今月のひとこと
先号  次号

「王道 vs. 覇道
~王覇のP2Mを往く (その2)~」

オンライン編集長 岩下 幸功 [プロフィール] :6月号

2月号では「日本モデル」を議論する手掛かりとして、「政治における王道と覇道」について述べました。今号では「経営における王道と覇道」について考察してみたいと思います。

1.戦略における王道と覇道
 戦略にも王道と覇道があります。
戦略における王道と覇道 「王道の戦略」とは「正攻法の基本に忠実」に、「揺るぎない道」を求めるものです。そこでの価値判断の尺度となるのは、フェア(公正)か否かの「真偽善悪のモノサシ」が中心となります。そして、成果(プロダクト)を求めるより、正しい過程(プロセス)に重きが置かれます。やるべき正しいことを、基本に忠実に、正しくきちんとやるという意味で、「人事を尽くして天命を待つ!(Do the best, and God will do the best.)」的なプロセス指向です。
従って、成果を得るまでに時間がかかる長期的なアプローチとなります。
一方、「覇道の戦略」とは、「奇策・謀略」を弄しながら「自らが切り開いていく道」です。価値判断の尺度となるのは、メリット(利益)があるかどうかという「損得勝負のモノサシ」が主たる関心事になります。結果が全てであり、利益のためには何でもありの「終わりよければ全てよし!(All's Well That Ends Well)」的なプロダクト指向で、短期的な成果を求めます。
 「王道」が「戦略(目的)指向」であり、「覇道」が「戦術(手段)指向」であるとも云えます。

2.経営における王道と覇道
経営における王道と覇道  「王道の経営」という言い方があります。その場合の「王道」とは、社会的な正義及び貢献を意図した「理念、ビジョン」に基づき、「あるべき姿」としての共通の価値観を共有して、その目的に向かって正面から正々堂々と挑戦することです。多くの場合、安易な競争は回避し、個性を追い求める「Only Oneの成長戦略」を追求することになります。従って、それは将来に向けてのアプローチとなり、新規事業への挑戦が中心となります。イノベーション指向であり、「モノづくり」企業に多くみられる「差別化と価値創造」の姿です。所謂、大義に殉ずる伝統的な「日本的経営」の姿です。
 一方、「覇道の経営」とは、短期的な競争環境での勝利を追い求めます。利益のためには何でもありで、現状の枠組の中での「Number Oneの競争戦略」が中心となります。既存事業の中で標準化やコストダウンを進め、シェア獲得ための拡張戦略が中心となります。

 「王道か覇道かは」はどちらに軸足を置くかのバランスの問題です。その選択が、戦略や風土に大きな影響を与えます。どちらかと言えば「王道の経営」が、win-winによる「分かち合い」で持続可能性を追求するのに対し、「覇道の経営」は、合理性を追求する余り、Zero-sumによる「潰し合い」の世界になりがちです。最近のグローバル競争が、この「覇道色」を強めているところに、日本企業の弱点として露呈されているとみるべきでしょう。
 これからの時代は、国も企業も個人も、グローバルにどれだけ歓迎されるかの戦いです。その場合、「王道と覇道」、どちらがより多くの国・人々に受け入れられるでしょうか? そこを見誤ると、短期的な「覇権」を焦るあまり、長期的な「王道」を見失ってしまうかも知れません。今一度「王道としての日本的経営」を見直し、「王道の戦略」を再構築すべきではないかと考えます。
以上
ページトップに戻る