが彼(彼女)の認識である。奴隷はそれを所有する者の使い捨て人間ツールである。奴隷には意志がない。したがって奴隷は自ら進んで成果を上げようとする意志を持つことはない。そのような奴隷がリーダーの予想を上回る成果を上げることはない。リーダーの予測を下回る成果しか出せ(さ)ないのが常である。
このようなリーダーが口走る言葉の例としては
「おれの言うことを聞かなければ首だ」
「査定を下げるぞ」
「左遷するぞ」
「無駄飯食い」
である。いわゆるパワハラといわれるものにはこのタイプのリーダーが上司であることが多い。
調査によると日本の組織の中でパワハラが増えてきているという。これは一方では不適格なリーダーが増えてきていることを示しているといえる。それが本当ならば憂慮すべきことである。
プロジェクトにおいてはリーダーが方向を示し、その方向に向かって具体的な成果を作りだすのがメンバーである。俗にいえばリーダーは仕事をしていない。仕事をするのはメンバーである。したがってリーダーはメンバーに支えられて、本当の意味でその存在が正当化される。メンバーに支えられないリーダーは成果を出すことはできない。
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