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コミュニケーティング

IT-SIGコアメンバ 向後 忠明 [プロフィール] :6月号

 コミュニケーティングとは口頭、文書、または合図等による個人(相手)、集団への伝達、連絡、相互意思疎通の手段であり、業務においては共通基盤の構築および情報収集の手段として利用し、行動することである。
 プロジェクトマネジメントでは社内プロジェクト関係者間、ステークホルダー間、異業種間、異文化間等のインターフェースの問題を防止するために良好な関係を常に維持することが必要である。
 コミュニケーティングはあらゆるプロジェクトでのコミュニケーションおよび利害調整に必要なネゴシエーションにおいてプロジェクトマネジャに最も重要な行動特性の一つである。
 その“コミュニケーションとネゴシエーションとは!”そしてプロジェクトマネジャの持っている一般的な行動として“どのような特性を持っているか”を以下に示す。

1.コミュニケーションとは
 コミュニケーションとはその目的に応じて、最適なコミュニケーションチャネル、技法(ドキュメンテーション、プレゼンテーション)を駆使し、またタイミングを考慮した情報・メッセージの受発信を行い、その理解・浸透の効果を高めることにより適切に意思疎通を行うことである。

1.1 コミュニケーションの種類

<コミュニケーションの形態>
 コミュニケーションには以下の図に示すように3つの形がある。

 なお、コミュニケーションにはプロジェクトやビジネス活動においてのヒューマンスキル(パーソナルスキル)の分野からのビジネスコミュニケーションと人間の心理的な状態や感情、集団の規模や雰囲気に影響し作られるコミュニケーションクライメートに分けられる。
 すなわち、プロジェクトマネジメントにおいて良好な人間関係を保ち、組織を活性化し、プロジェクトの目的を効果的に達成する上で、ビジネスコミュニケーションのような公式なコミュニケーションと非公式なコミュニケーションの総合的な処置がプロジェクトの良好な遂行を可能にする。

<公式なコミュニケーション>
 公式なコミュニケーションには文書や情報そして言語によるコミュニケーションがある。ビジネスやプロジェクトにおいての公式なコミュニケーションは、図面、文書、手紙、ファックス、そして各種確認書(電話確認書、情報源)等に関する文書や情報がその媒体である。ISO9001(3.7項)“文書に関する用語“にも規定している事項が参考になる。
 すなわち、“言った、言わない。見た、見ない等”のトラブルを防止するため、コミュニケーションの文書化が公式なコミュニケーションには必須であるということである。

1 ) 文書、情報によるコミュニケーション
プロジェクトにかかわる各種コミュニケーション媒体で、大きく2つに分けられる。
外部に対する製品情報、引合いに関する図書、契約、仕様書、苦情処理、そして会議や通信手段による仕事上のやり取りを示す記録。
内部コミュニケーションとしてはプロジェクトメンバーや関連組織と会議や通信手段による連絡票または会議等による情報・データのやり取り。
 あるエンジニアリング会社では、プロジェクト関係者の業務、責任および相互の活動関係の取り決め、そしてプロジェクトの情報・データのやり取りを具体的に記述するものを「コーディネーション手順書」と称している。
その具体例を以下の表-1に示す。
表-1 コーディネーション手順書
表-1 コーディネーション手順書

 なお、プロジェクト遂行に当たっては多種多様な文書、情報が関連各所を行き来する。
このための管理手法の基本がWBS(Work Breakdown Structure)でありこれをベースに文書、図書のナンバリングシステムが構築される。

2 )言語によるコミュニケーション
 言語によるコミュニケーションはビジネスやプロジェクトにかかわらず最も基本的なコミュニケーション媒体である。
 これには公式なものと非公式なものがあり、言語によるコミュニケーションを公式にするには会議議事録や電話確認書等がその主なものである。
 文書化されない言語によるコミュニケーションを公式化するのは非常に難しく、たとえ信頼のおける相手、緊密な関係での口約束でもこれは公式にはならない。
 一方、公式、非公式にかかわらず、言語によるコミュニケーションには発信能力、受信能力、理解能力の3つの総合能力が必要となる。
 例えばプロジェクトで必要とされる各種用語や外国語等があるが、これらを使用したコミュニケーションにはこの3つの能力を発揮させるために必要な知識や情報が必要である。
 いずれにしても、言語によるコミュニケーションを公式化するには最終的には文書によるコミュニケーションが必要になる。

<非公式なコミュニケーション>
 非公式なコミュニケーションは前記したように言語によるコミュニケーションとその他に非言語によるコミュニケーションがある。

1 )言語によるコミュニケーション
 雑談やジョーク、そして思いやりや励ましの言葉というものは、コミュニケーションクライメートの醸成には大いに役立つものである。
 要するに組織内の人間関係を助長し、良い雰囲気を醸成し、良好な業務遂行達成にはそれぞれに関係者の行動とともに言語によるコミュニケーションが重要なものとなる。
 コミュニケーションクライメートの醸成は組織が大きくなればなるほど難しくなるがまた重要なものとなる。
 昨今、インターネットの普及でメール等によるコミュニケーションは良く使用される。これらによる非公式コミュニケーションは連絡ツールとしては便利であるが、コミュニケーションクライメートの醸成にはあまり役立たない。

2 )非言語によるコミュニケーション
 非言語コミュニケーションとは相手の言葉だけでなくそこから感じ読み取る印象や間隔であり、文化、行動、態度等に基づくコミュニケーションである。
 これは1976年Hall Edwardによってこれをコンテキスト(Context)と言う概念で発表されている。
 このコンテキストには高コンテキストと低コンテキストがあり、以下のように、相手に対する表現手段が言語に依存する場合と言外の意味や意図を推察し、理解すると言った物に分けられる。
 以下の図-1にその具体的相違を示す。

 コンテキストの高低はその国で培った文化、行動、習慣そして民族性によって大きく異なる。
  高コンテキスト人種:ドイツ、アメリカ、イギリス等
  低コンテキスト人種:日本、タイ、中国、東南アジア
 但しこれも同じ民族同士の中での非言語メッセーによるコミュニケーションであり、日本人と中国人が同じように通じるかと言うとそれは違う。

2.コミュニケーション行動特性
 コミュニケーションにはビジネスコミュニケーションとヒューマンコミュニケーションがある。
 そして公式、非公式にかかわらずまた、言語によるコミュニケーションと非言語によるコミュニケーションがあるが、それぞれにかわされるコミュニケーションが相互に発信、受信、そしてそれらが理解されていることが前提である。
 プロジェクトマネジャとしてはプロジェクトにおいて下記に示すような行動パターンをとっているかどうかでそのコミュニケーション真価が問われる。
公式、非公式にかかわらず関係者に対する積極的で真摯な応答または働きかけで良好なコミュニケーションクライメートを醸成している。
プロジェクト遂行に必要なコミュニケーション手順を持っていて、関係者との良好なコミュニケーションを達成している。
適切なコミュニケーション手段および方法を持ち社内プロジェクト関係者間、ステークホルダー間、異種技術間、異文化間、初体験の人との間で良好な関係を維持している。
場の議論を深めるため、議論の方向性や結論の大筋が見えていても、あえて議論を深め矛盾や不整合が無いかを見極めるような行動をとっている。(簡単に妥協していない)

3.ネゴシエーションとは
 <ネゴシエーションの考え方>
 ネゴシエーションを「ゲーム理論」で言われている、ゲームに参加している人達の利益と損失を合わせると丁度ゼロになると言った「ゼロサムゲーム」であるように物事を治めていくものと思っている人もいる。
 このことはいわゆるWin-Loseの関係で、勝った者は優越感を持ち、負けたものは劣等感や恨みを残すことになり、引き分けても「負けなくて良かった」と言う中途半端な感情が残る。
 ネゴシエーションの理想はやはり「非ゼロサムゲーム」と言った両方が勝つと言うよりも十分お互いハードな交渉を行ったが双方満足と言った感情を持つ「Win-Win」であるべきと考えられる。

  相手


  勝ち 負け

Win-Win
信頼
Win-Lose
強引(対立的交渉)

Lose-Win
妥協
Lose-Lose
不信(敵対的交渉)

 以上がネゴシエーションの考え方ではあるが、一般的には我々は無意識的に相手に勝つと言う「Win-Lose]の交渉になり、その交渉に勝つと仲間から拍手喝さいを受け所属する企業からは「良くやった」とほめられる。
 プロジェクトマネジャの役割としては当然このようなネゴシエーションを求められるが、この場合、顧客または交渉相手との以降のプロジェクト実施において気まずさが残り、実行面での不利な状況を作ることになる。

<ネゴシエーションとコミュニケーション>
 ネゴシエーションに必要な特性としてはコミュニケーションが重要である。
 ネゴシエーションにおいて理路整然と自分の主張だけを相手に説明するだけではなくその場の雰囲気、相手の事情、そして自分の目標を持って相手が納得するまで粘り強く説明することが必要だ。
 すなわち、形式知と暗黙知の双方を駆使したコミュニケーションを行えているかどうかである。
 その他に、ネゴシエーションには必ず最終的な落とし所がある。そのためには目的とする対象のどこで決着をつけるか、またそれがWin-Win となるか、タイミングを見て決定することが必要だ。
 しかし、あせらず、あわてず、あきらめずのいわゆるローカス・オブ・コントロール(コントロールの中心)が自分の中にあり、そして「自分を知り、他人を知り、取り巻く状況を見て目標を持って粘り強く行動する」といったEQ人間である必要がある。

4.ネゴシエーション行動特性
 基本的にはコミュニケーションに手示す行動パターンを含むが、ネゴシエーションにおいて特筆する部分としては以下のようなものがある。
適切なコミュニケーション能力を持ち、相手を納得させるすべを持ち、かつ良好な関係を維持している。
自分を知り、他人も知り、そして取り巻く環境も反映し、粘り強い意志を持って目標に向かって対応している。
ネゴシエーションでの過程ではそれぞれの言い分を吐き出させ、結果として双方が納得したWin-Win なものになる。
適切なネゴシエーションテクニックを持ち、相手に不安・不快を持たせない方法で状況に応じて柔軟に対応している。
以 上

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