ダブリンの風(112) 「不適格なPM群像 3」
高根 宏士: 12月号
2 独善的な人・視野の狭い人
2.1 典型的タイプ
ある種の鳥類に「刷り込み現象」と云われる現象がみられる。これは卵から孵った鳥が最初に出会う動くものを自分の親鳥と思ってしまう遺伝子が脳に刷り込まれていることである。通常は孵った時、そばにいるのは親鳥であり、間違いではない。しかし何らかの原因で、そばにいるのが親鳥でない場合、問題である。人工孵化したとき、そばにいるのは、多くは人間である。そのとき雛はその人間を親鳥と思い、その後を追いかけるようになる。本当の親を見せてやっても、それは受け付けず、最初に会った人間を追いかける。
今回のPMはこの鳥類に近いタイプである。すなわち自分の固定した観念の世界から一歩も出ず、人の意見を全然受け付けないタイプである。
このタイプには2種類ある。一つは文字通り頭が固く(頑迷固陋)、あることについて最初の情報を受け取るとそれを信じてしまい、後から入った正しい情報があってもそれを無視する、いわゆる「刷り込み現象」の鳥類と同じタイプである。このタイプの頭はROMになっているようである。黎明期におけるコンピュータかもしれない。あるプログラムで一つの計算を始めると、インタラプト機能がないため、他のことはなにも受けられなくなってしまう。融通が利かないこと甚だしい。
もう一つのタイプは元来それほど頑迷固陋ではないが、驕り高ぶった心境が、自分の思い、考え以外は受け付けないようにしてしまうタイプである。このPMは自分で限定した世界を作ってしまい、その中での論理を強力に推し進めることが多い。視野が狭いともいえるが、自分で視野を狭くしているともいえる。その世界から良いと思うことを勝手に進め、他の人がそれを理解しないといって非難する。自分が他の人の世界を理解しようとしていないにも拘らず。
前者を「頑迷固陋」とすれば後者は「独善的」である。どちらも他の人と共感を持とうとする気持ちが欠けている。そのためこのようなPMに力があればあるほど、周りのメンバーの発想を制約し、能力のあるメンバーほどやる気を失ってしまう。プロジェクトには欲求不満が蔓延することになる。そして頑迷固陋なPMは自分の殻に閉じこもってしまい、独善的なPMは益々周りを抑え込もうとして、協力を得られなくなる。最悪は反乱が起こる。しかし本人は自分に原因があるとは露ほども思っていない。
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