グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第64回)
2012グローバルカレンダー6月~11月

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :12月号

 8月から11月まで4か月間このコラムを欠稿してしまった。せめてもの罪滅ぼしで、PMAJジャーナル最新号のグローバルPM特集に本エッセイの延長で報文を寄稿しているのでご覧ください。言い訳ではないがこの間は超忙しく、4か月で家を離れていたのが9週間、家に居る間は次の海外出講の準備を自転車操業的にこなすという日々が続いていた。各月の後半はすべて海外に居た。
 ということで、出来事を詳細に報告していると数十ページにわたるので、月めくりポケットカレンダー風に紹介したい。
6月:地獄の論文審査
 所属のフランスSKEMA Business Schoolから博士最終論文2編の最終審査を振られた。 250ページと400ページの論文を各々10日間で査読して審査報告書を出した。終わったとたんに10月のIPMA(国際PM協会連盟)世界大会の学術論文3編の審査が割り当てられた。この1ヶ月は地獄の苦しみであった。
7月:講義シリーズの山場
 7月3日に政府(外務省主体)が仙台市で主催した仙台国際防災会議の協調イベントとして慶應義塾大学大学院ビジネススクール Grand Design by Japan プログラムが特別セミナーを開催し、これに協力教員として出講した。大学のご厚意でPMAJのPRブースも出させていただいた。
 この後慶應ビジネススクールで、休日3日を使った英語での特別セミナー “Project & Program Management for the Grand Design”を出講した。こちらは、PMAJの後援をいただき、社会人4名を含め、教授、大学院ビジネススクール生、理工学研究科生総勢35名(国籍は6ヶ国)が参加し、大成功。受講者から高い評価を戴いた。

外務省仙台防災会議展示ブースにて UCからの交換留学生のWS成果報告
外務省仙台防災会議展示ブースにて UCからの交換留学生のWS成果報告

 続いて北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)東京サテライトキャンパスで、1週間にわたり「プロジェクトマネジメント実践論 - 応用」を担当したが、受講の学生は全員が社会人の管理職であり、講義でも深い掘り下げができた。
 1ヶ月で50時間の講義というのは私の新記録となった。
8月:フランス世界Doctoral Seminar
 昨年体調不良で欠席したSKEMA Business Schoolリール本校での1週間のWorld Doctoral Seminar に教員として出席した。世界から30名の教員と50名の博士課程生(今年は不況の影響でほとんどSKEMAの学生:国籍は世界全域にわたる)。
 私が2nd Supervisorを担当する博士課程生との研究ステータス確認の他、本年に最終論文審査を担当した学生のディフェンス(学位認定に当たっての公開最終審議会)に出席したが、3名全員が合格で、めでたくPhDに認定された。うち、1名は私が在職した企業の中東の顧客の中堅社員であり、業界のために大変よい研究をしてくれた。

PhD授与決定の学生(筆者の右)と関連教授 フランダースの丘のディナー懇親会で学生と
PhD授与決定の学生(筆者の右)と関連教授 フランダースの丘のディナー懇親会で学生と

9月:またユーラシアへ
 第1週にJAIST石川本校(石川県能美市)で「プロジェクトマネジメント実践論 ? 応用」(英語)を出講したが、受講の学生は全員留学生であった。博士課程生と修士課程生が半々であったが、理解度は上々で教師としても快適に一週間を過ごした。JAISTは、教員、学生、設備ともにすばらしい!
 その次の週からウクライナとアゼルバイジャンで3週間過ごした。キエフで国立建設・建築大学と国立経済大学の両博士課程生向けに合同特別講義を2日間行った後、黒海に近いニコラエフ市の国立造船大学で開催された、ウクライナPM協会(ほとんど学会)の秋季学会で同学名誉教授として祝辞講演を行った。
 ウクライナでは、P&PMの博士課程を有する国立工科大学11校が、P&PM専攻課程のカリキュラムを共通化しており、これら11校を中心として全国のP&PM学者、PhD課程生と上級博士候補者(PhDで正教授を目指す准教授達)が集まった。大体男女半々である。 1日目は大学のキャンパスでの全体セッションで、夕方終了後、全員が黒海のリゾート地にある、大学のセミナーハウスに場所を移して交流会そして2日目の研究報告が行われた。楽しかったのは6時間に及んだ交流パーティーで、素朴なウクライナ料理(魚がおいしい)とウォッカを楽しみながら、情報交換、踊り、歌合戦(昔の日本の歌声喫茶でやっていたアコーデオンの伴奏で歌うあれである)、と、なんでもありで、また夜11時を過ぎるとかなりの数の教授達(50歳代から70歳代まで)が黒海で泳ぎだした。旧ソ連時代からの習慣で海やプールがあれば季節を問わず泳ぐのだそうだ。それもウォッカをボトル半分以上空けた後である。

ニコラエフ州知事から貢献賞を戴く ビーチでの研究発表
ニコラエフ州知事から貢献賞を戴く ビーチでの研究発表

 次に訪れたのは、キエフからフライトで3時間のアゼルバイジャンの首都バクーである。アゼルバイジャンPM協会長 Pr. Igbal Babayev氏のかねてよりの招待をお受けして、ウクライナPM協会長 Pr. Sergey Bushuyevとホスト会長と3名でP2Mを軸とするイノベーションP&PMセミナーを実施し、ホテルの国際会議室50名が満席になった。
 ちょうど、IPMA(55ヶ国)の評議員会が開催される前で、IPMA副会長達は、ヒロ(田中)何でバクーにいるのかと質問しきり。米国からのマーケティング担当副会長は、これ(P2Mイノベーションセミナー)を世界全域でやろうよと言い出した。
 なお、カスピ海の港湾都市であり、丘の上に広がる、バクー市のビーチは20kmに亘りプロムナードが完全整備され、その陸側にはブールバードが走りブティックが連なり、走る車は半分がベンツといった豪華さで、私の拠点都市である横浜は完全に負けている。
10月:基調講演の月
 10月にはシンガポールの国際大会とギリシャ クレタ島でのIPMA世界大会で基調講演を行った。
 シンガポールPM協会(SPM)とは大変親密にしており、SPMの過去3回の大会でいずれも基調講演を行ったが、今回またお呼びがかかった。ウクライナから帰国してすぐに3年ぶりにシンガポールを訪れた。ユーラシア大陸を3週間渡り歩いた後なので疲労が残っており、大会に行って帰ってきただけであったが、知人も多く、充実した講演もできた。
   シンガポールはアジアで最も豊か国になったが、反面、大変な競争社会であり、また社会の画一性も目立ちだした。かつては天国と思われたシンガポールもユーラシアのゆったりした風土と空気に馴染んできた私にはちょっと異質に映りだした。
 月末に開催されたIPMAの世界大会では、IPMAの慣例を破り、会員国ではない日本からの私が基調講演者の一人として指名されて、無事大役をこなしたが、元々の参加目的はJAISTから派遣のアカデミックとしての論文発表で、肝心のこちらのほうが順調に行って胸をなでおろしている。
 ギリシャ財政危機、ヨーロッパ超不況の中で開催された世界大会は、参加者こそ例年比減少したが、ホストのギリシャPM協会 会長 Professor John-Paris Pantouvakisの剛腕とIPMAファミリー挙げての盛り立てで、華やかに開催され、充実した大会であったことに敬意を表したい。
 大会はクレタ島という世界的なリゾート地で開催されたが、結構ワイルドな景観と気象条件下にあり、大会初日に終日吹き荒れた嵐、インドPM協会長に連れていってもらった息を飲む数時間の山岳ドライブが記憶に残った。
11月:ふたたびモスクワへ
 20日から、5月に次いで2度目のロシア モスクワ詣でをした。ウクライナPM協会が主催したイノベーションセミナーで共同講師を務めた。
 ロシアは大資源国であり、大型の資源開発プロジェクトが目白押しである一方、社会開発の効率化や企業経営の質の向上が喫緊の解題であると実感する。日本のきめ細かな段取り、運営手法は、伝え方を間違わなければ、大いに期待されるところである。  ♥♥♥♥♥

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