図書紹介
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「坂の上の坂」  ――55歳までにやっておきたい55のこと――
(藤原和博著、ポプラ社、2011年11月25日発行、第1刷、270ページ、1,100円+税)

デニマルさん:2月号

今回紹介の本では、本の題名と著者に注目したい。この題名は本の中でも書いてあるが、司馬遼太郎著の「坂の上の雲」からきている。この本を読まれた方は多いと思うが、シリーズ累計で1700万部も売れている。NHKが、同じ題名の大河ドラマを一昨年から2年越しで放映していた。日露戦争(1904年(明治37年)~1905年(明治38年))を通じて、当時の日本人の新しい時代を求めるロマンを描いている。今回の本は、その時代と現在を対比してその相違点を書いている。もう一つ著者については、民間人から初めて公立中学校校長に登用されたことが挙げられる。しかし、学校改革を教育者でない著者が、大胆な変革を種々試み実施した。その社会的影響は現在も残っている。今回は、教育の話ではなく、「坂の上の坂」である。人生には、三つの坂があるといわれている。一つは、「上り坂」であり、もう一つは、「下り坂」である。三番目の坂は、「まさか」の坂である。著者は、この「まさか」に備えて、今の時代を見極めて生きていく必要があると色々書いている。

坂の上の坂?(その1)   ―― 坂の上の「雲」の時代 ――
「坂の上の雲」の時代は、明治末期である。日清戦争(1894年(明治27年)~1895年(明治28年))に勝ち、日露戦争にも勝って日本の国威は上昇気流にあった。そんな中で、国民は国家の将来と自分の耀かしい未来に夢を持っていた。それが坂の上の「雲」である。当時の日本人の平均寿命は、まさに人生50年である。自分の人生を生き抜いて坂の上に到達する頃、終焉を迎えんとする年齢である。それから先を考える必要のない時代であった。

坂の上の坂?(その2)  ―― 坂の上の「坂」の時代 ――
それに対して、現在の日本人の平均寿命は男性79歳、女性86歳で世界一の長寿国である。先の明治時代と比べて、1.5倍以上も伸びている。サラリーマンの定年が60歳としても、定年後の人生が、20年近くある。従って、人生の坂を登りきった先に更なる坂があるというのが、坂の上の「坂」である。その坂が「上り坂」なのか「下り坂」なのかは、その人の生き方や考え方にある。著者は時代を見据えて、如何に生きるかの問題提起をしている。

坂の上の坂?(その3)  ―― 坂の上の「坂」の対処 ――
著者は「坂の上の坂」をむかえるにあたって、55歳までにやるべき55項目の対処策があると書いている。とても全てを紹介出来ないが、最後の章の「本当に必要な備えをする」と「おわりに」の中に著者のエッセンスが集約されている。昨年の東日本大震災で経験した多くのことから、これからの日本と自分を見直す必要性を指摘している。「坂の上の坂」には、「まさか」の備えと、次の時代を支える人材育成の「教育」がキーであると説いている。

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