PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (23)

向後 忠明 [プロフィール] :9月号

”先月号“ゼネラルなプロ(22)”ではスケジュールコントロールについての話をしてきました。

 今月号での話はコストコントロールですが、その手法はスケジュールコントロールとそれほど大きな差異はありません。
 しかし、コストコントロールといってもプロジェクトマネジメント総合管理という観点からはスケジュールとの関係を切るわけにもいきません。スケジュールに密接に連携し、それに沿ったコストコントロールが必要となります。
 すなわち、スケジュールの部分でよく出てきた言葉ですが、仕事の活動単位(アクティビティー)を対象に、この活動単位ごとにコストの見積もりを行い、スケジュールに従って、その時間軸で必要な活動単位のコストを集約していきます。この作業はかなり難題ですが、そのため、このコストコントロールの役に就く人は「コストエンジニアー」と称される人で、技術的な知見を持ったコスト積算技術者です。
 この種の人材は一般の会社ではほとんど見受けたことはありませんが、コスト積算のできる人は結構見受けることができます。
 “それではどうしたらよいか?”
 ここで「ゼネラルなプロ」の出番となるのです。
 何度も説明しましたが、プロジェクト全体を知り、技術面での知見もあり、かつスケジュール統制も行っている人材が「ゼネラルなプロ」です。この人材がコスト積算担当との共同作業で「コストエンジニアー」の役割を果たせることになるのです。
 著者もエンジニアリング会社から情報通信系の会社に移籍した時は上記で述べるコストエンジニアーがいないため「ゼネラルなプロ」的な行動でその難局を乗り越えることができました。
 読者諸氏もPMBOKやP2Mでアーンドバリューマネジメント(EVM)などという用語を見たり聞いたりしたことがあると思います。
 その内容を簡単に以下に説明しますと:
「EVM とは、スコープ、コスト、スケジュールの進捗を同一の測定基準で総合的にとらえてプロジェクトの進捗を管理する標準的な手法であり、進捗状況を金銭的価値に置き換えて、数量的な進捗管理を実施する方法です。EVM の実施には WBS をベースに必要な工数を算出し正確な原価を測定して、ここからコストで表現した計画を作成し、マイルストン毎の達成予定額を設定して、実行予算と達成額との比較で、進捗状況を判断します。
そのためには、EVM を実施するためには、まず厳密な WBS の作成と見積もりが必要となります。」
 一見難しく書いていますが、要するにコストとスケジュールを合体してプロジェクトの進捗を見ることがEVAです。すなわち、このコストコントロールはプロジェクトに求められるスケジュール、スコープそして品質とも密接な関係を持っているので、プロジェクトのあらゆる機能のすべてをここに集約する必要があるのです。

 <コストコントロール>
 コストコントロールはコスト、スコープ、品質との競合的なものであり、常に実働部隊の要求(よりよい品質とより安い品物、そして多くの期待)とは相反するものとなります。
 そのためコストおよび品質との間に適切なバランスをとりながら管理を進めていくことが重要となります。
 コストコントロールとはスケジュールに沿って与えられた予算(実行予算)に従って実働部隊からの消費費用報告(情報)を正確に把握し、現在の状況と将来の予測を分析し、WBSにて設定のワークパッケージごとの順番に含まれる他のリソース(スケジュールおよび品質)との関連をみながら予算を管理していくことをいいます。
 コストコントロールはその予算が与えられた尺度のスケジュールおよび品質で製品ができ、そこにかかったコストが予算内におさまっているかを監視し、もし予算オーバーなどの問題があればそれらの調整や是正等の手を打つ行為を称します。

1) コストコントロール方法
 コストコントロールの方法には下記に示す2種類が有ります。
すなわち、
予算表に示すワークパッケージごとの消費コストを月単位の消費コストとその月までの総消費コストを比例計算し、その算出した結果でコントロールするコストテーブル方式
図23-1に示すプログレスメジャーメント方式
 本件もスケジュールコントロールの項で示したように、①も②も使用目的は①が個々の作業単位での消費コストを知る方法で、②は月単位の総計でコントロールする単位のものであり、双方の方法を使用してコストコントロールすることはスケジュールコントロールの場合と同様です。

① テーブルによる方式
①テーブルによる方式

注)
契約の変更または請負業者側よりの追加請求により顧客より追加金額など得られた場合にここに記述する。
上記の表にすでに請求書の出ているもので上記のテーブルに記述されない未決裁のものがあれば予定支出の欄を設けておく。

② プログレスメジャーメントによる方式
 本方式はスケジュールコントロールの項で説明した内容と全く同じです。
 但し、縦軸が消費コストの%となっているので、例えば、図23-1に示す例を見ればわかりますが、予算のカーブより消費カーブが上になった場合は予算より消費が多いことを意味しています。よってスケジュールのプログレスカーブとはこの部分が異なってくるので注意を要します。
 このことからスケジュールの進捗が予定より早く進めば予算も多く消費することになることが分かります。よって予算消費カーブは予定より多いというだけで一喜一憂することのないようコストコントローラーはスケジュールコントローラーとも密に接触し間違った判断をしないように心掛ける必要があります。
図23-1 プログレスカーブ(コスト)

 以上に示すように、計画段階で作成された実行予算、予算に従ってのコスト消費カーブおよびテーブル、そしてコントロール方針(方法)をベースにコントロール作業に入ることになるが、その主な作業として以下のことがコストコントローラーによってなされます。

 但し、このコストコントロールはコントロール担当のものだけで行うものでなく、プロジェクトに関係するすべての人が“コスト意識”をもって上記に示す作業に参加することも、プロジェクトに従事するすべての担当者の仕事の一部となっているということを忘れてはなりません。
 以上、原価低減は“チリも積もれば山となる”の諺のごとく非常に大事なもので、プロジェクト、強いては企業としての利益の向上につながる。このことが“コスト意識”の啓蒙が促されている理由です。

2) 調整・是正
 プロジェクトも進捗に従って、仕様の変更、追加などが出てくるが、当初計画したものをその都度変更していると、何をコントロールしているか分からなくなる場合があります。
 基本的には、大きな変更でない限りはスケジュールコントロールと同じように当初の計画は極力守り続けることが必要です。
 変更部分については、当然顧客に対し追加コスト要求を出して、その発生毎に経歴(課題・変更管理表)を正確にとっておき、当初計画の変更要求を行う時に、問題なく対応出来るように各項目やレベル毎にまとめておく必要があります。

3) コストコントロール思想
 コストコントロールも不断の努力とそれなりのテクニックも必要です。特にコストプラスフィーや実費清算方式の契約では顧客との一体的なコストコントロールとなり、顧客の為の管理指向となり、正確なコストデータの管理,キャッシュの監視と予測が求められる。このため、一括方式のプロジェクトよりコストロールに要する負荷が増大します。しかし、コストコントロールのための考え方はどちらも同じであり以下の通りです。
スタッフとしてのコストコントローラーは単にコストのみについて監視をするのではなく、技術的部分にも入り込み、コスト面からの疑問を投げかけたり、また同時にスケジュールコントローラーとの密接な関係を持ち、コストコントローラーとしての判断基準を常日頃から広げておくよう心掛ける。
コストコントローラーが配置されると全てのレベルで彼らによってコストコントロールをやってもらえると幻想を抱く担当者がいるが、全ての担当者がそれぞれの担当において、コスト意識をもってその任に当たらなければならない。
コストの徹底はただ単に会議や書類で伝達するだけでなく、その通り実施されているかを常に心がける不断の努力が必要である
タイミングの良い指示が必要である。
そのため待ちの姿勢ではなく、常に前向きに技術およびスケジュールに係る事項にも入り込み、何を何時指示したら効果的であるかを考える必要がある。
現地におけるコントロールは現地技術者よりの報告だけに頼らず、自分の足で現地をみて、自分なりの情報をもっておき、判断基準の正確さを図るよう心掛ける。

 一般的にコストコントローラーは、いわゆる発注業務を行う調達・購買担当者とは任を別とする必要がある。
 双方の役務を兼務とすると、そこに不正が生じることとなり、“泥棒とお巡りさん”とが同居した形となる。よって、コストコントローラーとなる人は一般的にエンジニア的素養を持ちながら同時に原価計算もできるという特別に訓練された人でかつ、厳正で、どちらかというと堅いといわれる人が任につくと良い。
 なお、冒頭でも述べたように、米国などではコストコントローラーになる人材をコストエンジニアと称し、CCE(Certified Cost Engineer)という公的資格があり、かなり厳正で高位な位置づけとされています。

ここまででプロジェクトマネジメントとして重要なスケジュールおよびコストについてのマネジメント&コントロールについて説明してきました。

次回は品質管理およびリソース管理で最も重要なマンパワーについて説明します。
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