PMプロの知恵コーナー
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ダブリンの風(102) 「計画の徹底」

高根 宏士:2月号

 プロジェクト作業は大きく分類すると計画と実行になる。計画はプロジェクトをどのように進めるかを決めることであり、実行は計画に基づいてプロジェクトを推進することである。
 計画作業のアウトプットはプロジェクト計画書である。最近、あるプロジェクトのプロジェクト計画書のレビュー依頼があった。そこで計画書を読んだ後、プロジェクトマネジャー(PM)とプロジェクト主要メンバーからヒアリングをした。計画書は一言で評価すると、「そつがない」ということにつきる。書くべきといわれている内容はほとんど盛られている。しかし本当にこの通りプロジェクトを推進していけるだろうかという思いが残った。ヒアリングでその視点から質問をしたところ、PMの対応はおぼつかなかった。多少抽象的な表現のところについて具体的な説明を求めると、それについては
 「このようなことです」
 ではなく、
 「このようなことだと思います」
 であった。自分で書いていて「・・・と思います」はないでしょうと言ったら、それに対して発言はなかった。そこで自分がはっきりわかっていない言葉を何故書いたのか確認したら、計画書の書き方というマニュアルらしきものがあり、その中にいろいろな例が挙げてあり、それを参考に書いたとのことであった。
 最近は大方のことについてはマニュアルやサンプルがあり、それを参考に作っていくと、形は作れるようになっている。そして時間的余裕がないために、自分で考える前にそれに頼って、速成させようとしている。プロジェクトの成果物や中間成果物は、それでもある程度は目的を達成することはできる。しかし計画書はこれでは駄目である。一般的には、成果物は、それができれば、それだけで成果になる。しかし計画書はできただけでは、何の成果にもならない。その計画が実行に移されて、計画したレベルで成果を上げた時、初めて成果になる。したがって計画書の内容には、それを書いた人間が実行できるという実感とそれをやってやるという意志が反映されていなければならない。形や体裁が如何に整っていても、この実感と意志がない計画は何の価値もない。そのような計画書を書く時間は無駄時間としか言いようがない。
 プロジェクトは通常複数の人間が関与している。したがって計画書の内容はPMが認識しているだけではなく、関係者特にプロジェクトメンバーに周知徹底させることが肝要である。したがって90点の計画書で関係者にそれが徹底していないよりも、30点のものでも徹底している計画書の方が、価値がある。
 徹底させるための有効な手段に計画書をプロジェクトの主要メンバーと一緒に作るという方法がある。この場合PMは、自分がプロジェクト推進の具体的イメージを持っている場合は、そのイメージを主要メンバーに説明し、計画書は主要メンバーに作らせる。そしてその結果を厳密にチェックし、自分のイメージに合っていると確信できるまで、直させることである。これにより主要メンバーに対してはこの作成過程で自分のイメージを徹底できることになる。初めての分野のシステム開発プロジェクトなどで、自分がまだプロジェクト推進の全体的イメージを持てないと思う時、主要メンバー(メンバーも多分全体イメージを持っていないと思われる)と、それぞれが持っている部分的イメージを持ちより、全体イメージを作るための話し合いを集中的に行う。そしてある程度イメージがまとまってきたところで、PM自ら計画書を作成し、それを主要メンバーとレビューして、完成させる。
 一般的に技術的な課題や問題については、それに熟知したメンバーに任せるのが有効である。しかしプロジェクトを進める原点になる計画書はPMが先ず徹底して認識していなければならない。関係者に計画内容を周知徹底させるためにはPM自らがその内容を実感として認識していることが最も重要であるからである。
 自分がわかっているところは自分でやり、わからないところは他のメンバーに任せてしまうことは計画作業では最悪である。
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