PMプロの知恵コーナー
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ダブリンの風(101) 「リズム」

高根 宏士:1月号

 新しい年が始りました。昨年はマグニチュード9.0の東日本大震災の発生から福島原発事故という未曽有の出来事に翻弄された年でした。東日本大震災は1000年に一度という天災でしたが、それに続く原発事故は必ずしも天災とは言えない。「想定外」という言葉が頻発したが、それは歴代の関係者のリスクに対する感度の鈍さを示す象徴的な言葉であった。リスクマネジメントの出発点は「リスクを感じる」ことだから、これではリスクマネジメントは機能していないといってもよい。
 今年も世界は経済的混乱と政治的紛争に明け暮れることが予想される。それに天災が発生すれば今年よりも危険な状態になるだろう。
 ところで歳が替わるということは個別に発生する事象とは関係なく、我々に一つのリズムを与える。一年365日というリズムがあるおかげで私は今年74歳になることがわかり、それは人間として第4楽章に入っていることを示している。また大晦日から元旦になるということで、ほとんどの人がなぜか新しい気分になる。町も家の中も新しくなる。そして新しくなりながら、同じことを繰り返す。新年の挨拶、年賀状の交換から始り、同じような行事が1年間続くことになる。これはマンネリのように見えて、実はこの繰り返しの中にそれぞれの成長が感じられるのではなかろうか。このリズムを作った人間は人類の進歩のために、素晴らしいリズムを作ったことになる。
 プロジェクトマネジメントにおいてもリズムは重要である。特に進捗管理ではリズムは必須である。例えば毎週月曜日朝9.00に進捗チェックをすると決めたら、それがリズムになる。このリズムをしっかり刻むことにより、チェックされる側も、定期的に緊張感がもたらされる。この緊張感により、作業を計画した通りの進捗に載せようとする意識が周期的に現れる。このリズムがない場合計画した通りに進捗させようとしても、そのペースを掴むよりどころがない。またこのリズムが揺らぐ場合、関係者は緊張感よりも疲労感が発生する。これはダンスと同じである。すなわちワルツやタンゴにはそのリズムがあり、それが揺らいではダンサーも踊れない。
 プロジェクトマネジメント、特に進捗管理にリズムがない場合、プロジェクトマネジャーにリズム感がない場合、マネジメントはできないと見ても大きな誤りはない。そのようなマネジメントはマネジメントしているのではなく、単にマネジャーの不安感や焦りから思いついたことをモグラ叩き的にやっているだけ、責任逃れの事象を作っているだけである。そして関係者は疲れるだけである。
 我々は生きていく上でも、マネジメントする上でも、このリズム、リズム感を大事にしたい。
 新しい1年、我々はこのリズムをマンネリと思わず、そのリズムに乗って新たな世界を切り開いていこうではありませんか。
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