「日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人」
(三輪康子著、ダイヤモンド社、2011年7月14日発行、第1刷、232ページ、1,429円+税)
デニマルさん:1月号
このコーナーでは、毎月話題になっている本を中心に紹介している。その関係で、芥川賞や直木賞から絵本大賞等々に至る入選作品や、毎週のベストセラー情報等をこまめに調べている。その中に、アマゾンの年末Best of the Yearのランク発表があった。2011年の文芸・ビジネス書部門では、第一位「くじけないで」(2010年9月号)、第二位「KAGEROU」(2011年2月号)、他に「もしドラ」(2010年10月号)や「下町ロケット」(2011年10月号)が上位にランクされていた。カッコの数値は、ここで取り上げた年月である。アマゾンの場合は売り上げ部数等をポイント化しているので、当然こちらの判断基準とは異なる。ここで分かることは、いい本は話題となって売れている。これかもベストセラー本に偏らずに、話題になるであろう良書を紹介していきたい。さて今回紹介の本は、売れていないが良書の範疇に入るものである。こんなことが現実にあるのかと思うような、感動の実話である。
日本一のクレーマー地帯? ―― そこは新宿歌舞伎町 ――
クレーマーとは、クレーム(原義は要求、苦情、異議)からきいているが、商品の欠陥、客への対応の仕方等に要求や苦情を言う人のことである。この本では、苦情から脅迫や嫌がらせ等の行為を専門にやっている人をいう。場所は新宿歌舞伎町である。日本有数の歓楽街で、飲食店や遊戯施設や映画館、ホテル等があり「眠らない街」ともいわれている。その町でホテル支配人をしている人の話である。場所柄、多種多様なお客に対応している。
クレーマーは支配人を狙う? ―― 特殊地帯の懲りない面々 ――
ホテルの周りには、バー、居酒屋、風俗店のキャバクラ、ホストクラブや、ラブホテル、パチンコ店等が軒を並べている。風俗店は、3,000軒を超えている。最近は、東南アジアからの出稼ぎや、昼夜を問わず外人観光ツアーのお客も多いという。その中に風俗店等の料金徴収係り(用心棒?)の職業の人、俗に暴力団の構成員もいる。推定1,000人とも言われるその類の人もホテルのお客であり、クレーマーとして著者を窮地に追い込んでいる。
日本一の支配人? ―― 歌舞伎町のジャンヌ・ダルク ――
著者は、有名ホテルグループの現役支配人であるが、ホテル業界の経験が全くないという。所が、配属された勤務地が先の特殊地帯である。このホテルには、ビジネスマンや旅行者の他に、ヤクザ、売春婦、薬物密売者等の多くのお客がいる。一般のお客のために「スタッフが安全に働ける職場」を目指し、ヤクザを泊めないホテルを実現させた。そのキーは「クレーマーには優しさ」である。何故ジャンヌ・ダルクかは、読んでのお楽しみである。
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