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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
~イノベーションを起こす力~

井上 多恵子 [プロフィール] :5月号

 異動で人事の仕事をすることになり、4月から東京労働大学に通い始めた。週2-3日あり、7月末まで続く長丁場のセミナーだ。講義を受けるのは、東京大学のキャンパス。前半と後半で試験があり、久しぶりに学生になった気分だ。毎回講義をされる教授が異なるのも、なかなか面白い。
 能力開発管理の講義をされたのは、法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科の教授。心に残る、元気づけられるメッセージがいくつかあった。その中の一つが野村克也監督の「自分の中には自分が知らない自分がいる」を引用して説明された、「常に可能性を信じて行動することが、イノベーションにつながる」というものだ。スランプに陥った時にも、「まだ自分には力がある」と信じて進む、あきらめない選手が活躍するのだ、という。確かに、「もう駄目だ!」と思ったら、新しい変革を起こすことなどはできない。「なんかいけそう!」と思うことがいいらしい。異動でなかなか新しい仕事に慣れない私にとって、この言葉は救いだ。自分が苦手だと思う業務をアサインされても、もしかしたら、やっていく中で、自分の強みにできるかもしれない、そう考えたら少し前向きになれそうだ。自分の限界は、自分で作ってしまっているのかもしれない。
 また、教授によると、「いつもとは違う場所に自分を置いて、違うものを見たり違う人と話をしたりすることが、イノベーションの必要条件」なのだという。ということは、今回の異動は、私にイノベーションを生み出しやすい環境を与えてくれていることになる。確かに、職場を変わることで、同じ社内であっても、環境ががらりと変わる。お昼ごはんを皆で食べるのか、一人で食べるのか、そういう違いから始まって、仕事の進め方も違う。さまざまな刺激を受ける。新しい仕事のやり方を見て、考えることもある。眠っていた脳が動き始めている感じがする。皆さんも、PMAJ協会を通じて、職場以外の人と出会うチャンスがある。PMAJ協会の新しい取り組みとして始まった、PMの経験が豊かな方々と若手の交流も、「違う人と話をする」機会を与えてくれる。
 東京労働大学の別のセミナーで「なるほど!」と思ったのが、有給休暇の取得率を調べる日本と、調べない海外との違いだった。例えばイギリスでは、「有給休暇を習得するのは労働者に与えられた権利」なので、日本のように、学者がその習得率の推移を調べたりすることはないという。休暇に対する発想が根本的に違う。こういう事実を突き付けられることで、頭の中に「なぜ、そうなのか?なぜ、日本では取得が進まないのか?職場に原因があるのか?労働時間の長さに関係するのか?」という疑問がわいてきて、それが新しい発想につながっていく。自分の世界だけにいると、そこでのやり方が全てになる。ちょっと目を外に転じて見ると、違うものが見えてくる。交渉のセミナーをインド人の方々と受けた時も同様なことを思った。もう、妥協してもいいのでは?と思う時でも、彼らはどんどん交渉してくる。 交渉自体を楽しんでいるようにも思う。そういえば、最近職場でインド人の方をずいぶん多く見かけるようになった。彼らは我々日本人を見て、どう思っているのだろうか?彼らは我々のどんな視点を面白いと捉えているのか、ちょっと聞いてみたい気がする。
 商品やサービスを変革しないと企業は生き残っていけないと言われる。人も同様なのだろう。どうやって自らを変革し、イノベーションを起こしていくのか。惰性に流されやすい、楽をしたい意識が強い私にとっては重いテーマだが、考えてみたい。GW中は日常生活と違うところに行く。皆さんの中にも、旅をする方がいるだろう。新しい物を見て、人を見て、刺激を受けることをぜひ、お互いに楽しみましょう!
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