理事長コーナー
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国際協力とP2M

PMAJ理事長 光藤 昭男 [プロフィール] :3月号

 日本の高度経済成長期の基幹インフラでありシンボルであった東海道新幹線は、東京オリンピック開催の9日前の1964年10月1日に開業した。それに先立つ2年前には首都高速道路が京橋から浜崎橋まで開通した。日本初の本格的高速道路は、名神高速が1963年、また、1968年には世銀の融資で東名高速道路の東京と厚木間などで部分開業した。50年代後半からオイルショックまでの約20年間の日本の経済成長率は平均約9%であった。

 言うまでもなく中国は、2008年に改革開放政策実施30周年を迎えたが、その間の経済成長率は年平均10%であり、90年代初期には電力供給量不足で、しばしば不測の停電が起きていたことがうその様である。北京オリンピック、上海万博の開催と前後して、高速道路も高速鉄道網も日本の総延長を上回り、高度経済成長に大いに貢献している。

 アフリカ・アジアの発展途上国も、日本や中国を始めとする東アジア諸国の急成長とそれに伴う豊かな消費生活から学び、インフラ整備にかける意欲も急激に高まっている。この動きに呼応して、日本政府主導のパッケージ型インフラ輸出への期待も高まっている。その動きを確実に始動させ加速させるためには、各々の国々で、その動きを下支えする専門知識と経験のある人材が質量ともに整うことが喫緊の課題である。

 その役割の一旦の担っているのが財団法人海外技術者研修協会(AOTS)であるが、PMAJは2010年より3年続けて、P2Mの基本を教える研修コースに協力している。今年も2月前半の2週間、南アジアなど7か国18名、アフリカ3か国14名、ペルーから1名の合計33名を受け入れ「インフラ分野のためのP2M研修コース(PPMI)」を都内にて開催、無事終了した。

 開講式と閉講式にてPMAJを代表して挨拶をさせて戴いた。開講式では、自国ではエリートである受講者の方々は、国を支える意志と意欲に満ちていた。小雪のちらつくこの冬一番の寒い日で、長旅の疲れがあるにも関わらず、知的な顔に目が輝いていたことが大変印象的であった。講義、クラス討議、ワークショップ、スカイツリーと日揮殿みなとみらい本社の見学を経て、笑顔の絶えない閉講式では33名がいつまでもお互い別れを惜しみ写真を取合続けている姿を見て、研修に満足していると感じた。更に、新しく知り合った仲間同士がやがてアジアでのビジネスのパートナーとなるのではないかという予感もした。

 中でも一番気になっていたのは、P2Mへの印象や評価であったが、手前味噌でなく、控え目に見ても非常に高く評価して頂いていると感じた。短期間の中にエッセンスを詰め込んだ講義をされた講師陣にも頭が下がるが、インフラプロジェクト・プログラムへの戦略的視点の重要性や事業価値の創造という概念は、彼らにとって新たなインパクトだったのである。ナマの日本社会に接したこと、クラス討議を通して知った11か国の異文化や発注形態・契約などのプロジェクト実施面での制度や事情の違いを知ることも好印象の理由でもあった。

 一方で、内容に比べて2週間の研修は短すぎる、プログラムマネジメントの日本国内の様々な分野での実例の紹介、PPPの講義の深掘り版、プログラムマネジメントの具体的な推進方法の伝授など、課題を残す要望事項も多かったと聞く。

 1月の本稿でPMAJの中期ビジョンの概要を記した。P2M標準ガイドブック改訂に向けた検討小委員会を既にスタートしているが、AOTS殿研修結果からのフィードバック事項は是非この中で検討したい。更に、国際協力部会の活動も新年度からは再開を計画しているが、海外のPM協会との関係維持だけでなく今回の様な国際協力事業も進めて行く計画である。これらの観点から、会員の皆様のご指導、ご意見、ご協力を期待しています。

以 上
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