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「あなたの貴重なPM経験は埋もれていませんか?
それを発掘して後進のスキルアップに役立てませんか?」
~【PM事例問題集研究WG】へのお誘い~

PM事例問題集研究WG主査:富士通株式会社 市川 和芳:4月号

1. 自己紹介
 富士通の市川と申します。システムエンジニア(SE)として38年目に入り、昨年PM教育部署に異動したこともあってか自分のプロジェクト推進ノウハウを後進に伝える必要があると思い、どう伝えたらよいか焦っている今日この頃です。
 PMBOKに代表されるような標準化が推進される一方、「システム開発プロジェクトの成功率は31.1%」とか「失敗に学ぶ」などと言われています。自分の担当したプロジェクトも失敗と成功の繰り返しだったことを振り返ると、プロジェクト推進の難しさを今更ながら痛感しています。ある意味では、正解の無い世界を手さぐりでさまよっていたのかも知れません。プロジェクトマネジメント、あるいはプロジェクトマネージャ(PM)の"manage"という言葉・・・単に机上で管理することではなく、「どうにかなし遂げる、やっとのことで○○する」こと・・・が本来の意味と気づいたのも恥ずかしながらだいぶ後になってからのことです。手さぐりのマネジメントから確信のマネジメントができるPMを目指して、その方策を探っています。その一環として「PM事例問題集研究WG」を立ち上げたいと思います。以下にその趣旨と要領をお話します。

2. manageの暗黙知を形式知に!
 プロジェクトの現場ではどんな問題事例が発生しているのか?これを知るだけでもPMにとっては随分参考になりますね。また、先人はその問題をどのように解決してきたのか?その意味するノウハウは何か?多くの場合は暗黙知として後進に伝承されてきたものです。セオリ本が教えてくれない生のノウハウを形式知として効果的に共有すること、これがプロジェクトマネジメントの世界でできないか?
 形式知の表現方法として、まずは「一言で言ったらこんなこと(ショートストーリ)」で、プロジェクトで発生した問題を表現してみます。世の中では失敗事例、教育の場での事例演習などの形で、相当の文章量で表現されるケースとは一線を画するものです。ショートストーリ表現は忙しいPMにとってみれば、直感的であり多くの問題事例を摂取できるという利点があります。プロジェクトの隙間で発生するような些細な事例から経営方針に関わる大きな事例まで、PMの琴線に触れるようなテーマをとり上げます。
 次にその問題を解決した方法を同様なショートストーリで表現します。これが伝承すべきPMノウハウです。

3. 何を研究するのか?
 問題事例と解決方法を単に一覧にして公開しても、訴求力が弱いですね、きっと。そこで発想した一つの方法が「問題集」です。問題事例と解決方法の間に選択肢(4択)を設定し、"考える"訓練を行えるようにします。考えることでその問題に対する印象は長く残り、更に"気付き"を得る、という効果が期待できます。4択は答えがすぐに分かってしまうようでは興味が半減します。つまり問題の"疑似体験"をいかに効果的にできるか?ということです。本当は今流行の感覚で"PMシミュレーション/RPG"なども研究してみたい気がしますが、お金がかからない方法でまずは始めたいと思います。

4. 具体的な手順
 以下に研究活動項目を列挙してみます。
業種拘らずプロジェクトの現場で発生した問題・解決方法を収集する。
収集した問題・解決方法を汎化し、ショートストーリで表現する。
問題をPMBOKの知識エリア、重要度、緊急度で分類する。
問題に対して4択形式の選択肢を考案する。
問題集としての公開方法を検討し、トライアルを実施する。
文末に問題集の例を示します。大体こんな感じのものを想定しています。

5. WG募集要領
(1) 対象者:  業種問わず、自己のPM経験からのノウハウを広く後進に伝承したい、と熱意のある方であればどなたでも結構です。解決方法については、あの時こういう方法をとったが、別の方法がよかった・・・という思いを再整理していただくことでも結構です。
(2) 募集期間: 本ジャーナル発行時点以降随時。
(3) 活動期間: 2012年6月から2年間。
1年目 事例の収集と問題集化、および公開方法の検討
2年目 問題集の充実と公開トライアル、総合評価と継続検討
(4) 活動方法: 通常はメーリングリストやグループウェアを活用します。
月に一回程度は会合形式で実施します。
(5) 活動期間: 富士通(株)PM教育部 市川 和芳 : メールアドレスは  こちら

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<問題集の例>
【問題文】
 2年間に渡るシステム開発のプロジェクトがスタートしたが、設計工程の途中で問題が持ち上がった。Aチームのリーダー(キーマン)に協調性がなく、また、チームメンバーの意見や話にあまり耳を傾けない。そのため、チームメンバーはもとより、他チームのメンバーも萎縮しており、本音の話し合いができないなど非常に風通しが悪い状況であることが分かった。
 PMは何度か問題を指摘し直接指導したが、頑固・独断的で一向に改善の兆しは見えず、途方にくれてしまった。但し、このリーダーは本プロジェクトにおいて最も業務知識を有しており、お客様との仕様調整の場面などで非常に貴重な存在である。このような状況下において、PMはどのような対策をとるべきか、最も推奨する案を1つ選択しなさい。
【選択肢】
1: 役割分担を見直し、業務横断的なレビューアに専念(特化)させる。
2: 業務知識を最も保有しており、彼無しではプロジェクトは成功しないため、現状体制を可能な限り維持する。
3: 上司(経営層)へエスカレーションし、注意・指導してもらう。それでも改善されない場合は、プロジェクトから外すよう調整する。
4: 即刻、業務リーダーをプロジェクトから外し、サブリーダーをリーダーへ昇格させ権限を与える。

【解説文】
推奨案の解説を行います。すなわちこの部分がノウハウになります。
□WG解答案 = 3
 プロジェクトを円滑に推進するためには、良好なコミュニケーションや協調性が重要な要素となります。本ケースの場合、業務リーダーに協調性がないため、十分にコミュニケーションが図れず、メンバーのモチベーション低下による進捗遅延や品質悪化を招く恐れがあります。したがって、PMは早急にこの問題を解決する必要があります。
 今回のケースは事態がかなり深刻と判断し、先ずは上司(経営層)にエスカレーションし、注意・指導してもらうよう支援を仰ぎます。それでも改善されない場合は、プロジェクト全体に与える影響を鑑み、プロジェクトから外れてもらうよう調整します。後任も合わせて相談します。但し、どうしてもそのリーダーのスキルが必要と判断し本人も同意した場合は、役割分担を見直し、レビューアに専任(特化)するなどの対策も有効です。

以上

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