図書紹介
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「あんぽん」  ――孫正義伝――
(佐野眞一著、ポプラ社、2012年01月15日発行、第1刷、399ページ、1,600円+税)

デニマルさん:3月号

この本のアマゾンでの人気は総合で30位、ノンフィクションで4位と売れ筋の部類に入っている(2月時点)。その注目度は、題名の「あんぽん」と孫正義伝とある副題であろうか。題名については後述するが、孫氏と言えば、ソフトバンクの社長で日本一の富豪(総資産、約6,800億円)で、プロ野球ソフトバンクホークスの会長等で知られている。一方、携帯電話やスマートフォン分野では、一早くアップル社のiPhoneを発売して市場を拡大している。そのTVコマーシャルで白犬のお父さんが出る「白戸家」シリーズが話題となっている。これは2007年から始まった「ホワイト家族24」サービスで、家族同士なら国内通話24時間無料の宣伝用キャッチコピーである。ホワイト家族だから「白戸家」なのだそうだ。そのコマーシャル内容は、和やかな家族の会話の中でユーモラスに犬が喋るのが人気を呼んでいる。孫家の家系とは、全く違う状況であったと著者は書いている。孫氏は在日韓国人三世として生まれ、その生い立ちと現在の栄光の足跡を伝記としてこの本に纏めてある。

「あんぽん」とは   ―― 孫正義のルーツ ――
あんぽんとは、孫氏の以前の日本姓「安本」の音読みから来ている。祖先は西暦1000年頃に中国から韓国に渡った孫凝(そんうん)であると家系図で紹介されている。その祖父母が日本に炭鉱夫として出稼ぎにやって来たのは、大正末期の1920年代である。孫氏の父親は、佐賀県鳥栖で養豚と密造酒販売で生計を支え、戦後パチンコと金貸し業で財を成している。孫氏が高校時代にアメリカ留学して以降の活躍は、種々メディアで紹介されている。

「あんぽん」から孫  ―― 日本帰化への決意 ――
孫氏が帰国後、現在のソフトバンク前身の「日本ソフトバンク」を設立したのが、1981年である。会社は出版業から通信事業へと順調に発展していく過程で、日本に帰化した。その理由は、「国籍や人種を超えて、人間はみんな一緒だという証明が出来る事業家になる」ためだろうか。その真相は明らかにされていないが、孫という韓国姓を日本人として名のっている孫氏の強い拘りがある。日本で韓国姓を取得した10年間の経緯も書かれてある。

ソフトバンクのビジョン  ―― ITビジネスから自然エネルギー ――
孫氏は、昨年の東日本大震災に対して個人で100億円の義援金を出している。更に、今後の日本のエネルギー政策は、原子力ではなく自然エネルギーの再生(太陽光発電)であると明言し、その実現に10億円の私財を投じて財団まで設立した。こうした活動に一部の人から人種差別的なバッシングがあるとこの本で紹介している。いずれにせよ、日本のオピニオンリーダーである孫氏のこれからの活動に注目せざるを得ないと締めくくっている。

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