図書紹介
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「読書の技法」
(佐藤優著、東洋経済新報社、2012年9月3日発行、第3刷、279ページ、1,500円+税)

デニマルさん: 12月号

今回の話題は、読書術の内容と少し著者のことがある。先ず著者であるが、現在文筆家(元外務官僚)、評論家等であると紹介されている。3年前に有罪判決を受けて外務省を失職したので、元外務官僚である。その裁判では、鈴木宗男氏(新党大地代表)の疑惑事件に絡む背任容疑で逮捕・拘留され実刑判決を受け、2009年に控訴が棄却され判決が確定した。その拘留期間中のことを書いたのが「獄中記」である。特に、512日間の拘置所生活で学術書を中心に220冊を読み、読書ノートを62冊も書いたことが、後々の執筆活動に大きなプラスになったと書いている。著者はロシア大使館に勤務以来一貫してロシア外交の最前線で活躍し、今でもロシア情報に通じている。次に読書であるが、筆者も多くの読書技法の本を読んできた。中でも「現代人の読書術」(紀田順一郎著)、「ぼくはこんな本を読んできた」(立花隆著)、「頭が良くなる読書術」(斎藤孝著)、「多読術」(松岡正剛著)等々がある。これらの中でも今回の本は、体系的で実践的で役に立つ技法が数多く書かれた良書である。

読書の技法(その1)   ―― 読書で知力を鍛える ――
著者の読書は半端な数ではない。月に平均300冊、多い時で500冊以上、日に15冊以上も読んでいる。どうしてこんなに早く本が読めるのか。その技法を紹介しているが、実は何故そんなに多くの本を読んでいるのかを書いている。職業柄必要に迫られて読書しているのではない。日本は今こそ知力を強化しなければ、この情報化時代に生き残れないという信念を持っている。読書は、知力を鍛える不可欠な要素だから実践していると書いている。

読書の技法(その2)  ―― 読書に多読、速読、熟読がある ――
この本は、一般的な読書技法の紹介ではない。多分、著者が毎日実践し続けている方法であろう。多読の技法から、超速読の方法(1冊を5分で読む)、普通の速読(1冊を30分で読む)を分かり易く紹介している。更に、著者の熟読についても細かく書いてあり、同じ本を3回読むことを基本にしている。限られた時間で如何に必要な本を読み、不要な本を見限るかが読書であるともいう。詳しい読書方法に関心のある方は、本書をお薦めします。

読書の技法(その3)  ―― 読書は知の技法である ――
読書は知力を鍛える手段であるが、その知力を支える基礎知識がキチント出来ていないと読書の技法が活かされない。そのエッセンスが高校時代の教科書等に書かれた基本的なことであるという。知力は身に付けた知識を統合した応用力である。だから徹底的に知力を鍛えるには、基礎知識を身につける読書=熟読で培われると書いている。知識が幾らあっても新たな発見や創造は出来ない。著者は、最後に読書術は知の技法であると纏めている。

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