「日野原重明 100歳」
(日野原重明、NHK資材班著、NHK出版社、2011年9月30日発行、第 1刷、205ページ、1,200円+税)
デニマルさん:12月号
1911年(明治44年)10月4日は、この本の著者である日野原重明先生の誕生日である。NHKテレビは、その百年後の今年10月8日にスペシャル番組「日野原重明 100歳 いのちのメッセージ」を放映した。この放映に先立って、この本が出版された。日野原先生といえば、100歳の今でも現役で聖路加病院の理事長をされ、現役の医師としてエネルギッシュに活躍されている。この本では日野原先生の超人的な活動から、どうすればこのような生き方が出来るのか、不安や葛藤は無いのか等を追求している。中でも奥様・静子さんの認知症を看護しながら、自らの老いと死を見つめている。一方で「100歳を機に、これからが人生の本番だとスタートラインに立つ覚悟で、更に10年先のゴールに向かって進みたい」と未来の決意も語っている。この活力はどこからくるのであろうか。文中「人は始めることを忘れなければ、いつまでも若い」といって実践している。学ぶべき事が多い本である。
百歳の哲学 ―― 今を生きるミッション ――
著者は、医師であるが故に「医の技は、奉仕でありミッションである」といい、患者さんの命を救うために夜中でも電話も受けるのだと断言する。この気持ちがあるので、精神的な負担にはならないという。100歳の哲学は、普通の人なら負担になる場合でも苦にならず超越する。更に、東日本大震災の被災地を慰問されて後、日本の復興を見届ける10年を生きたい。これを人生の最後の仕上げにすることが、今を生きるミッションだと書いている。
百歳の原点 ―― 生い立ちと人生の転機 ――
著者の哲学は、全て患者の為にあり、日本の復興の為にあって、決して自分自身の為ではない。この考えは、著者の父親が牧師であった関係から、他人に対する思い遣りや奉仕の精神が育まれた家庭環境にある。それと「よど号」ハイジャック事件(1970年、日野原先生58歳)に遭遇して死に直面したことで、生きている感謝の気持ちから「これからの人生は与えられた命なので、新たな人生を精一杯生きる幕開けとなった」と決意を語っている。
百歳の未来 ―― 妻、静子さんと共に ――
本書では、百歳の本音を書いている。著者が長生きすることで、高齢者の「新老人の会」のヘルス・リサーチ・ボランティアとして医学的データの提供にもなっている。そして日々の健康維持の為に筋トレもしているが、それをやり過ぎて「白寿こえ 筋トレ始めて 肉離れ」とユーモアも忘れない。奥様は、10年前から認知力が低下し車椅子とベッドでの生活である。傍で看護をしながら、迫りくる「音なき音」を身近に感じていると書いている。
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