A. |
今日は徹底して日本の競争力が落ちた理由を考えてみよう。君は最近勉強しているから君から正しい答えが出てくる気がする。期待しているから率直に答えて欲しい。 私はグローバルで通用している明確な視点を持っている。君は私が何を意図しているか、今のヒントで当てられるかな。 |
B. |
難しいですね。しかし、グローバルで通用していると4つの視点だと思います。 |
A. |
面白いね。どんな視点かね。 |
B. |
「顧客の視点」、「業務プロセスの視点」、「学習と成長」の視点、「財務の視点」ですか。 |
A. |
バランス・スコア・カード(BSC)できたね。それも正しいよ。 では何の視点が弱いのか説明してくれるかね。 |
B. |
まず、「顧客の視点」が弱いと思います。私はITが専門ですが、私の周囲の人々は国内の顧客しか考えていません。家電も新興国の顧客を考えているのではなく、国内の顧客をターゲットに値下げ競争に走っています。これでは自滅を待つだけです。IT産業の顧客は「短納期、低コスト、高品質のシステム納入」を要求していますが、何のために、「短納期、低コスト、高品質」を求めているのか、よくわかりません。ビジネス要求を出しませんから、何のためにシステム化するのか、私にもはっきりわかりません。国内市場は狭くなりますので、グローバル市場に乗り出すためにわが社は何をするべきかという発想が必要なのではないでしょうか。 |
A. |
いい線を行っているね。では海外の顧客をターゲットにするにはどうすればいいと思う。 |
B. |
このままの社内の実力ではグローバル競争に勝てません。サムスンを調べると、グローバル市場で発売された日本の新商品をいち早く解体し、不要機能を削除し、高級品質の部品を中流部品と交換し、新興国の消費者の要求を満たす機能を取り付け、大々的に広告して、3ヵ月後に当該新興国で発売します。当然日本商品が新興国に届く前に手ごろな値段で、デザインのしっかりしたものを提供します。これでは日本商品が新興国市場に入り込む余地が失せてしまっています。サムスンは「顧客関係性構築」に力を入れています。商品は手ごろな値段で、日本より先に市場へ提供という組織能力の高さに経営資源を集中しています。 |
A. |
サムスンはBSCで日本企業を凌駕しているというのだね。これだけはっきりと原因がわかっているのに日本企業は何故できないのかね。 |
B. |
今でもマスコミは「ものづくり技術」を標榜しています。マスコミが騒ぐから国民は技術が最も大切だと誤解しています。それと一般に日本人は見えるものにはものすごく執着しますが、見えないもの(インタンジブル)には興味がないようです。特に「マネジメント」の大切さが理解されていません。 |
A. |
君のおかげでなにやら答えが見えてきたようだね。
ところでBSCといったら、次はポートフォリオマネジメントがあるね。これについてはどのように考えるかな。 |
B. |
経営資源に制限がありますから、戦略的に重要なのは選択と集中です。そのためにポートフォリオマネジメントが必要になります。ついでに言わせてもらいますと、「業務プロセスの視点」が重要です。米国は1980年代に製造業で日本に負けました。そこで日本企業に勝つために組織のスリム化を図りました。BPR(Business Process Reengineering)と称してスリム化を行い、意思決定を早くしました。次に組織能力の向上として、経営管理の手法を「モノでの管理」から、「電子情報での管理」に切り替えました。その成果は10倍の生産性向上、顧客への価値提案の容易さ、繰り返し作業の標準化、デジタル化で単純作業をコンピュータに任せ、社員は付加価値の高い業務をするようにしました。米国ではナレッジ・マネジメントが重要視されています。他人の実績を皆の共通実績とするマネジメントです。CKO(Chief Knowledge Management Officer)がとりまとめをしています。サムスンもCKOが存在し、定年退職した日本人を雇用して、ノウハウや暗黙知を文書化しています。これに対し日本企業は2004には株主資本主義を採用し、知識、知恵の塊である正社員を解雇し、派遣社員に切り替える愚を冒しています。ナレッジマネジメントをナレッジ(KM)のデジタル化と勘違いし、ごみの山を作ってしまった失敗にこりて、多くの企業はナレッジ・マネジメントを毛嫌いしています。KMの大切な点は社員の誰もが検索できる仕組みつくりから入る必要があります。 |
A. |
流石だ。よく勉強しているね。外国企業の良さをある程度理解した。では、日本はグローバル競争力をつけるには何をするべきか質問したいところだが、折角素晴らしい意見を出してくれた。君の意見はグローバルで通用する常識だと思う。ここで君の提案を整理しておこう。 |