PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (25)

向後 忠明 [プロフィール] :11月号

 今月号はリソースマネジメントについて説明します。
 すでに説明してきていますがプロジェクトマネジメントは以下のようなリソース(経営資源)を利用して、計画し、そして実行していくことが重要です。すなわち、
遂行に必要な経営資源を有効に展開し
エンジニアリングを通してその業務を効率的にかつ効果的に運営管理する
 特にエンジニアリングと言うプロジェクトマネジメントをつかさどる人にとっては非常に重要な活動があります。
 すなわち、プロジェクトに与えられた諸目的に対して各分野にわたる組織、技術、そして人間の知恵を結集・統合し、プロジェクトの各フェーズで業務を最適に遂行することです。つまり、目的とする対象に対して各リソースをつなぎ合わせ、それらを統合し、一つの具体的な形に作り上げ、それを実行する「コネクター」としての役割と考えてよいでしょう。
 “ゼネラルなプロ”に求められる能力には上記のような役割も求められます。そのため、“ゼネラルなプロ”には、いかなる分野や種類のプロジェクトでも躊躇せずに、その求めに応じてその目的達成のための手段とその実行を可能とする能力を持っていることが必要となります。
 そのためには貧欲なまでの好奇心とそれに対応した不断の知識吸収が必要となります。
現在のプロジェクトマネジメントに携わる人たちの多くは狭い対象のそれぞれの分野においてのプロジェクトマネジメントに限られ、他の全く異なる分野には応用できない者が大多数です。
 たとえば、プラントや建設業関連の人がIT関連のプロジェクト、又はIT関連の人が発電所建設プロジェクト又はそれらの組み合わせのプロジェクトと言ったような場合です。
 昨今では、IT系においても組み込み型ITといったものがあります。
 これからは設備、機械、電気製品、ロボット、自動車等々のハードウエアーとソフト開発と言った組み合わせのプロジェクトも多くなっていくでしょう。
 このような時代においては、専門技術者はそれぞれの専門に特化してもよいですが、“ゼネラルなプロ”を志す者は自分の専門分野の事は当然のことですが、他の分野においての技術や知識についてもそのキーポイントとなる技術や知識も知っておく必要があるでしょう。
 “ゼネラルなプロ”は与えられたプロジェクトがわかったら、その目的に見合った人、物、金に関する情報、知識、経験をフル活用して「コネクター」としての活動を開始しなければなりません。
 もちろん、自らの発想で始めるプログラムやプロジェクトもあるでしょう。その場合は言うまでもなく、発想、構想の段階でプロファイリングからプログラムやプロジェクトの構成(アーキテクチャー)を考える場合も、当然、この「コネクター」としての役割が重要になってきます。
 なお、ここまでの説明では「コネクター」は“組織、技術、そして人間の知恵を結集・統合する者”と説明しています。しかし、それだけではなくプロジェクトに必要なリソースを効率よく、人と技術面のみのだけではなくその他の資材・機材そして資金や情報も適切な方法で使い、プロジェクト目標に見合った活動を行います。
 資金は特に重要であり、人も、資材・機材もお金がなくては何もできません。開発関連のプログラムやプロジェクトはこのお金が最も重要な要素となります。
 そのためにはファイナンスの専門家やその対象とする開発案件の技術専門家や関係する資金や資材機材を供給してくれる組織等を結集・統合して目的達成するといったことが必要になります。

 上記で説明のそれぞれの基本的なリソースマネジメントの種類には以下に示すようなものがあります。
「資金」コスト計画とコントロールに示した管理会計的内容のものと、ファイナンスという財務管理的な内容のものがあります。
「情報」は供給されるリソースと言うより、技術文書(手順書、データ)やプロジェクト活動によって作成される書類などを言います。
もちろん、外部からの情報、知恵そしてアドバイスなどもここの分類に入ります。
「技術」もプロジェクトに必要なリソースであり、この場合、人の知識、研究所の保有技術、他からの導入技術、そして会社としての専門技術等などがある。
「人および物」はプロジェクト実行において最も重要なリソースである。これらに関する計画は、コストおよびスケジュール計画の中で人および物のリソース配分やそのモービライゼーション計画と共に考慮されなければならなりません。人および物のリソースコントロールはスケジュールおよびコストコントロールの機能と同時平行的に実行されます。

 なお、リソースマネジメントの対象としては人(マンパワー)および物(資材、機材、ツール)が重要であるので、本エッセーではこれらを中心に説明します。
 なお、マンパワーおよび資材にかかわるマネージメント上の基本的な考え方はあまり変わりません。以下にその代表的なプロジェクトマネージャに求められる基本的姿勢を示します。
直接、コストマネジメントに影響することからプロジェクト実施スケジュールに従って、必要な時に、必要な人、物が必要業務に効率良く配置・供給されるように心がける。
プロジェクトに適合した人材および物を効果的に配分し、無駄なコスト消費を押さえ、人件・物件費の増大を防止し、プロジェクト原価を極力引き下げるようにする。
コストコントローラまたはプロジェクトマネージャは人件や物件費の消費動向を常に把握し,適切な管理を行うことを目的に、日々の作業と稼働時間の動向をチェックする。そして不必要な人の稼動や資機器材があれば見なおしを行い、場合によっては計画の変更を行う。
プロジェクトの進行に従って各種の条件が変化し、必ずしも計画どおりに進行するとは限らないので、常に現状を把握して、タイミング良く状況に応じた処置が出来るように心がける。

<マンパワーマネジメント>
1) 計画
 プロジェクト遂行で使用されるマンパワーリソースの定量的な管理をするための計画です。
 プロジェクト遂行に必要な作業項目を設定し、スケジュール計画との対比で作業手順を明確にし、作業量を定量的にとらえ、その積算等を行い、マンパワーの配員計画を作ることであります。
 その計画書のステップを図25-1に示します。

図25-1 マンパワーの計画手順
図25-1 マンパワーの計画手順

 なを、マンパワーの配置はプロジェクトの種類、内容、規模などにより大きく変化します。また、プロジェクト組織もそこに組み入れられる人材はプロジェクトの特性をよく検討した上で設定することが必要です。
 よって、マンパワー計画も上記の手順以外に示したことも含めて行うことも重要なことです。
2) コントロール
 マンパワー計画を基に、消費人件費(または消費稼動数)をプロジェクトの進捗と関連して管理を行うことをマンパワーコントロールと称します。
 この機能は消費人件費と言う観点から見ればコストコントロールの一部として見れば良いが、もし消費稼動と言う観点からみれば、マンパワーコントロールとして見ていくことになります。
 一方、マンパワーには大きくプロフェッショナルマンパワーと単純作業者(Skilled)マンパワーとあるが、前者は多種の専門的知識を持つ、質の高いリソースを意味し、後者はプログラマーや建設や据付工事においての作業員リソースとに分けられます。
 ソフト開発や設備建設においては後者に属するマンパワーがかなり多くの比重を占めるのでこのマンパワーコントロールは建機またはツールの動員管理と共に重要なものとなります。

 しかし、プロフェッショナルマンパワーはプロジェクトの遂行においてはその成否に大きく影響するので重要であり、この人材の適切な投入の可否はプロジェクトの内容を熟知した上で質的配慮も考えた適切なリソースの投入が必要となります。

 以下にプロフェッショナルマンパワーの管理上のポイントを示します。
自社保有のマンパワーには限りがあるので、外部リソースも考えた計画が必要
プロジェクト当初で早期のプロジェクトマネージャの任命、そして組織編成とスケジュールに従った配員計画。
企業内の競合する複数プロジェクト間のリソースの効率配分
配員後の業務実績を見ての能力効果評価の実施とタイミングの良い適切な再配置

<資材管理>
 機器材または各種ツールが据付け現場までスケジュール通り、必要数量のものが運搬および保管(在庫管理)などの作業を通して過不足なく送り届けられ、保管してあるかを監視することが資材管理です。
 作業現場ではこの資材管理は重要な作業となる。よってプロジェクトの規模にもよるが、資材管理担当を置き、下記に係る業務を専任させることもあります。


1) 資材計画

 資機材のコストはプロジェクト全体での大きな比重を占めるものであり、そのためには資機材をタイミング良く必要な場所に間違い無く供給する必要がある。このことからも分るようにこの資機材のマネージメントはコスト、スケジュールマネージメントそして品質マネージメントと親子関係にあります。
 よってこの計画はコスト、スケジュールそして品質の計画の時に同一のマネージメント方針に従いそれぞれの中で計画されるものです。
 図25-2に資材管理の計画手順について示すが、基本的にはマンパワーマネージメントの手順と大きく変わりません。

図25-2 資材管理の計画手順
図25-2 資材管理の計画手順

2) 資機材コントロール
 本件もスケジュール、コストコントロールと同様に品質コントロールの一環としてコントロールされるのでここでは詳述しません。
 しかし、資材、機器材の供給はプロジェクト現場では非常に重要な機能であり、この機能の役割は資機材が予定通りに調達され、現場に搬入後、倉庫にて正常に管理・保管され、搬入した時と同じ状態でタイミング良く据付・建設に供与する事です。
 そして、このプロセスを品質、コストそしてスケジュール面からコントロールする事が資機材のコントロールと言えます。
 なお、資機材コントロールは購買、輸送、保管、検査等の調達にからむ機能も多い事から、調達要求書に資機材コントロールの思想を含め、コントロール方法および作業についての指示事項を記述しておく必要があります。

 来月号からは「ゼネラルなプロ」としてグローバルに活躍できる、海外でのプロジェクトに必要な考え方やその知識についての話をします。

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