「神様の女房」
(髙橋誠之助著、ダイヤモンド社、2011年9月8日発行、第 1刷、291ページ、1,300円)
デニマルさん:11月号
この本が発売されたのは今年9月である。その翌月の1日には、NHKはスペシャルドラマ(3回連続)として放映したくらいに話題性が高い本である。その話題性とは、主人公のご主人である神様が偉大であった以上に、裏方の奥様(ここでは女房と書いている)である松下むめのさん(1896-1993)が偉大であったことを物語っている。神様とは、経営の神様とも言われ日本国内だけなく世界的にも著名な松下幸之助氏である。この本では、神様との結婚から松下電気器具製作所(現パナソニック)の経理事務や住みこみ従業員の世話を引き受けて、陰で事業と神様を支えた裏話が書かれてある。特に、社員(ここでは従業員)やその奥方に対する礼儀作法や躾等から人間形成の原点の教育をしている。この気配りは、社員だけなく顧客や取引先までに及び、「事業は人なり」の教訓を陰で実践された。この本の著者は、20年以上も松下家の執事として、神様と主人公の公私に亘る生活を隈なく見ている。余り世間では知られていない女房の偉大さと裏方の人なりや生き方を纏めている。
知らざれし神様の女房 ―― もう一人の創業者 ――
現在のパナソニック(旧松下電器産業)は、松下幸之助氏とその同族が創業し、世界的な総合電器メーカーの会社としてよく知られている。その創業時に奥様であり、この本の主人公が経営陣に加わって、経理の実務を担当していたことは余り知られていない。更に、神様が市議会議員に立候補して応援演説をしたことや、終戦後の財閥解体の影響で、生活費に困り自分の着物等を農家や質屋に持っていきお金を工面した涙ぐましい話も出てくる。
創業時の神様の女房 ―― アタチン製造の話 ――
戦前、松下電器は家庭の電燈に挿入して使える二股電球ソケット(一方を電燈、もう一方を電源(電熱器やラジオ等)に使える器具)を商品化した。それがヒット商品となり、この製造によって松下電器の今日があると言われている。これはアタッチメントプラグ、略してアタチンと呼び、家族全員で原料の調達、製造、組み立て、出荷、販売をしていた。この商品製造に至る苦労話からヒット商品となり、会社が軌道にのる過程も書かれてある。
ファーストレディの神様の女房 ―― 還暦過ぎての海外旅行 ――
戦後の日本経済の成長と共にパナソニックは世界的な企業に発展していく。同時に、松下氏は経営の神様と賞賛され、会社だけでなく経済界の舵取り役を務めながら、後継者育成にも尽力された。PHP研究所や松下政経塾の活動は、現在でも注目されている。神様が第一線を退かれても、多くの要人に招かれ海外にも行っている。その時、主人公は還暦過ぎの海外渡航をファーストレディ、そして女房としても神様を支えるいい話を多く残している。
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